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教師は素晴らしい仕事。なのに辞めてしまう若い先生が多いのは何故か?

 教師の在り方について様々な視点から教えてくれるメルマガ『「二十代で身につけたい!」教育観と仕事術』。その著者で現役小学校教師の松尾英明さんは今回、ここ数年ご自身が憂いているという若い教師の退職について語っています。

結論。教師の仕事は素晴らしい

ここ数年、憂いていることがある。

それは、一部の若い教師の方々についてである。折角志したのに、着任して数年以内に辞めてしまう。(これは教員に限らずらしいが。)あるいは早々に新たな挑戦や希望への見切りをつけて、安全と安定、慣例を優先したジジババ化してしまう。更にいうと、そもそも教師すらなろうとしない教育学部大学生の多いこと。

これは、憂うべき事態である。こんなに素晴らしい仕事に対し、誤認をされてはいけない。心がけとやり方次第で、教師の仕事は素晴らしいものになる。(ただし、運の重要性も否めない。)この仕事の素晴らしさを伝えるのは、担任業だけで23年目という結構レアキャラの、私の担当ど真ん中である。

学級担任が楽しいのは、本来当たり前である。普通にしていれば、変化に富んでおり日々が楽しい。こんなに「変化しない」と言われている場でありながら、相手が相手だけに、日々想定外の出来事だらけである。少なくとも「飽きる」ということは、まず起きない。

では、どうすればこれを楽しめるのか。

それは、絶望的なほどに苦しい事態に追い込まれないようにすることである。そのためには、端的に言って「下手うち」を減らすことである。下手うちさえ減らせば、後は勝手にエンターテインメントなのだから、間違いない。

恐らく、具体的な下手うちの内容を知りたいところである。これは、書籍等でまとめた方がよいような気がしているが、愛するメルマガ読者に向けて少しだけ書く。

例えば、「やんちゃ坊主」への対応。見えるところ、表でやりすぎである。適当にあしらっておけばいい。ここに関わりすぎることが、学級を崩す大きな要因になっている。そして、裏でのフォローの仕方こそが肝である。(これについては、以前書いた校内若手研修や、依頼された研修等でも伝えている。)

例えば、保護者対応。何でもこちらが下手に出て機嫌をとっていればいいと思っていたら、大間違いである。保護者の側も、実は色々とわからないで困っているのである。保護者は、一番の協力者であり仲間であるのだから、ここに正しい情報を伝え、協力を仰ぐに越したことはない。

例えば、管理職や同僚との関係。無駄なプライドをもったり意地を張ったりせず、自分より経験値の多い人に謙虚に教えてもらうことである。若い内は「どうせ下手くそ」だからこそ時間と体とを使って全力を尽くすしかない、という自覚と覚悟が必要である。

自分のできる範囲に全力を尽くした上で、遠慮なく助けてもらうことである。教師は、人を助けて伸ばすことが根っから好きな、真の意味で親切な人が多いのだから、そこは利活用すべきである。(この本来良い性質が「人に良く見られたい」へと変に捻じ曲がることがある事実も否定できない。)むしろ、若手を助けて支えることは、それ以外の人間にとって仕事の一部であり義務ですらある。

ちなみに「安定した学級経営」とか「素晴らしい授業」とか「見事な保護者対応」とかは、通常ほぼ期待されていない。どちらかというと、下手でもいいから一生懸命やっている、ということに価値を見出される。若手の内は、どの業界であっても地道で泥臭い作業の連続である。地味に時間と体力を使う単純な作業、誰がやるともわからない陰の作業を黙々とやっている人は、必ず見られている。そういう地道な人がある日困っている場面を見たら、人はつい手を差し伸べて助けずにはいられない。そういうものである。

例えば、授業。教科書通りにやればいいと思っていると、下らない結果を招く。教科書は、極めて優秀である。これを如何に有効利用するか。当たり前の技術の大切さが問われる。これも先輩に教わって学べばよい。

例えば、研修。単に嫌々やらされているものほど、下らないものはない。悉皆研修だろうと校内研修だろうと、自分のために120%利用する。

何より、若い頃になけなしの身銭を切って学ぶことが、後にどれほどの価値を生み出すのかを知ることである。時間とお金をつぎ込んだものについては、コスト回収をすべしという心理が自然と働き、学習効果が高まる。ここの意義は、向山洋一氏が口を酸っぱくして述べ続けている。(やたらとTOSS批判をしている人のほとんどが、実際まともに学んでいない。私はTOSSのメンバーではないが、向山洋一氏の現代の教育業界への貢献度は、近代No.1であると思っている。)

学んだことを、教室で生かす。学んだ通り試してみても、やっぱり上手くいかない。自分なりの工夫をしてみる。何度も試す内に、子どもの反応が明らかに変わる。この喜びを知れば、学びを止めることの方が逆に難しくなる。

とにかく、教師は素晴らしい仕事である。真面目に働き、学んで謙虚にしていれば、誰に対しても機嫌をとったり下手に出たりする必要がない。逆に、相手が子どもだけに勘違いしないことの方が気を付けるべき点である。(新社会人は技術も未熟で立場も低く、ミスが多く謝る機会が多いのは、どの業界でも当たり前である。ここを無闇に責める学校があるなら、その学校の在り方自体に問題がある。)

ネットニュースは、滅多にないような、際立ったマイナス情報ばかりが目立つ。「今日もあの学級でこんなに幸せなことがありました」というようなことは、一切伝えてくれない。「漢字テストで初めて100点がとれた」とか「〇〇ちゃんは、苦手だった給食が最近少し好きになってきた」なんてことは、絶対にニュースにならない。

学級で日々起きていることのほとんどは、いいことである。なぜならば、学校とは子どもが成長するための場だからである。学校に来て、来る時よりも良くなって帰るのだから、当然である。

もちろん、トラブルはある。子ども同士でケンカもするし、誰かが誰かに意地悪をして、嫌な思いをすることもある。それに対して話し合って謝るような出来事もある。しかしそれすらも「良くなる」ことの一形態である。

また、難しい保護者対応の経験すら、教師にとっては自らを磨き輝かせるための貴重な「石」である。(ただし、この研磨作業は痛いし大変であることも間違いない。)

確かに、どれも簡単ではない。しかし、社会に出て「簡単」でやり甲斐のある仕事など、本当にあるのだろうか。どれもその業界なりの難しさ、大変さがある。それを乗り越えること自体が、楽しさの本質ではないか。今子どもに大人気職業といわれるユーチューバーだって、その見た目ほどイージーな世界ではなさそうである。

結論。

教師の仕事は素晴らしい。もし素晴らしくない世界だというのなら、自ら変えていく気概をもって、共に歩んでいきたいと願う。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 松尾英明 【発行周期】 2日に1回ずつ発行します。

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