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日本の芸能界を牛耳る「秋元康タブー」の正体。ミセス『コロンブス』大炎上の裏で櫻坂46『愛し合いなさい』はなぜ許されたのか?

Mrs. GREEN APPLEの『コロンブス』と、櫻坂46の『愛し合いなさい』。どちらの楽曲も見る人が見れば“差別的”と受け取る要素を含み、ネット上での批判の声は決して少なくない。だが前者は大炎上、後者は無風と、その扱いには天と地ほどの差がついた。なぜミセスはメディアで袋叩きにされ、秋元康氏は許されたのか?単純な「差別か否か」を越えて首をかしげざるを得ない日本の矛盾について、メルマガ『ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)』著者の伊東氏が解説する。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:Mrs. GREEN APPLEの新曲「コロンブス」騒動の裏で、秋元康は櫻坂48に「このままじゃ僕らの国は滅びる/去年より出生率下がるだろう」と歌わせる! 日本エンタメ界”秋元タブー”の影

米先住民差別はNG、でも自国民差別はOK?日本という国の矛盾

Mrs. GREEN APPLEの新曲『コロンブス』のミュージックビデオ(MV)が大きな問題に。MVは6月12日に公開され、人種差別的な表現があるとして批判が殺到、翌13日午後には公開停止の措置が取られた。

問題となったMVは、メンバーがコロンブスやナポレオン、ベートーヴェンなどの偉人に扮し、猿の着ぐるみを着た演者にピアノを教えたり、人力車を引かせるなどの演出があった。このことが、先住民を類人猿に見立てているように見える表現で差別的だと指摘された。

近年、コロンブスへの評価が欧米で大きく変化しており、先住民への残虐行為や奴隷貿易の開始者として批判されている。

コロンブスは先住民に対して暴力的な支配を行い、多くの虐殺や奴隷化を行った。彼の航海日誌には、先住民を容易に征服できるとの記述があり、実際に多くの先住民を奴隷として連れ帰った(*1)。

他方で、櫻坂46の6月26日リリースの9thシングル『自業自得』のカップリング曲『愛し合いなさい』のMVが19日22時に同グループの公式YouTubeチャンネルにてプレミア公開。すると、この曲の歌詞に対しても、ネット上ではネガティブな意見が巻き起こった。

徹底的に潰された、Mrs. GREEN APPLE『コロンブス』

コロンブスの航海は、後の大西洋奴隷貿易の端緒となった。彼は先住民を奴隷として扱い、スペインに送り返すなど、奴隷制度の基礎を築いたとされる。

彼の航海により、ヨーロッパから新たな病気が持ち込まれ、免疫のない先住民の間で急速に広がり、多くの死者を出した(*2)。また、先住民の文化や伝統を尊重せず、キリスト教への改宗を強制するなど、文化的な破壊をもたらしたとも。

これらの批判を受け、近年では多くの都市でコロンブス・デーの祝日を「先住民の日」に変更したり、コロンブスの像を撤去する動きが見られる(*3)。

今回の Mrs.GREEN APPLEの騒動は、彼らの単なる無知というよりも、日頃から政治的思想に触れてこなかったからこそ顕在化した政治的問題に起因すると言ってよい。そして、これは日本のアーティスト全体に言える問題だ。

日本の歌手やアーティストの多くは、政治的な発言や立場表明を控える傾向がある。これはファンの反発を恐れたり、所属事務所や番組スポンサーへの配慮からだという(*4)。

対して欧米では、アーティストが政治的なメッセージを発信することが一般的だ。例えば、テイラー・スウィフトやビリー・アイリッシュなどは政治的な立場を明確にし、社会問題に対する意見を発信している(*5)。

なぜか許された、櫻坂46『愛し合いなさい』(作詞:秋元康)

一方、櫻坂46は26日にリリース予定の『自業自得』のカップリング曲『愛し合いなさい』のカップリング曲で、「このままじゃ僕らの国は滅びる/去年より出生率下がるだろう/大事な人はいるか?」と歌う。

歌詞では出生率の低下を「大事な人」の有無と結びつけ、「錯覚でもいいから愛しなさい」といった表現がつづく。

このことについて、ネット上では「異性愛を前提とした恋愛や出産を半ば強制するように感じられる」という批判が多く見られる。

「面倒くさがらずに関わってごらんよ」という歌詞についても、恋愛や人間関係を持たない選択を否定的に描いていると感じる人がおり、この曲が多様な生き方や価値観を無視し、特定の価値観を押し付けていると感じる人も。

また、異性愛を前提とした表現は、LGBTQ+コミュニティに対する配慮が欠けているとの指摘も。

あるいはプロデューサーである秋元康が、若いアーティストにこのような内容を歌わせること自体に対する批判もある。

批判されても絶対に炎上しない「秋元康タブー」の正体

そもそも秋元康への批判は枚挙にいとまがない。

過去には、HKT48の楽曲『アインシュタインよりディアナ・アグロン』の歌詞が女性蔑視だと批判(*6)。

この曲の歌詞では、「頭からっぽでいい」「女の子は可愛くなきゃね、学生時代はおバカでいい」「テストの点以上 瞳(め)の大きさが気になる」という表現がある。この内容は明らかに女性蔑視的内容だ。

さらに欅坂46の楽曲『月曜日の朝、スカートを切られた』の歌詞も問題視。

歌詞では「どうして学校へ行かなきゃいけないんだ 真実を教えないならネットで知るからいい」と歌わせたり、歌詞では、「私は悲鳴なんか上げない」と表現され、被害者の感情を軽視しているとされ、問題視される。

Mrs. GREEN APPLEの楽曲がこれだけ叩かれている裏で、秋元康がマスコミで“大炎上”しないのはなぜか。

2015年、安倍晋三首相と秋元康氏、見城徹氏(幻冬舎社長)を含む5人の有名経営者が、総理公邸の西階段で「組閣ごっこ」のようなポーズを取って撮影した写真が流出(*7)。やはり“安倍トモタブー”はいまだ健在のようだ。

(『ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)』2024年6月23日号より一部抜粋・文中一部敬称略)

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image by: 厚生労働省, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons

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伊東 森(いとう・しん): ジャーナリスト。物書き歴11年。精神疾患歴23年。「新しい社会をデザインする」をテーマに情報発信。 1984年1月28日生まれ。幼少期を福岡県三潴郡大木町で過ごす。小学校時代から、福岡県大川市に居住。高校時代から、福岡市へ転居。 高校時代から、うつ病を発症。うつ病のなか、高校、予備校を経て東洋大学社会学部社会学科へ2006年に入学。2010年卒業。その後、病気療養をしつつ、様々なWEB記事を執筆。大学時代の専攻は、メディア学、スポーツ社会学。2021年より、ジャーナリストとして本格的に活動。

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