大規模な民主化デモを受け、中国当局が香港に「国家安全維持法」を施行してから4年。長く「世界の金融センター」としての役割を果たしていた香港ですが、その4年の間にすっかり様変わりしてしまったのが現実のようです。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では、「暗黒都市」となってしまった香港の現状を詳しく紹介。さらに第2次トランプ政権の動きにより、中国の社会混乱がより深刻化する可能性を指摘しています。
※ご高齢ということもあり、今年3月からメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』の「ニュース分析」コーナーの執筆をスタッフに任せて、自身は「国家論」の連載に集中していた台湾出身の評論家・黄文雄さんが、7月21日に85歳で永眠されました。今後もメルマガは黄さんの思いを継ぐスタッフにより継続されます。
※本記事のタイトル・見出しははMAG2NEWS編集部によるものです/原題:【中国】暗黒面に落ちた香港の悲惨な現実
独裁主義国家の走狗に。暗黒面に落ちた香港の悲惨な現実
● 東方之珠隕落!美國會議員:香港正變成金融犯罪中心(東洋の真珠が陥落した!米下院議員:香港は金融犯罪の中心地になりつつある)
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は25日、米下院のタカ派議員たちがイエレン財務長官に、香港がマネーロンダリングや金融犯罪の中心地となって制裁を逃れているとして、今後も米国と友好的な銀行関係を享受すべきかどうかを再考するよう要請したと報じました。
報告書によると、下院中国社会特別委員会の超党派リーダーたちは、香港がロシアへの西側規制技術の輸出、イラン原油購入のためのフロント企業の設立、北朝鮮への「幽霊船」の管理、その他の米国貿易規制違反の主要拠点となっているとイエレンに書簡を送ったそうです。
2020年、中国が香港に国家安全維持法を施行してから、それまでの金融センターとしての地位は急落、中華人民共和国、イラン、ロシア、北朝鮮という権威主義的な枢軸の深化における重要なプレーヤーへと変貌してしまいました。
書簡では、2023年に香港からロシアに輸出される商品の40%近くが、ロシアが戦争でウクライナを攻撃するために使用する可能性のある半導体などの「優先度の高い品目」であるという調査結果を引用しているそうです。
書簡はこのように香港が、マネーロンダリング、制裁逃れ、管理技術のロシアへの移転などにおいて「ますます重要な役割」を果たしていると述べ、香港の独特な優遇貿易および経済的取り扱いを再評価するよう政府に呼びかけました。
この書簡には、同委員会の委員長であるニューヨーク州選出のジョン・ムールナー議員と、同委員会のメンバーであるニューヨーク州選出のラジャ・クリシュナモオルティ議員が連名で署名しているとのことですが、この2人の下院議員は、ドナルド・トランプ次期大統領の国務長官候補であるフロリダ州のルビオ上院議員と一緒に、Tiktokの中国の親会社にアプリを売却させるなど、中国関連の問題で幅広く協力してきた人物です。
それだけに、第二次トランプ政権が誕生した際には、この問題が大きくクローズアップされ、金融制裁が発動する可能性もあります。
この記事の著者・黄文雄さんのメルマガ
中国化に反対する香港人を万単位で投獄する習近平政権
その香港では、逮捕された民主派が1万人にも迫ろうとしています。やはり香港国家安全維持法の実施以降、香港の民主派は粛清され、多くの活動家が逮捕されています。
統計によると、2020年から2024年上半期までの5年間で、香港人の受刑者数が6,902人から9,280人に30%以上も増加しました。
加えて、深刻なのは、裁判なしで収監された人の数がこの11年間で2倍以上に増えていることです。2014年から2024年上半期にかけて、1,561人から3,514人に増加し、刑務所人口全体に占める割合は18%から38%に増加し、10年ぶりの高水準となったそうです。
海外の香港団体である香港人権情報センターが発表した「香港における拷問および非人道的な扱いに関する報告書」によると、香港では警察による権力の乱用、起訴前の勾留、刑務所内での虐待、独立した苦情申し立てメカニズムの欠如など、香港の人権状況は深刻であると指摘しています。
制度内の保護措置は体系的に弱体化しており、さまざまなグループが拷問や非人道的な扱いという問題に直面しているとのこと。
報告書によると、今年9月時点で、「香港版国家安全保障法」に基づき逮捕された人のうち、最大69%が保釈を得られず、そのうち34人は1,000日以上収監されていることが明らかになりました。
香港人権情報センターは香港政府に対し、国連の拷問禁止委員会に直ちに報告書を提出し、市民の監視と説明責任を促進するよう呼びかけています。
加えて、中国政府は、国連人権高等弁務官の香港訪問を妨害してはならず、調査のための妨害のないアクセスを促進すべきであり、これらの訪問に対する妨害や、専門家と関わるグループに対する報復行為がないことを、中国政府が保証することを求めています。
このように、香港はすっかり暗黒都市となってしまいました。
このような状況を受け、最近、ワシントンでは中国の「永久正常貿易関係(PNTR)」ステータスを剥奪すべきだという声が高まっているそうです。
「永久正常貿易関係」はかつて「最恵国待遇」とも呼ばれていました。2000年、米国議会は中国にその地位を与えることを投票で決定し、2001年の世界貿易機関(WTO)への加盟への道筋をつけました。
これにより、2000年から2024年の間に、中国から米国への輸出額は500億ドルから5,000億ドルへと10倍に急増したのです。
専門家は、もし米国が本当に中国のステータスを取り消した場合、中国製品に対する平均関税率は60%以上に上昇し、その貿易ステータスは北朝鮮、キューバ、ロシアなどの国々のレベルにまで引き下げられることになると述べています。そうなれば、中国の社会混乱はさらに深刻化するでしょう。
中国に呑み込まれた地域は、決して成功することも幸せになることもありません。そのことは崩壊と天下大乱を繰り返した歴代王朝が証明しています。
とりわけ、人権意識も主権や自由に対する考え方もまったく中国とは異なっていた香港を中国化し、反対する者は万単位で投獄している現状では、香港にも中国にも明るい未来は見えていません。
以前のメルマガで、現在中国で出国できない外国人が急増していることをお知らせしました。米国人だけでもその数は100人いるそうです。トランプ政権下でも、このようなことを習近平体制は続けられるのでしょうか。
● 中国から出られない外国人が急増 米国人だけで100人 習政権が発明「巨大な鳥かご」◇ノンフィクション作家 譚璐美【コメントライナー】
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※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2024年11月27日号の一部抜粋です。初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込660円)。
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