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【アドラー心理学】相手のやる気スイッチを簡単に入れる「アイ・メッセージ」会話術

人間はみな対等である

『★セクシー心理学GOLD ~最先端の心理学技術★』第511回より一部抜粋


◆ 人はすべて、共同して生きている。

アドラー先生は、人間は「共同体」として生きていると言いました。

そしてその共同体であるという意識を「共同体感覚」とし、それを明確に持つことが何より大切だと言ったのです。

分かりやすくいえば

「人はみんなで生きているということをハッキリ認識しようね」

ということです。

そもそものところ、人間は劣等感があって当然です。

誰でも、欠点をいっぱい持ち、完璧な人間なんていません。

だからこそ、その欠点を補い合うために、「みんなで」生きることにしました。

ある人は狩りをする。
ある人は、その狩りの道具を作る。
ある人は、その獲物を調理する…。

そんな風に、それぞれの得意分野をいかして、補い合うことで、すべての人が生きやすくなりました。

人間は、カンペキでないからこそ、劣等感があるからこそ、「集団」を作ることができて、そしてだからこそ、よりよい人生を生きることができたのです。

それこそ一人一人がカンペキであれば、すべてをその人、一人でやってしまおうとするかもしれません。

でもそうなると、たとえば病気やケガをしたときに、何もできなくなってしまい、その個人が死んでしまう可能性だってあります。

みんなで協力したからこそ、すべてがよりうまく行ったわけですね。


◆ 集団だからこその問題。

ただ、それが常に幸せなわけではありません。

アドラー先生は、集団で生きることには、もちろん問題が生じると言いました。

「すべての人間の悩みは、対人関係にもとづいている」

と言ったのです。

それこそたった一人で生きていたら、そこまで悩むことはありません。
(ただその分、デメリットの方が大きいのですが)

人間同士、色々なトラブルを抱え、それによって人はどんどん悩んでしまうのです。

たとえばですが、

「私は顔が悪い」

ということで悩んだ人がいたとします。
これ、もちろんスタートは「比較」です。

世界中に、人間がたった一人であれば、顔が良いか悪いかなんて分かりません。

他の人と比較して、「自分は相対的に顔が悪いのでは?」と悩んだりするわけです。

ただ、顔が悪いことだけが、悩みの根本ではありません。

「顔が悪くて、その結果、みんなにバカにされるのでは?」
「顔が悪いと、モテないのでは?」

そんな不安があるわけです。

そうなると、結局はそれも「対人関係」となります。

たとえば
「顔が悪いけどモテモテな人生」と
「顔はいいけど、誰からもモテない人生」だったら、
誰もが間違いなく、前者を選ぶはずですね。


◆ すべての悩みは対人関係。

また「自分は勉強ができない」とか「いい仕事につけない」というのも一緒です。

勉強ができなくて、いい大学に入れない…。
その結果、いい仕事につけない…。

そんなときの悩みとして、

「お金を稼げない」とか「みんなにバカにされる」とかが、根本的な悩みになるはずです。

こちらも同様ですが、

「仕事や学歴はそんなに良くなくても、みんなにモテモテな人生」と
「仕事や学歴は最高でも、誰からもモテない人生」だったら、

やはり前者を選ぶ人が大半ではないでしょうか。

すべて、結局は「対人関係がうまく行かないのでは?」という悩みに帰着するのです。


◆ 人はみんな、対等です。

では、対人関係を解決するためには、どうしたらいいのでしょうか。

ここでアドラー先生は、

「すべての人間は対等である」

と言っています。

立場や貧富、また能力の差は、人によってあるかもしれません。

しかしながら、全部の人間は「対等」だと言うのです。

誰かが上、誰かが下…ということはないのです。

たとえばですが、会社の社長が、平社員に言うコトを聞かせられるのも「お金を払っているから」です。
お金を対価として、部下が命令を聞いているだけです。

いえもちろん「私は心底、あの人に惚れている! たとえお金をもらえなくても、あの人の言うことを聞く!」という人もいるでしょう。

しかしそれですら、「対等」だからです。

気持ちとして、その人に惚れている、すなわちその人の言葉に従うことが、本人の意志で「嬉しい」からこそ、従うわけです。

まったくもって、完全な命令や支配下におき、強制的に何かを行わせる…なんてことはほとんどありません。

あるとしたら、それは奴隷や洗脳であって、一般的な社会生活だとは言えません。


◆ 上や下はない。

それこそ大企業の社長などは、多くの社員を抱え、色々な指示を与えますが、それはそれだけ多くの人に、「お金」や「仕事の喜び」など、たくさんのものを与えられるからです。

もちろんそれは魅力であり、力です。

ただ前提として、すべての人は対等であり、それだけの魅力や力があるから、多くの人が「従いたい」と思っているだけなのです。

重ねてすべての人間は「対等」なのです。

ここを覚えておいてください。


◆ 人に注意をするときも。

そのあたりを勘違いしてしまい、たとえば「社長は部下よりも人間として上だ」「対等ではない」と思ってしまうと、問題が生じます。

たとえば部下に怒鳴りつけたり、威圧したり…。
ムチャクチャな命令を聞かせようとしたり…。

そうなると、部下は結果的に反発してしまい、企業がどんどん乱れていきます。

ですのであなたに部下がいたとしても、決して何かを強制してはいけません。

「○○だから、こうしてくれると嬉しいのだけども」
「そのやり方だと、△△になる可能性があるんだけど、どう思うかな?」

というように、それこそ対等な同僚に何かを説明するように、一つ一つ、大人としての言葉でトークすることです。

それで納得すれば、相手は従ってくれるはずです。

それは命令として何かを強制するより、最終的にもっとも企業全体を良くしていくはずです。


◆ 親子でも、上下はない。

これは「親子関係」でも同じです。

「○○しなさい!」
「△△してくれないと、怒るよ!?」

そんな風に、自分の子供に強制を繰り返していては、子供もストレスがたまっていきます。

また、たとえ従ってくれたとしても…。

それこそ「どんなときでも、親の言うコトに従うことしかできない」子供になってしまう危険性もあります。

そうすると、将来成長したときに、一人では何も判断できない人間になってしまう危険性だってあります。

アドラー先生は、やはり同じく、子供にたいしても、

「一人の独立した存在として、何かの言葉をかけてあげるべき」

としました。


◆ ほめるのも、実はダメ!?

さらに「しかる」のがダメなだけではありません。

親は子供にたいして「ほめてはいけない」とも言いました。

「あなたは頭がいいね!」
「あなたはスポーツが上手ね!」

そんな風にほめることは、一見いいことのように思えます。

しかしそれはウラを返せば、

「あなたは私より下だ」
「私は、あなたの状態を、客観的に評価できるほど上の人間なんだ」

というメッセージになります。

「えっ!? そんなつもりないよ!?」

と思う人もいるかもしれません。

しかし想像してください。

一般人が、サッカーのプロ選手に、

「鈴木さんはサッカーうまいですねぇ」
「シュートが上手ですね」

なんて、面と向かって言わないのではないでしょうか。

将棋の名人に

「将棋が上手ですねぇ」…。

格闘技の達人に

「パンチが強いですねぇ」…。

そんな風に言うコトは決してないはずです。
おそらく相手は、言われても嬉しくないのではないでしょうか。

逆にほめることが、いわゆる「上から目線」であり、失礼に当たる…。

これは親子であっても同じ、というわけです。

特に「ほめる」ことを続けることで、「ほめられないと何もしない」という人間になってしまう可能性もあります。

だからこそ「ほめてはダメ」というわけです。


◆ あなたではなく、私で語ろう。

では、いったいどうすればいいのでしょうか?

実は何かを伝えるときに心がけることとして、

「ユー・メッセージではなく、アイ・メッセージで」

という考え方があります。

たとえば、

「あなたは、偉いね」
「あなたのその行動、ひどいよ!」

こういう言い方は「ユー・メッセージ」となります。

「あなたは○○」

というように決めつけることで、言われた相手は、どんどん息苦しくなってきてしまいます。
真実でなかったらイライラするだけですし、真実だったとしても、だからこそつらく感じてしまう可能性があるわけです。

「ほめ言葉」というのも、結局はこの「ユー・メッセージ」に分類されてしまうのです。

それより大切なのは「アイ・メッセージ」。

自分自身がどう感じるか、ということを言葉にするべき、というわけです。

たとえば、

「私は、あなたと一緒にいられて嬉しい」
「あなたが頑張ってくれたのが、私はとっても誇らしいの」

というような言い方です。

これは「自分の感情」なので、相手にたいして何も強制することもなければ、決めつけたりすることもありません。
そのため相手はすんなり受け入れられます。

くわえて、相手の感情を知ることができるので、気持ちが安らぐ面もあります。

ユー・メッセージが、相手の服をいきなり脱がしてきたり、相手の衣服を強制するようなものとするなら…。
アイ・メッセージは、自分自身が衣服を変えたり、脱いだりするようなものです。

相手にとっては、アイ・メッセージの方がすんなり受け入れられるのではないでしょうか。

うん。
たとえのせいでちょっと微妙になってきた気がしますが、とにかくそんな感じです。

いずれにしても、たとえばほめ言葉であるなら、

「すごくキレイだよね! はじめて見て、ビックリしちゃった!」

と言えば、最初の「すごくキレイ」というのは「ユー・メッセージ」ではありますが、そのあとはきちんと「アイ・メッセージ」であるので、嬉しく受け入れられるはずです。

もしほめたいのなら、そのあとに「だから自分はプラスの感情になっている」という言葉を必ず入れることです。

他にも、

「あなたと一緒にいられて、すごく嬉しい!」
「今日、こうしてデートできて、とても幸せ!」
「君と一緒に仕事できて光栄だ」

など伝えるのもアリです。
こう言えば、たとえほめていなくても、相手には十分、ほめ言葉と同じということが分かりますでしょうか。

とにかく自分の感情で伝えることです。

「難しい…」と思うのなら、とにかく「自分のように喜ぶ」だけでも十分です。

誰かの成功を、自分自身の成功であるかのように喜ぶ。

それを言葉にするだけでも、相手はとても嬉しく感じるはずです。


◆ シンプルにお礼を言うだけでも。

さらにもっとシンプルに言うなら、

「ありがとう」

とお礼を言うのが、とてもカンタンかつ効果的です。

「今日はデートしてくれてありがとう!」
「いつも助けてくれて本当にありがとう!」
「テストよくできたねー! お母さんすごく嬉しい! ありがとう!」

感謝の言葉は、すなわち「自分はあなたにお礼を言いたいほど嬉しく感じている」というメッセージでもあります。

何より相手にとって幸せを感じさせますので、覚えておいてください。


◆ しかるときも、プラスで言おう。

これは叱るときも一緒。

「お前はダメだ!」
「あなたの仕事のしかたはいけない!」
「どうして連絡くれないの?」

これはすべて、ユー・メッセージとなります。

一瞬だけ、相手のことを従わせることはできるかもしれません。
しかし長続きすることはなく、相手の中に反発心がどんどん湧き上がっていくだけです。

それよりは、アイ・メッセージで話すこと。

「今回の仕事は少し残念だった」
「連絡くれなくてショックだった」

というような言い方になります。
ただそれであっても、やはりネガティブな内容にはなってしまいますので、

「○○はあまり良くないと思うから、△△のやり方にしてくれると嬉しい」

というように、プラスの言い方にした方が良いでしょう。

 

★ 今回のまとめ。 「アドラー心理学4 ~人間はみな対等である」

○ すべての人は「共同体感覚」を持つべき。

○ そしてみんな「対等」ということを意識すること。

○ 上でも下でもなく、「しかる」「ほめる」のではなく「親しく話す」こと。

○ ユー・メッセージではなく、アイ・メッセージで。

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。

 

『★セクシー心理学GOLD ~最先端の心理学技術★』第511回より一部抜粋

著者/大和まや・ゆうきゆう(精神科医・心理研究家)
あらゆるジャンルの心理学を極めた、セクシーな精神科医たち。あやつる心理学のスキルは1000を超える。「ゾクゾクしなければ人生じゃない!」がモットー。趣味は瞑想と妄想。特技はスノーボード。
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