米国株投資に精通し、自身も大きな資産を築き上げることに成功した作家の鈴木傾城氏。前回の記事では、2025年は「静かに株式市場から足抜け」していくとの相場観を披露したが、今回は「なぜ現金比率を高めようと考えているのか」について、さらに詳しく解説する。トランプ新大統領の政策を悲観しているわけでも、暴落煽りを真に受けているわけでもない。鈴木氏はただひたすら、合理的な「準備」を進めているようだ。(メルマガ『鈴木傾城の「フルインベスト」メルマガ編』より)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです
プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。
急変動が生じそうな2025年相場の「準備」をしておこう
2025年の相場が上がっていくのか、下がってしまうのか、停滞してしまうのか、いろんな媒体や機関や個人が意見を言っている。私自身は相場の予想はするつもりはなく、「何かが起きたら、それに合わせて動く」ことを心がけるつもりだ。
基本的に2025年は世界的に相場の動きが激しい年になるような予感がしているので、そのあたりを注目している。何しろ、ドナルド・トランプが戻ってくるわけだから、平穏ですむわけがない。
トランプは衝突や対立を恐れない気質だ。2025年1月20日に大統領の就任式が予定されているのだが、就任初日には「少なくとも25の大統領令を発出」する計画だと述べている。その内容はわかっているもので以下のものがある。
「不法移民対策関連」
「国家非常事態宣言の発令」
「メキシコ国境への部隊増派」
「国境の壁の建設再開」
「連邦移民局係官の権限拡大」
「バイデン政権下の一時的入国許可政策の終了」
「出生地主義の廃止」
「電気自動車(EV)関連支援の打ち切り」
「パリ協定からの再離脱」
「中国からの自動車や部品、蓄電池材料の輸入阻止措置の強化」
「中国への10%の追加関税の導入」
「メキシコとカナダに対する25%の関税導入」
「世界中から輸入する蓄電池材料への関税導入」
……上記をわかりやすくいうと、以下の2点に集約される。
「不法移民は出て行け、入ってくるな」
「アメリカにモノを売りたければ入場料(関税)を払え」
1月20日にこれまでのバイデン政権の政策が一気に覆されて、アメリカの姿勢は劇的に変わっていく。そうであれば、こうした政策転換の余波が株式市場に押し寄せて波乱を引き起こすのは必至である。
だから「相場の動きが激しい年になる」「平穏ですむわけがない」と考えているのだ。そのため、私は2025年の波乱に合わせて「ある準備」をしている。
個別銘柄を利確して現金比率を増やしていく
私の準備というのはシンプルで「現金を増やして相場の激変に備える」というものだ。
私のこの動きは金融専門用語では「エクスポージャーを減らす」と表現される。エクスポージャーとは要するに「特定のリスク要因」のことなのだが、「株式市場のリスクが大きいので、一部を現金化してリスクを下げる」のが、エクスポージャーを減らすという意味となる。
とはいっても、私は株式市場から全降りしたいと思っているわけではない。たとえば、ETF【VTI】は私のコア銘柄となっているのだが、これについては相場が下がっても売らずに保有し続け、ドルコスト平均法による定期的な買いは止めるつもりもない。
しかし、個別銘柄については利確していき、現金比率を増やしていく。
相場が上昇したらETF【VTI】で利益が取れる。相場が下落したら保有している現金でいろんな可能性を探れる。相場が停滞したらのんびり様子見することができる。どっちに転んでも構わない。そうやって、したたかに生き残る。
基本的に今の相場は「上昇し過ぎ」の局面でもあるので、個別銘柄から足抜けするにはちょうどいい。2024年12月にはS&P500やナスダック総合指数が史上最高値を更新したし、米国株式市場の上昇は目を見張るものがあった。
「100%を超えると割高」と判断されるバフェット指数も200%を超えている。
S&P500のPER(株価収益率)は約15~20倍が平均的とされるのだが、現在のS&P500のPERは25倍を超える水準で推移している。特にテクノロジーセクターでは50倍を超える企業もザラにある。
テクノロジーセクターに限っていえば、歴史的には1~2倍程度が正常とされる株価売上高比率(PSR)も、主要なテクノロジー企業は10倍を超えるケースが増えている。これは、収益の実態に比べて株価が大きく上昇していることを示している。
株価指数を10年平均のインフレ調整後の実質利益で割った値であるシラーPERは長期的な視点で市場の割高・割安を評価するもので、10倍以下になると市場が割安、25倍を超えると市場が割高と判断されるのだが、現在の米国市場のシラーPERは約30倍を超える水準に達している。
ただでさえ上がりすぎなのにもっと上がっていく?
いろんな指数が「買われすぎ」「上がりすぎ」を示しているのだが、だからといって2025年は暴落するというわけではない。世間の人々は相変わらず投資ブームに浮かれているし、メディアは投資を煽っているし、人工知能の熱狂もすぐに終わりそうにもない。
面白いことに、株式市場が上がっている中で、ゴールドも上がっているし、仮想通貨も上がっているし、美術品やコレクターズアイテムも上がっている。いろんな投資対象が幅広く買われている。
とにかく、「買え、買え、買え」の姿勢だ。
こうした熱狂は、何か決定的な暴落でもこない限りは、想定以上に長く続いていったりする。そう考えると、2025年は暴落するどころか、もっと上がることすらもありえる。もっと市場が上昇したら、こんなところで足抜けした私は馬鹿のように思われる可能性もある。
しかし、ただでさえ上がりすぎなのにもっと上がっていくのであれば、そっと利確して足抜けしていくのは合理的な判断であると思わないだろうか?
そんなわけで、私は株式市場のゆくえを予測しているわけでも何でもないのだが、2025年は様子を見つつ、株式へのエクスポージャーを減らし、現金比率を高める方向で動くことに決めている。
どのみち、トランプ政権の再稼働によってグローバル経済は国家間の激しい対立に振り回されることになる。
トランプ大統領は恫喝外交を進めるはずなので、アメリカと中国の対立だけでなく、アメリカと欧州の対立、アメリカとカナダの対立、アメリカとメキシコの対立も間違いなく起こる。
半導体セクターにしても、トランプ大統領は「台湾が我々のビジネスを盗んだ」と叫んでいるわけだから一波乱も二波乱もあるだろう。
そのたびに市場は激しく変動していくことになるので、その変動に振り回されるよりも、一歩引いて「何か決定的なこと」が起こるのを様子見していたほうがいいというのが私の判断だ。
【VTI】【VOO】【SPY】など保有している人はどうするべきか?
アメリカの株式市場が絶好調だと、経済はすべてうまくいっているように見えるかもしれないが、足元では不穏な動きも広がっている。
失業者も増加しているし、インフレも抑制されるどころかぶり返す恐れもあるし、高金利が続いているので米国のクレジットカード延滞率も上昇してきている。
そんな中で、景気後退《リセッション》の前兆であるといわれ――
この続きは、有料メルマガ購読者さま限定記事です。初月無料のお試し登録ですぐに全文をご覧いただけます。著者の鈴木傾城氏は、米国株式を軸に据えた資産運用術を長年メルマガで解説し、読者から絶大な支持を得てきました。
鈴木氏が提唱する投資方法は、短期的なマーケットの上げ下げに惑わされることなく、着実に不労所得を構築していくためのもの。たとえば突然、NYダウ指数やNASDAQ指数が-80%の大暴落に見舞われたとしても自分の老後は安泰。そんな、巷の「株バブル」とは一線を引いた資産運用の普及・啓蒙につとめています。
毎週のメルマガでは、投資哲学、マクロ経済分析、株式市場全般の動向、個別銘柄の動き、新たに組成された株式ETFの評価、相場急変時の解説などさまざまな情報を配信中。1日で大金を稼ぐような内容では決してありませんが、不労所得の実現にむけて株式投資に取り組む際のよきペースメーカー、よきパートナーとなってくれることでしょう。あなたも今日からはじめてみませんか?
(本記事は、メルマガ『鈴木傾城の「フルインベスト」メルマガ編』2025年1月5日号を一部抜粋、再構成したものです。続きはご購読ください)
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