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まさに“横浜事変”。教員のわいせつ事件裁判に「職員を動員し一般傍聴者を埋め尽くす」暴挙に出た横浜市教育委の組織的犯罪

5月21日に東京新聞がスクープした、横浜市教育委員会による裁判傍聴妨害行為。教員のわいせつ事件裁判に職員を動員し一般傍聴者を排除するという悪質極まりない行いに、各所から批判の声が多数上がっています。このニュースに「我が目を疑った」と言うのは、現役探偵で「いじめSOS 特定非営利活動法人ユース・ガーディアン」の代表も務める阿部泰尚(あべ・ひろたか)さん。阿部さんは自身のメルマガ『伝説の探偵』で今回、当案件を詳しく紹介するとともに、過去のいじめ隠蔽問題をあらためて振り返りつつ同教育委を厳しく批判しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:まさに横浜事変

いじめ探偵も目を疑った前代未聞の暴挙。教員の性犯罪裁判を第三者に傍聴させぬため職員を動員した横浜市教育委員会の問題体質

5月23日、日本版DBS創設法案が衆議院を通過した。

簡単にいえば、こどもたちが性被害に遭わないように、学校や保育所などにこどもと接する職に就く人の性犯罪歴の確認を義務付けることを柱にしているというものだ。様々な意見があるものの、まずはこれができたことは大きいだろう。

実際、いじめ問題で全国を走り回っていると、「いじめではないのですが…」という相談はやたらと入る。例えば、いじめ防止対策推進法がカバーしていない幼稚園や保育園などの未就学児でおきるいじめの問題や保護者いじめの問題、PTA非加入の問題や大学でのセクハラやパワハラなど、学校周り全ての問題が入ってくるのだ。

そして、その非いじめ問題でもっとも多い2本柱が、教員からのいじめ(指導問題)と教職員からの性被害問題だ。

だから私は日本版DBSを作るという話が出たとき、やっと国も動いてくれるのかと思ったほどであった。

実際、事態は深刻だ。

2024年5月20日のニュースでは、都城高専の元技術職員が、生徒を含む7人の女性に睡眠導入剤を摂取させて性的暴行を加えたという事件の判決があったと報じられている。

しかも、この犯人はこれまでに10回も起訴されており、検察からは「性犯罪という枠を超え人体実験」だと言われるほどで、その犯行を撮影していたという。

求刑は懲役30年、判決では懲役23年になったという。

ニュースを数か月遡って集めるだけで、こんなに数があるのかよ…。試しに読者の方々もニュースを集めてみるといい。その数に唖然とするはずだ。

イメージとして女の子が被害に遭うのだろうと思っている大人も多いようだから忠告しておくと、男の子もこうした加害者らにとってはターゲットであり、実際に多くの被害が報告されニュースになっているのだ。

さて、こうした被害が連発して全国で起きている中、横浜市でとんでもないことが起きた。

 

「憲法違反」を組織的に行っていた横浜市教育委員会

東京新聞のスクープだ。報道によると、横浜地裁で審理された教員による複数の性犯罪事件の公判を巡り、横浜市教育委員会が多数の職員を動員し、第三者が傍聴できない事態が相次いでいたというのだ。

速報的なニュースが出た際、私は目を疑った。こんなこと今どき反社会的勢力でもやらないからだ。

東京新聞の記事には詳しい状況が記されているが、元校長が起こした強制わいせつの公判で傍聴席が満席であったようだ。私も法律の勉強のために時折裁判所に行って、裁判を傍聴することがあるが、世間を賑わす大事件以外で傍聴席が満席であったことは経験がない。それこそ、満席に近い事件があれば、これ何の事件ですか?と周囲の人に聞くくらいだ。

つまり、事件の報道をやっている記者さんから言えば、なんでこんなに傍聴人が多いんだろうという疑問は常々あっただろう。そして、傍聴人のあと追ってみたら、なんと教育委員会の施設に帰って行ったという。そうやって、横浜市教委が組織的に公判の傍聴席を満席にして第三者が傍聴できないようにしていたという事実が暴かれていったわけだ。

裁判の傍聴は憲法37条に基づいているという。

第三十七条 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。

公平な裁判をしていることの担保として公開されているということだろう。つまり、関係者のみで埋め尽くし、この傍聴を妨げたというのは憲法違反を組織的にやっていたと言われてもいいわけがつかない前代未聞の組織行動であったわけだ。

これが、超がつくパワハラが横行する民間企業や反社会的勢力の組織がやったというなら、さもありなんと思うかもしれないが、行政委員会である市教育委員会がやっていたとなれば、日本の行政は法を守らないのか?と厳しく糾弾されてもおかしくはないはずだ。

さらに、公判動員は出張扱いでその交通費などは支給されていたというのだ。つまりこれが事実であれば、この公判動員のために税金が使われていたことを意味するわけだ。

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問題発覚後に横浜市教育長が認めたとんでもない事実

また、本件問題が発覚して、これに応じた現教育長の下田教育長は、とんでもない事実を認めている。

  1. 今年4月に就任したばかり
  2. こうした事実は知っており、止めるように指示していたこと

横浜市教育委員会は、いじめ隠ぺいをしたことが記憶に新しい。2024年3月に、2020年にいじめを苦に自死した中学生の事件で第三者委員会が記者会見を行った。いじめと自死の因果関係を認め、学校の対応や市教委の対応を強く批判したのだ。

特に横浜市教育委員会は、学校が行った基本調査の報告書に「いじめ」という文言が入っていたのを削除するように指示していたことが明らかになったのだ。

組織ぐるみのいじめ隠ぺいを行っていた当時の教育長は下田氏ではなく鯉渕教育長であった。私は、公判動員のニュースで、そうか教育長人事で4月から新しい教育長になったのかとはじめて知ったが、これ自体、教育長の問題より教育委員会自体の組織的問題として考えなければならないのだと思ってゾッとしたのだ。

一方で横浜市教育委員会は、2019年からこうした傍聴席を職員で埋める公判動員を行っていたことを認めている。横浜地裁は抽選ではなく先着順であるため、早くから並び一番前から席を埋めていくように細かい指示を出していた。尚、裁判傍聴では立ち見はできない。

一方で、横浜市教育委員会は、被害側からの要請で行ったという。確かに性被害を受けた被害側からすれば、いたずらに裁判を公開されるのは嫌だろう。

しかし、裁判所はこうした公判ではかなり配慮しているし、新聞やテレビ報道の記者さんたちが当時は児童や生徒であった被害者の氏名や住所などを知ったとしても記事にすることはないだろう。

さらに、就任したてといえども、教育長が止めるように指示していたにもかかわらず、組織的な裁判傍聴の妨害、公判動員を行っていたわけだ。これはあまりに根深い問題だと考えざるを得ないだろう。

そして、もしもこの前代未聞の教育委員会の暴挙が発覚していなかったら、教育長の指示で本当に取りやめになっていたのだろうか?事実として、止めていなかったのだから、続いていたと判断しても問題はないだろうと思うのだ。

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いじめを隠蔽し泥棒行為をやってのける横浜市教育委の末期的症状

例えば、民間企業で横領事件が起きたとする、横領額は起訴されるか、執行猶予がつくかの目安になるそうだが、横領したお金を返金したかどうかも基準となるそうだ。返金したところで罪は罪だから犯罪として裁かれるのは当然だが、民間においての不正にはかなり厳しい罰がある。

本件では、動員であるが故、この公判動員は教育委員会の業務として行われており、出張扱いとして少額だろうが費用も支出されていたわけだが、断じて、これを教育委員会の業務として認めてはならないし、世間も法も認めないだろう。

であれば、これ自体は指示した者らが公に使われるはずの税金やその職員の役務を目的外に使用したことになるから、民間で言えば横領に近いとも言えないだろうか。

いずれにしても、公務員として著しい非行とは言えるだろう。法をいくつも違反しておきながら謝ったら終わりでは、法はいらないし、法治国家とは言えないだろう。

「嘘は泥棒の始まり」だと育てれた世代からすれば、いじめ隠ぺいを組織的に行い、税金泥棒と言える行為を平気でやってのけていた横浜市教育委員会は、もう末期的症状を起こしている違法委員会にしか見えないだろう。

下田教育長は弁護士に入ってもらって経緯の調査をするとのことだが、前任から脈々と続いた不正の嵐がある組織的な問題だ、いばらの道であることは間違いないだろう。

3月のいじめ隠ぺいの際、横浜市議会は怒りに燃えて追及をしていた。ぜひとも、横浜市議の方々には、本件公判動員にも深いメスを入れ、根深い問題を断ち切ってもらいたいところだ。

「動員問題を知っていたのか?」との問いに教育委職員は

横浜市教育委員会には数人の知人がいます。時折、いじめ問題で連絡を取り合う程度ですが、私が報告するいじめ問題においてはしっかり対応をしてくれていたし、隠蔽には強く怒りを示していました。

今回の件、お前は知っていたのか?と聞くと、うーん…という感じだったので知っていたと思いました。他の教育委員会職員に聞いてみると、そんな時間ありませんよ、と怒っていました。確かに、いつか横浜だけではなくて他の教育委員会もやってるだろと言われかねません。

ただし、教育委員会の問題は、その閉鎖性と隠蔽体質があると各事件を見ても言わざるを得ないわけで、もっと開いて世間の常識をいれていかないと問題の根本は治ることはないと思います。

まあ、広く見れば、裏金とか諸々あるわけだし、この国はどうなんだろうと思うことも多いですから、坂本龍馬の言葉のように「日本を今一度洗濯したく候」なのかもしれませんね。

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image by: Shutterstock.com

阿部泰尚この著者の記事一覧

社会問題を探偵調査を活用して実態解明し、解決する活動を毎月報告。社会問題についての基本的知識やあまり公開されていないデータも公開する。2015まぐまぐ大賞受賞「ギリギリ探偵白書」を発行するT.I.U.総合探偵社代表の阿部泰尚が、いじめ、虐待、非行、違法ビジネス、詐欺、パワハラなどの隠蔽を暴き、実態をレポートする。また、実際に行った解決法やここだけの話をコッソリ公開。
まぐまぐよりメルマガ(有料)を発行するにあたり、その1部を本誌でレポートする社会貢献活動に利用する社会貢献型メルマガ。

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