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現役探偵も激怒。文科省「いじめの重大事態ガイドライン改訂」が被害当事者と家族への朗報にはならなかった当然の理由

8月30日に改訂されるも、メディアがほとんど報じることのない「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」。その内容は「誰のための改訂」であるのか首を傾げたくなるものであるようです。今回のメルマガ『伝説の探偵』では、現役探偵で「いじめSOS 特定非営利活動法人ユース・ガーディアン」の代表も務める阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんが、この改訂を「文科省劇場のドタバタ劇」と一刀両断した上で、そう判断せざるを得ない背景を解説。さらにすべての大人が心に刻むべき、改訂されたガイドラインを読んだ重大事態いじめの被害者の声を紹介しています。

【関連】極めて“不適切”な2つの点。文科省「重大事態いじめのガイドライン」改定案を“いじめ探偵”が厳しく指摘
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:46万人という衝撃

「当事者」は存在せず。いじめの重大事態ガイドライン改訂は誰のため?

2024年8月30日に「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」が改訂された。

この改訂についてはニュース記事の数が少ないため、関係する被害者や関心を持つ地方議員の方々から私の元に問い合わせが入った。僅かに流れた改訂されたというニュースに、実際のガイドラインが公表されていないということで、ガイドラインを早く読みたいという方々からも、原本を持っていれば見せて欲しいという問い合わせもあった。

9月9日の段階ではすでに文科省のホームページにも掲載されているから、PDF文書を確認することはできる。

私から見れば、文科省劇場のドタバタ劇だ。

2024年6月19日、いじめ重大事態のガイドラインの改訂案が出るとニュースで知った。そもそも「いじめの重大事態」は「いじめにより児童生徒の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき(1号事案)やいじめにより児童生徒が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき(2号事案)」と決められており、一般的にイメージするならば、ニュースになってその内容を世間が知り、多くの人がその残酷さや酷いいじめの実態に憤りを感じるような大問題のことである。

被害側の支援団体や遺族会など、連絡が取れる人に聞いてみたが、誰一人、この改訂素案が話し合われていることなど知らなかった。通例、こうした改訂をする際は、文科省の担当部署や関わる国会議員などが勉強会を行って被害経験者等から話を聞く機会を設ける。

馳浩元文科大臣が座長を務めたいじめ防止対策推進法改正の際、様々な被害側の意見が多くの国会議員さんや文科省の職員、大学教授などの前で検討され、もうほぼ改正案が出来上がったところで馳座長が突如、独自の骨抜き座長試案を提示し、法改正がとん挫したが、このような時でも当事者に話を聞くという勉強会は行われていた。

しかし、今回のガイドライン改訂では、当事者は存在していなかったことになる。

実のところ私は、個々に行われる、いわゆるいじめの第三者委員会において職能団体となるところや被害側に耳を貸さなくなった文科省が連絡や相談をしやすい専門家から漏れ聞こえる情報を得ていた。

ひとつはいじめの重大事態における第三者委員会の委員の選任が難航することが多い割に専門家と呼べる実績がある人が少なく、地方だとそもそもで専門家がいないというところもあり、常任の委員会に老後の成り行きで民生委員になっている人やPTAの役員でまかなっているところもあり、このハードルを下げたいという意見が多いからこれに応じようとか、被害側の声が大きいからその声を下げさせようなどについて話し合っているという情報だ。

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「反撃などできないだろう」。文科省の露骨なやり口

こうした意見は、いわゆる学校側や加害者擁護側から出ており、特に学校側の立場に立ち、彼らが隠ぺいをする事を容認する立場を取る御用専門家などの意見は、文科省にダイレクトに響くだろうと私は警戒していた。

だから、この「いじめの重大事態ガイドライン」の改訂素案が寝耳に水で突然、6月19日に出てきて、被害側のほぼ100%の人が、そんな話、聞いたこともないと驚き不満を漏らす様子を見て、文科省もなかなか露骨にやるなと思ったのだ。

例えば、露骨に物事を進めれば反発も強くなるから、物事を穏便かつ狡猾に進めるならば、形骸化した勉強会でもやればよかっただろう。ちょっと電話でもして意見を聞いても良かったのではないかと思うのだ。それが日本式渉外ではよくあることのはずだ。

ところが、今回はそれすらしなかった。つまり、専制国家が突如隣国を攻めるように反撃などできないだろうと踏んでのことなのだ。

さらに文科省の専制は続く。6月19日の「いじめの重大事態ガイドライン」改定素案の公表から、意見公募、いわゆるパブリックコメントを募ると発表した。しかし、いつまで経ってもパブコメには掲載がされなかったから、私は関係先にパブコメ出たら教えてくださいと頼んだ。記者クラブに事実上のプレスリリースをして、まさかパブリックコメントをしないとかないよなと不安になるほどであったが、7月12日ごろ、やっとパブリックコメントができるようになった。しかし、期間はびっくりするほど短期間で、8月2日には締め切られている。さらに、この8月前に、8月末にはガイドラインを改訂するつもりだとの談話もあったのだ。

私は被害関係者などが多く、この意見公募(パブリックコメント)を知ることができるようにSNSに投稿したり、参考になるリンクを貼ったり、気が付いていそうにない人に直接連絡を取るなどしたが、素案自体の文量も多く、言葉が巧みであるし、実際の運用からの考察など専門性もある事から、読み込み、意図を理解し問題点や現実の問題を文章として提示するとすれば間に合わない人もいるだろうと焦った。

2024年8月30日に文部科学省初等教育局児童生徒課が発表した内容によれば、意見公募手続きで寄せられた意見は合計866件に達した。しかし、この通知で取り上げられたのは僅か39件であり、学校教職員ではないかと思われる意見が大半を占めた。他800件以上の意見は今後の参考にすると断じて、主な意見の概要に少しだけ羅列されただけであった。

さらに、これだけの意見が短期間で寄せられたのにもかかわらず、ほぼ素案を変更しないままに8月30日にガイドラインは出来ましたと記者クラブに言い、ちょっとだけニュースになったところで、このドタバタ劇は幕を閉じたのだ。

通例、こうしたことを議論する有識者会議は頻繁に行っても月1度か2度、8月2日に意見を閉め切り、30日に発表するにしても会議で議論を交わし、これら修正などに文案を作り、直すと考えれば、30日発表でやるなら大変な作業になろうが、予め談話を出した通り、予定調和で終わらせたと考えるならば、可能な期間とも言える。

これでは、意見公募手続き自体が形骸化した以上の、無視する通過儀礼と捉えても良いのではないだろうか。この露骨なやり方は被害側のみならず、子を持つ親世代や実際の当事者となるこどもへの信用失墜行動とも言えるだろう。

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企業の第三者委員会とは全く別物の「いじめ第三者委員会」

一般的な企業の不正などで登場する第三者委員会は、厳密に第三者で構成され、それで委員交代ですか?と問いたくなる理由でも厳密に関係性が無いように配慮する。また、企業の場合は経営者や従業員、顧客の他に株主の存在があり、ステークホルダーとして利害関係があるから、どこかが独断専行をしようとしてもブレーキがかかることもある。

また、企業で第三者委員会が設置される場合は、報酬は当然に会社が持ちつつも、第三者委員会に多くの調査権を持たせ、独立性の確保をする。

だからこそ、第三者であって、中立公正な判断ができると解するのであるし、「第三者委員会」自体がそのような中立公平で独立した組織であると一般的には認識されるのだ。

しかし、いじめの第三者委員会は違う。いじめ防止対策推進法を根拠に第三者委員会を設置することになるが、設置権限があるのは「学校」もしくは「学校の設置者」となり、再調査の場合は首長などが設置することになる。

ここでいう、学校の設置者とは公立であれば教育委員会、私学であればその学校法人ということになる。政令指定都市やそこそこ大きな都市を抱える自治体では、迅速にいじめ問題に当たれるようにするという名目で、いじめ問題についての連絡協議会や常任の調査委員会などを設置しているが、これは、学校の設置者たる教育委員会直下に組織されたものとなる。

一方、多くのニュースで公表されているように、学校や教委は過去最大数と言われた重大事態いじめのうち、およそ4割をそうなってから知ったという体たらくさであり、残り6割についても、生命や財産など大きな問題となる重大事態いじめとなるまで手が打てない状態であるから、ほぼほぼ、いじめの第三者委員会は学校の設置者が設置していたとしても、同時にその設置者に当たる教育委員会の対応や予防策や予防教育の在り方も調査対象に及ぶのである。

一方で、いじめの場合は、ステークホルダーとして良い意味でブレーキになるようなものがいないのだ。唯一、学校側と異なる立場となるのは被害側であり、いじめを本音では無かった事にしたい学校や加害者側は利害が一致しやすい。

さらに、いじめの場合、第三者委員会は強制権を持たず、

「教育委員会 → いじめ防止等常任委員会 → 各いじめ事件の第三者委員会」

というように、調査対象になりやすい教育委員会の下の下の組織というケースが多い上、独立した組織であるということを認められないケースもある。

つまり、いじめの場合は厳密に第三者を選定し、中立公正さを担保する要件は専門家が少ない地方では確保することが困難であり、他地域から呼ぶ必要性が最低限出てくる。一方で、独立性を確保するにもその組織形態から第三者委員会の委員長が相当しっかりしていない限りは困難を極めるのである。

これでは、企業の第三者委員会とは全く別物と考えざるを得ないだろう。

なので、私は自社内では調査委員会と呼び、ところによっては、「あの調査委員会は、隠ぺい推奨委員会、とか、学校忖度委員会だ」という場合もある。

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改訂版に加えられた「第三者性の確保」を不可能にする項目

その昔、学校の先生に「教育委員会に言うぞ」というのは教師がビビる脅し文句のように扱われていたが、現実は真逆だ。そもそも教育委員会と学校教員はその元は同じである。人事もほぼ同一に近く、現場と事務方という分け方の方がしっくりくるだろう。これは学校長などの管理職も同様で、教育委員会に人事で戻り出世するというパターンがあるほどだ。

一方で、学校業界には、いわゆる任意団体として、校長会などがあり、地域懇談会などでは、校長や地元警察、自治会長やその地区の議員やPTAの重鎮などが交流を深める会があったりもするわけだ。

私はそうしたところから研修会を依頼されたりしていたから、そうした会が相応に力を持っていることを知っている。まあ、干してもらって全然構わないと思っているからここに示すが、地元のNPO法人や社会福祉法人さんなど様々な団体やそれこそ大学教授なども、こうした教育系任意団体から睨まれたら途端に廃業してしまうものだ。特に小さな学用書などを出版している会社はひとたまりもない。教育関係者だけが読む本がなぜか何万部と売れるのも、教育業界が受けいれれば、図書館や学校の図書室などには配本されるわけでそれは予め売り上げの見込みともいえよう。最たるものが教科書だ。現実に教科書会社が地域の公立校で使う教科書を決める権限がある教育委員に賄賂を贈った事件はすでに報道されている通りだ。

無償で被害者支援を打ち出し、対立を怖れずに被害当事者やその家族などを支援する私からすれば、隠ぺい側に加担して利益を得ることなどまっぴらご免であるが、人は目先の利益や脅しに弱いという現実を何度も見せられてきた。

こうした勢力図があり、町内会や友人知人で作った何かのクラブと同等の法的根拠しかない校長会などの任意団体がその実、大きな力を持っていることは、現実に会合や会議などに校長会の会長を文科省は呼んでいるのだから、知っているはずなのだ。

それにもかかわらず、今回の「いじめの重大事態ガイドライン」改訂版には、このような項目が足されたのだ。

6章第2節
例えば、域内の他の学校を担当するスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、地域で活動する弁護士や医師、学識経験者等が、職能団体等からの推薦を受けて“第三者”の立場からも調査組織に加わる場合について、当該重大事態が発生した学校と同じ地方公共団体内で職務に従事していたとしても、これまで当該学校での勤務実績がなく、当該重大事態の関係者との関わり(相談・支援等)が認められないなど、直接の人間関係又は特別の利害関係がなければ、第三者性は確保されていると考えられる。
(文科省いじめの重大事態ガイドラインより)

一般的な良識で考えれば、上段部分で「地方公共団体内で職務に従事していた」段階ですでに関係者としてみるべきであり、「第三者性」は「確保」できないと考えるべきだろう。

第三者性というのは、そもそもあの人はいい人、大岡越前のような中立公平な大岡裁きの人だからという人柄ではなく、利害関係などその関係性がないことが証されることが大事であって、重要なのはその担保である。

ガイドラインに、言葉遊びのような項目を設けること自体、現場の混乱を招くばかりか、隠ぺい側に有利になるいじめ問題の進展を妨害することにしかならない。

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「不登校」を軽く見ていると判断せざるを得ない文科省

「いじめの重大事態ガイドライン」においては問題だらけなのだが、全てを指摘するととんでもない長文になりそうなので、ほとんど割愛するが、不登校と重大事態いじめについてガイドライン上の在り方を最後に指摘しよう。

重大事態いじめについては冒頭に書いたように、「いじめにより児童生徒の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき(1号事案)やいじめにより児童生徒が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき(2号事案)」とあり、1号事案は生命や心身又は財産に重大な被害が生じたとされるが、多くは自死してしまった事案を扱うことになる。2号事案は不登校としていじめを受けたとなってから通算で30日以上の欠席により、いじめで不登校の状態になったものを指すが、多くのケースで、いじめによる適応障害となってクラスに入れないとか、フラッシュバックが起きて学校にいることが不可能となるなど1号要件と被るものが現実にはあるが、運用としては2号事案で対応する学校や教委等が多いのだ。

そして、この2号事案についてガイドラインはこのような対応を推奨した。

不登校重大事態については、これまでも詳細な事実関係の確認や再発防止策の検討だけでなく、対象児童生徒の学校復帰や学びの継続に向けた支援につなげることを調査の目的として位置付けており、学校内の様子や教職員・児童生徒の状況は対象児童生徒が在籍する学校が最も把握していることを踏まえて、引き続き、原則として学校主体で調査を行うこととする。ただし、従前の経緯や事案の特性、対象児童生徒又は保護者の訴えなどを踏まえ、学校主体の調査では、調査目的を達成できないと学校の設置者が判断する場合や、学校の教育活動に支障が生じるおそれがあると学校の設置者が判断する場合には、学校の設置者主体として調査することを妨げるものではない。
(文科省いじめの重大事態ガイドラインより)

但し書きはあるものの、原則的には学校主体の調査でよいと解することができる。

そもそも不登校となった状態は学校側対応にも大きな責任がある。まず、学校においては「いじめ防止義務」がハッキリとある。つまり、児童生徒が被害を受け、回復が困難となって登校できない状態という悪化状態に陥ってしまうほど対策が遅れたり、しなかったという責任だ。

ここまでいくと、児童生徒本人や保護者は学校に信頼感を喪失するのみならず、対立しているケースが圧倒的に多い。私はその存在自体が対立の元凶だと悪の権化のような言われようをしているが、実際は全く異なる。すでに被害側から相談を受けた時には激化した対立状態であり、相互に調整をしたり、法律上学校側がやらなければならないことを怠っている場合は、それを指摘するのみならず、やり方がわからないと言われれば、各事例を示し、やり方を教えたりする。

対立するよりはいじめを解消するためにできることをやりましょうというスタンスなのだ。

ただ、やはり、相談がある頃にはほぼ9割の方が対立状態。信頼感はほぼ100%に近く喪失しているのを目にしているし、そうなるだろうことを学校はしっかりやっているのだ。

また半数程度は担任教員や学校長が、いじめを推奨しているような発言をしていたり、加害者を擁護するなど、不適切対応が確認できたりする。

もはや対立しているだけでも、その一方が第三者委員会的役割をするのはもはや絶望的だろう。だから、但し書きをつけたのであろうが、現場にいる身からすれば、但し書きは学校が主体となって調査をする方での項目であり、ガイドラインに書かれた但し書きの方がメインの項目にすべきではないかと思うのだ。

また、一方で、1号事案の要件と2号事案要件が重なって重大事態いじめとなるケースが多いことも鑑みれば、1号と2号で分ける必要性はないし、その対応がガイドライン上で特筆して分けて考えるのは、2号事案を甘く見ていると言わざるを得ず、世間の目を気にして「多様な学び方」と謡いつつも、その実、「登校こそが学び」という多様性反対の匂いが漂ってくると感じざるを得ない。

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「#教師のバトン」炎上から何一つ学ばなかった文科省

今回、様々ないじめの被害当事者やその家族に話を聞いた。DMなどで意見を送ってくる方もいたが、総じて言えることは、文科省による「いじめの重大事態ガイドライン改訂」は何一つ、被害当事者にもその家族にも朗報とはならなかった。

その原因は調査不足と実態把握の力の欠如と言えよう。それも、その力の欠如は致命的だ。例えば、文科省は教員不足などの対策の一環で、当時のTwitter、現在のXなどで「#教師のバトン」をやった。教師とはすばらしい仕事だ!こんな魅力があると現役教員等に発信してもらおうとした。失敗続きで不正問題を抱える大手広告代理店が関与していたかは知らないが、文科省の思惑は大失敗に終わる。

「#教師のバトン」においては、現役教員などの問題指摘が大多数投稿される羽目になった。学校教員の働き方はサブスクのブラック企業だと実態が暴かれた。現在のところ、これは特給法のみなし残業枠を増やすという方向のようだが、それでも結果サブスク状態は変わらないわけだ。自己犠牲的投稿も多かった。将来教師になろうという人は今すぐやめろ、ここは俺が食い止める!みたいな投稿だ。

アクション映画で敵の猛攻を食い止めて死ぬ準主役が最後に吐くセリフだ。

これも事前にきちんと調査をして実態把握をしていれば、失敗しなかったわけだ。さらに現況の教員不足問題ももはや致命傷となる前に、改善を行い対策をしていけば、起きることはなかったはずだ。今だと海外との比較がされているが、あまりの待遇の低さに言葉にもならないだろう。つまり、問題になって大きな支障が出ることが火を見るより明らかになっても後手後手で結果改善しないというどうしようもない問題になっているのだ。

今回の「いじめの重大事態ガイドライン」改訂も同様だ。本来救われるはずの被害当事者やその家族がおざなりになり、何一つ朗報はない。SNS上では「ふざけるな!」という声があふれかえっている。これはもはや「#教師のバトン」の大失敗の二の舞となろう。

「自殺しろと言っているようにしか感じない」。追い詰められる重大事態いじめの被害者

「いじめの重大事態ガイドライン」はいじめ被害者が最後の拠り所とする、最後の砦とも言えるものでした。

現在当事者の話しも聞かない、意見公募をしても無視、読めば読むほど期待ができない改訂は、もはや悪改訂と言わざるを得ません。声にならない声でいじめ被害から助けて欲しいと叫ぶこどもたちから、砦を奪う気持ちというのはどんなものなのでしょう。

文部科学省初等中等教育局児童生徒課が所管だと聞きますが、児童生徒課の皆さん、責任者となり得る課長さん、初等中等教育の局長さん、弱々しく助けを求めるこどもたちから、希望を奪う結果となりましたが、どんなふうに感じていますか?と面と向かって問いたいです。いや、いずれ会うこととなると思いますので、面と向かって問いますが、そのときには嘘をつかず答えてもらいたいと思います。

高校2年生の重大事態いじめの被害者が改訂されたガイドラインについて私に質問をし、自分でもよく調べてきて、私の真横でこうつぶやきました。

「ねえ、阿部さん、日本では嘘つきでないと出世しないの?弱くなったら声も上げてはいけないの?」
「読めば読むほど、自殺しなさいと言っているようにしか感じないんだけど」
「こども家庭庁は期待できるかな、文科省にはもう期待もできないし」

私の力不足、申し訳ないと答えるしかありませんでした。

少なからず被害当事者のこどもの希望を奪っている現実を担当局にも組織全体も知ってもらえればと思います。

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image by: yoshi0511 / Shutterstock.com

阿部泰尚この著者の記事一覧

社会問題を探偵調査を活用して実態解明し、解決する活動を毎月報告。社会問題についての基本的知識やあまり公開されていないデータも公開する。2015まぐまぐ大賞受賞「ギリギリ探偵白書」を発行するT.I.U.総合探偵社代表の阿部泰尚が、いじめ、虐待、非行、違法ビジネス、詐欺、パワハラなどの隠蔽を暴き、実態をレポートする。また、実際に行った解決法やここだけの話をコッソリ公開。
まぐまぐよりメルマガ(有料)を発行するにあたり、その1部を本誌でレポートする社会貢献活動に利用する社会貢献型メルマガ。

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