ソフトバンクだけが獲得に名乗りをあげ、割り当てられることになった4.9GHz帯。今回の割り当ては出来レースだったと言われる理由や、総務省が「電波地面師」と思われる理由について、メルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』の著者でケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川さんが詳しく解説しています。
なぜ、今回の4.9GHz帯の獲得はソフトバンクしかいなかったのか?
総務省は12月13日、5G用の周波数として、4.9GHz帯をソフトバンクに割り当てた。すでにNTTドコモ、KDDIはSub-6において2スロット所有しているが、これでソフトバンクも競合2社に追いつくことになる。
宮川潤一社長は「Sub-6帯においては、うちだけ100MHzだったので、ぜひ欲しいと何年も前から希望していた。希望が叶ってほっとしている反面、これからの移行作業が大変なので、全力でやっていきたい」と語った。
今回の割り当てで獲得に名乗りを上げたのはソフトバンクだけだった。宮川社長は「(1社だけだったのは)めちゃくちゃ驚いた。電波利用料にはオークションがあり、いくらにすれば1位通過できるか、社内で喧々諤々、議論した。『壮絶な戦いになる』と社内では思われたが、蓋を開けてみれば誰もいなかった。ちょっと金額を積みましてしまったのではないか、と反省している」と述べた。
確かに他社も名乗りを上げそうな雰囲気もあったが、実際のところは「今回はソフトバンクが割り当てられるのが順当」な出来レースだったような気がしてならない。
そもそも、NTTドコモとKDDIはすでに200MHz幅を持っており、ソフトバンクを差し置いて、もう100MHz、おかわりするのはさすがに大人げないのではないか。
KDDIに関しては、放送事業者との共用にはなるが、2.3GHz帯の運用も昨年、開始している。
楽天モバイルは、悲願だったプラチナバンドの使用が始まったばかりだ。楽天モバイルのプラチナバンドに関しては「他社から返してもらって、再割り当てする」なんていく奇策からスタートし、最終的にはNTTドコモが提案した3MHz幅に落ち着くなど、擦ったもんだがあっただけに、まずは「プラチナバンドをキチンと運用する」ということが求められる。
そう考えると、ソフトバンクに割り当てるのが順当といえるだろう。
他社が名乗り上げなかった理由を宮川社長は「すでに使っている事業者の移行が大変なのと、各キャリアが持っている周波数をすべて使い切っているわけではない、というのが理由ではないか。(2社と比べて)100MHz分、足りなかったハンディキャップを引っ張ったまま、2023年代に突入するわけにはいかなかった。4.9GHz帯はどうしても獲るべきだと判断した」と語る。
実際、4.9GHz帯はすぐに使えるわけではない。すでに免許局で1万3000局、登録されている免許人が660人もいるため、どいてもらう必要があるからだ。
ソフトバンクが「買えた」と思っても、そこにはまだ地主が居座っているわけで、総務省は良い意味で「電波地面師」といえそうだ。
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