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なぜ闇バイト強盗事件は実行犯ばかりが捕まり「指示役」にたどり着くのが困難なのか?SNSの「ホワイト案件」にダマされる若者たち

今年8月以降、首都圏で多発している「闇バイト」による強盗事件。10月28日には千葉県市川市で発生した強盗致傷事件で指名手配されていた男の身柄が確保されましたが、「指示役」の検挙にまで至っていないのが現状です。今回のメルマガ『詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明が見てきた、口外禁止の「騙し、騙されの世界」』ではこのような犯罪に詳しい多田さんが、なぜ指示役にたどりつくのが困難であるかを解説。さらに警察庁が出した「凶悪な犯罪に加担しようとしている方へ」というメッセージが大きな力を持つ理由を詳説しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:次々に発生する強盗事件 前半と後半で手口の差がみえる  リクルーターは嘘をつく 旧統一教会の2回目の審問

捕まるのは実行犯ばかり。指示役にたどり着くのが困難な闇バイト強盗事件の手口

8月中旬から10月にかけて強盗事件が連日、起こりました。この強盗グループは、特殊詐欺のノウハウをもって犯行に及んでおり、同じように秘匿性の高いアプリを使い、非対面で犯行を指示しています。そのために、実行犯ばかりが捕まり、指示役にたどりつくのが難しい状況です。

これだけ、暴力を振るい、連れ去りを行い、キャッシュカードを奪い、暗証番号を聞き出すためならば、凶悪な行為を指示する犯罪グループです。捕まる恐れを感じていないところから、「ルフィ」強盗団と同じように、海外組織にアジトを置いて指示している可能性もあります。一刻も早い指示役の検挙が望まれます。

最初の頃の強盗では、高齢者宅を的確に狙い、数百万を奪うなどしていた状況から、入念な下準備と闇名簿のアップデートをして犯行に及んでいたように思います。

しかし10月14日の鎌ヶ谷の住宅侵入にいたっては、息子夫婦も同居している状況を把握せずに押し入り、逃げ出しています。また窓ガラスを破って入った時に実行犯らも怪我をしているとの報道もあることから、家族の状況や侵入経路など、事前の下見といった調査が不十分なままに犯行が行われたとみています。

この理由は、一連の強盗事件が起きて、事件が大々的に報道されて、警察や近隣住民の警戒の目が強まり、事前に点検業者になりすますなどしての下見て家の間取りなどの状況を把握するのが難しくなってきているためだとみています。

いかに地域においての警戒と不審人物の情報共有が、今回のような特殊詐欺から派生したような強盗を防ぐことに効果的であるかを示していると思います。

今は関東圏での強盗が中心ですが、地方においても強盗行為を起こさせない事前の取り組みの輪を広げて、被害の未然防止を願うところです。

 

警察庁「保護します」の呼びかけが闇バイト犯罪撲滅の大きな一歩に

SNSで「ホワイト案件」(詐欺ではない案件)などとうたう仕事に若者らが応募し、身分証を犯罪グループに送ってしまったことで、脅されて犯行に及んだケースもあったということです。警察庁は、闇バイトに応募して犯行をさせられている人たちに向けて「勇気をもって抜け出し、すぐに警察に相談をしてください」と呼びかけて「警察はあなたや、あなたのご家族を確実に保護します」というメッセージを発信しています。ようやくこの言葉が出てきて、闇バイト撲滅への一歩が大きく進んだと思っています。

以前から話していますが「相談して下さい」という言葉は、言うにやすいですが、行い難しのことだからです。相談をするのには勇気がいります。それゆえに、相談を受ける側がその態勢をしっかりと示さなければ、一歩を踏み出せないことになります。

詐欺において、被害を受けた人が誰かに相談をして、もしその人から「騙されたあなたが悪い」と言われれたり、冷たい態度を取られれば二度と相談しなくなってしまいます。相談しやすい環境をいかに、つくるかが大事なのです。

ただでさえ「110」など警察に連絡することはハードルの高いものです。それゆえに、私のようなルポライターに、被害(あるいは加害行為)の状況を話す方が多く「親や警察に相談したらよいだろうか」と尋ねられることもあります。

当然、その背中を押すように話しますが、今回のように警察から「保護します」という言葉があれば、私がプッシュしなくても、直接に警察に連絡をする方が多く出てくると思います。

実際に、すでに異例の呼びかけ後に、警察が3人を保護したとの報道もあります。実行犯を生み出さないことが被害を減らすための大きな力になります。

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闇バイトリクルーターが口にする「ウソ」の数々

様々なリクルーターと話をしてきてわかるのは、彼らは平気で嘘をついて応募者を騙してくることです。

私が調査電話をするたびに「捕まることはないのか?」と犯罪グループに尋ねますが、ほぼ全員が「うちでは事故なし(逮捕者なし)」といいます。そして「捕まるグループは詐欺のやり方が下手なだけ」といってきます。

なかには「万が一、逮捕されても、うちでは顧問弁護士をつけるので大丈夫」と罪には問われないような言い方をしてくるところもありました。闇バイトで募集された実行役は捕まる存在として犯行をさせており、犯罪グループが顧問弁護士をつけたなどという話は聞いたことがありませんので、これは真っ赤な嘘です。

リクルーターの言葉にはたくさんの嘘がありますが、社会経験が乏しく、詐欺などへの知識などがない人は見抜けずに篭絡されてしまいがちですので、気軽に、SNS上の高額報酬のバイト募集へ連絡を取ることは危険だということを知っておく必要があります――(この記事はメルマガ『詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明が見てきた、口外禁止の「騙し、騙されの世界」』2024年10月28日号の一部抜粋です。続きは、ご登録の上お楽しみください、初月無料です)

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悪徳業者などへの潜入取材した数は100ヶ所以上。数々の現場経験と被害者への聞き取り取材から、詐欺・悪質商法に詳しいジャーナリストとして一線で活動し、多数のテレビ・ラジオに出演している。現在はヤフーニュースのオーサ・公式コメンテーターとして、コメントやニュース記事を執筆中。消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」(2017年~18年)の委員も務めた。雑誌「ダカーポ」にて、悪徳商法に誘われたらついていく連載を担当。それをまとめた著書「キャッチセールス潜入ルポ~ついていったらこうなった」(彩図社)はフジテレビで番組化され、ゴールデン枠の特番で第8弾まで放送された。新刊11月予定「信じてみたら、ダマされる。~元統一教会信者だから書けたマインドコントロールの手口」(清談社清談社Publico)

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【著者】 多田文明 【月額】 ¥330/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎月 14日・28日

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