今月20日に正式に発足する米国の新トランプ政権。前回の政権時と異なる部分もすでに目立ってきています。今回のメルマガ『上杉隆の「ニッポンの問題点」』ではジャーナリストの上杉さんが、大きく対応を変更した「AIと暗号通貨」に関する新生トランプ政権の方針を探っています。
トランプ政権 AI・暗号通貨シフト その主要人と顔ぶれ
2025年1月20日、トランプ政権が正式に発足する。2016年からの前回政権と違い、今回のトランプ政権は多くの政策に対して柔軟な姿勢を打ち出そうとしている。とりわけ、長年後ろ向きだったAIと暗号通貨に関しては、その対応を大きく変更して積極姿勢に転じている。象徴的なイーロン・マスクの抜擢に代表されるように、その人事を知れば、今回のトランプ大統領の狙いが見えてくる。上杉とNOBORDERワシントン支局からの情報、および独自のAIメディアの分析による最新リポートをお届けする。
暗号通貨政策の概要
規制緩和:トランプ政権は、暗号通貨産業の成長を促進するために、より緩やかな規制環境の整備に入る方針。
ビットコイン戦略準備金の創設:正式就任直後には、政府としてビットコイン等の暗号通貨を戦略的資産として保有することを宣言する予定。
中央銀行デジタル通貨(CBDC)への反対:トランプ大統領は、金融の自由と分散化を脅かすとして、CBDCの創設には強く反対している。この方針に変更はない模様。
暗号通貨諮問委員会の設立:金融業界などの影響力のある人物を集めて政策形成や規制枠組みについて助言を受ける諮問委員会を立ち上げる予定。
暗号通貨関連の税制改革:暗号通貨に対する税金の引き下げを示している。これは強く推進されるだろう。
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主要閣僚人事と暗号通貨との関係
財務長官:スコット・ベッセント
財務長官にはジョージソロスのヘッジファンドの最高責任者も務めた投資家のスコット・ベッセントを指名した。共和党政権下で初めての公然たるゲイの財務長官であり、彼の就任によりリベラル層にウイングを広げることになる。また、財務長官として特筆すべきことは、ベッセントは暗号通貨に好意的な姿勢を持ち、ゆえに、ビットコインなどの柔軟な規制環境の整備が期待されることになる。
SEC(証券取引委員会)委員長:ポール・アトキンス
トランプ大統領は、弁護士でデジタル商工会議所の仮想通貨ロビー団体「トークン・アライアンス」の共同議長のポール・アトキンスをSEC委員長に指名した。アトキンスは元SEC委員で、2017年以降トークン・アライアンス(暗号通貨擁護団体)のメンバーを務めている。暗号通貨業界からは、現職のゲンスラー委員長が暗号通貨に厳しい姿勢を取り続けてきたことから、積極的な緩和策を講じる可能性が高いと歓迎されている。
暗号通貨諮問委員会議長:デイビッド・サックス
トランプ大統領は、アルトコイン「ソラナ」の初期投資家であるデイビッド・サックスを「ホワイトハウスAI・暗号通貨担当特別補佐官」として任命した。サックスは元PayPalのCOOでもあり、ブロックチェーンの強力な支持者として知られている。サックスは暗号通貨諮問委員会の議長を務め、規制緩和を是とした法的枠組みの構築を任されるとみられている。トランプは、AIと暗号通貨の政策についてはサックスがリードすると明言している。
暗号通貨評議会事務局長:ボー・ハインズ
29歳のボー・ハインズが暗号通貨評議会の事務局長に任命された。イェール大学とウェイクフォレスト大学ロースクール卒業生で、ブロックチェーン技術の強力な支持者だ。カレッジフットボールのスター選手でもあったが、ノースカロライナ州の下院議員選挙では落選している。今回のトランプ政権ではイノベーションと消費者保護のバランスを取るような通貨システムを検討する重責を担う予定だ。
政府効率化省長官:イーロン・マスクとビベック・ラマスワミ
トランプ政権の目玉はなんといってもイーロン・マスクだろう。彼はビベック・ラマスワミと共同で新設の政府効率化省長官に就任予定だ。この省庁は、イーロン・マスクの愛する暗号通貨「Dogecoin」にちなんで「DOGE」と呼ばれている。AI「Grok」やTeslaの創始者で、スペースXやTwitter買収でも名を馳せているイーロン・マスクについては説明不要だろう。ラマスワミとともに政府の効率化と規制緩和を推進すると見られている。そのビベック・ラマスワミは中西部オハイオ州出身のインド系アメリカ人で、薬品の開発に携わるバイオテクノロジー企業などを設立して富を築き、スタートアップ界隈では知らぬ者はいないスターである。
大統領経済諮問委員会委員長:ステファン・ミラン
大統領経済諮問委員会委員長にステファン・ミランが任命された。ミランは元財務省上級顧問で、ビットコイン支持者として知られている。ブロックチェーンと分散型金融を米国経済に統合することを目指し、トランプ大統領の宣言した「米国を地球上の暗号資産の中心地にする」の理論的支柱のひとりでもある。
AI政策上級顧問:スリラム・クリシュナン
スリラム・クリシュナンが暗号通貨評議会のAI政策上級顧問に任命された。元アンドリーセン・ホロウィッツのパートナーで、イーロン・マスクのTwitter買収の資金源のひとりになったことでも有名だ。マスクととともにAIとブロックチェーン技術の融合を推進する役割を担うことになるとみられている。
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期待される影響
規制の明確化:暗号通貨業界にとっては、政府による、より明確で友好的な環境整備が期待される。
暗号通貨の主流化:政府の支持により、暗号通貨の社会的受容が一気に進むだろう。
市場の成長:政府による圧倒的な規制緩和により、米国内の暗号通貨市場の拡大が期待される。
国際的な競争力:米国が暗号通貨のグローバルハブとしての地位を強化する可能性が増すだろう。
投資リスクの増大:一般投資家が十分なリスク理解のないまま暗号通貨市場に参入する可能性があり、かつてのサブプライムローン崩壊のような経済全体への危機的な注意が必要。
トランプ政権の暗号通貨政策は、業界の成長を促進する一方で、マネーロンダリングやテロ資金供与などのリスクも懸念される。実際的な防止策の為されることが求められる。
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