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破滅に向かう中国。不動産バブル崩壊、若者の高い失業率、貿易摩擦の激化、そして日本への経済的威圧が自らの首を絞める

不動産バブルの崩壊で経済が大きく失速するも、未だ強気の姿勢を崩さない中国。日本をはじめ各国に対して経済的威圧を仕掛け続ける隣国を、識者はどう見るのでしょうか。安全保障や危機管理に詳しいアッズーリさんは今回、そんな中国経済の現状を詳しく解説するとともにその行く末を予測。さらに急速に進む「外資離反」が中国経済の崩壊をもたらす可能性を指摘しています。

米国による締め付けで経済崩壊か。中国の明るくない行く末

米中の間で貿易摩擦が激化する中、バイデン政権は5月半ば、中国製の電気自動車(EV)に対する関税を現行の25%から4倍の100%に引き上げる方針を明らかにした。これは不当な貿易政策に撤する国家への制裁を認める米通商法301条に基づく措置だが、バイデン政権は国家の補助金を活用して安価なEVを大量生産し、それによって世界のEV覇権を握ろうとする中国に警戒感を示してきた。

そして、同様に車載用電池、鉄鋼、アルミニウム、太陽光発電に使用される太陽電池、家電製品や自動車など幅広く使用される旧型のレガシー半導体、注射器や手術用ゴム手袋など医療製品の関税も引き上げられ、今回の対象となる製品の総額は日本円で2兆8,000億円相当になる。

こういった措置はトランプ政権だった2018年から激化している。トランプ政権は米国の対中貿易赤字を是正する目的で、4回にわたって計3,700億ドル相当の中国製品に最大25%の関税を課す措置を取った。今回の対中EV関税100%に代表される一連の関税引き上げはその延長線上にあり、米国は国益を守るため中国を経済的に締め付ける方針を強化している。

米中間で勃発必至の貿易戦争と世界に広がる中国への警戒感

一方、中国は米国による圧力には屈しない姿勢に撤している。中国の全国人民代表大会の常務委員会は4月下旬に関税法を可決し、12月1日からそれが施行される。関税法は中国の貿易相手国が条約や貿易協定に違反して関税引き上げなどの措置を取った場合、中国が報復関税などの対抗措置を取ることを定めており、バイデンとドランプのどちらが秋の選挙戦で勝利しても、両国の間で激しい貿易戦争が勃発することは間違いない。

米国だけでなく諸外国の間では、中国がEVなど安価な値段で高性能の製品を大量生産し、それによって世界経済で覇権を握ろうとするだけでなく、経済的威圧を加えることで貿易相手国に圧力を掛ける中国への警戒感が広がっている。

中国が独立勢力として敵視する民進党の蔡英文政権下で中台関係が冷え込む中、中国は台湾産パイナップルやマンゴー、柑橘類や高級魚ハタなどの輸入を一方的に停止し、台湾に経済的威圧を仕掛けた。新型コロナウイルスの真相究明や人権問題などで関係が冷え込んだオーストラリアに対して、中国は牛肉やワインなど同国の特産品の輸入を次々に一方的に停止するなどして圧力を掛けた。

日本からの経済的威圧の撤廃要求を突っぱねた中国

そして、日本との間でも経済的威圧が大きな問題となっている。バイデン政権は2022年10月、中国による先端半導体の軍事転用を防止するため、先端半導体そのものの獲得、製造に必要な材料や技術、専門家の流出などの面で対中輸出規制を強化した。しかし、依然として抜け道があると判断した米国は昨年1月、半導体の製造装置で先端を走る日本とオランダに対して同規制に加わるよう要請し、日本は昨年7月、14ナノメートル幅以下の先端半導体に必要な製造装置、繊細な回路パターンを基板に記録する露光装置、洗浄・検査に用いる装備など23品目で対中輸出規制を開始した。

それに不満を膨らませた中国は昨年8月、半導体などの材料となる希少金属ガリウムとゲルマニウム関連の輸出規制を強化した。これらを外国に輸出してきた中国の業者は、事前に許可申請を中国当局に届け出ることが義務づけられ、違反すれば罰則を科せられるようになったが、日本はガリウムとゲルマニウムの多くを中国から輸入しており、7月の対中輸出規制への報復であることは間違いない。

さらに、中国は福島第一原発の処理水放出に伴い、日本産水産物の全面輸入停止という対抗措置を発動したが、国際機関や多くの国は科学的に問題ないとしており、これも中国による経済的威圧である。最近ソウルで行われた日中首脳会談で、岸田総理は改めて経済的威圧の撤廃を要求したが、中国はそれを強く拒んだ。

急速に進む外資離反という中国経済を崩壊させるリスク

世界で経済的覇権を握りたい中国ではあるが、諸外国との間でこのような貿易摩擦や経済的威圧が深刻化する中、中国からの外資離反が急速に進んでいる。以前、中国は世界の工場として君臨し、多くの外資系企業が中国に進出した。しかし、中国が経済力を付けて大国として台頭するにつれ、諸外国の中国への警戒感が広がっている。

不動産バブルの崩壊や若年層の高い失業率、鈍化する経済成長率や少子高齢化など、中国経済は多くの難題に直面しており、さらなる外資の中国離れはその崩壊をもたらす可能性もある。貿易摩擦や経済的威圧は中長期的に中国経済を崩壊させるリスク要因だ。

image by: humphery / Shutterstock.com

アッズーリ

専門分野は政治思想、国際政治経済、安全保障、国際文化など。現在は様々な国際、社会問題を専門とし、大学などで教え、過去には外務省や国連機関でも経験がある。

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