年が明ければ過去のこと。自民党と国民民主党の作戦勝ち
こうした現状のため、さすがの自民党も選挙時の公約では「再稼働」に触れるのが精いっぱいで、「原発新増設」についてはパンドラの箱の奥深くに仕舞って来ました。しかし今回、野党である国民民主党からの要望ということで、まさに「渡りに舟」、自民党はマッハのスピードで経産省に打診して、原発について「次世代革新炉の開発・設置に取り組む」との文言を盛り込んだ「第7次エネルギー基本計画」の原案を策定し、12月17日、経産省に発表させたのです。
玉木氏が11月27日に石破首相に要望書を提出してから、わずか3週間後という早業です。これは、どうしても12月中に発表し、一時的に批判の声が挙がっても、年が明ければみんな忘れる作戦なのでしょう。実際、前回の第6次エネルギー基本計画が発表されたのは2021年10月、その前の第5次は2018年7月、その前の第4次は2014年年4月であり、年末のバタバタした時期の今回の発表は異例中の異例なのです。
この原案に対して、朝日新聞は「原発回帰ありき」、毎日新聞は「被災地、原発回帰に怒り」、東京新聞は「こりずに原発回帰」などと一斉に批判の声を挙げましたが、それも一時的なものとなり、年が明ければ過去のこととなってしまいました。自民党と国民民主党の作戦勝ちです。
玉木雄一郎の「原発は安価な電力」という大きなウソ
さて、ここで先ほどの玉木氏によるツイッターでのミスリードについて説明します。これは多くの人が知らないか忘れていると思いますが、あたしたちが毎月支払っている電気料金には、原発事故後10年目の2021年10月から、今もずっと「賠償負担金」と「廃炉円滑化負担金」が上乗せされているのです。前者は原発事故による賠償金の不足分で約2兆4,000億円、後者は廃炉作業のための国民負担分で約4,740億円です。
こんなものを消費者に負担させなければ運用できないくせに、何が「安価な電力」なのかと、あたしは玉木氏や原発推進派の皆さんに聞きたいです。「原子力は未来のエネルギー」などと大嘘を垂れ流していた何十年も前のデタラメ試算を未だに引っ張り出して来て「原発は発電コストが安い」などと抜かす大バカは、今すぐ福島第1原発の廃炉作業に行ってください。
アメリカの金融・経済情報サービス「ブルームバーグ」が、均等化発電原価(発電方式別の発電コスト)を試算したところ、もはや完全に前時代の遺物となりつつある原発の発電コストは、最新型の風力発電や太陽光発電など再生可能エネルギーの「3~6倍」も掛かると報告されました。こうした事実を踏まえれば、今すぐにすべての原発を止めることはできないとしても、決して「新増設」などはせず、再生可能エネルギーに置き変えつつ、原発はフェードアウトして行くべきなのです。
そもそもの話、もしも福島第1原発事故が起こらなかったとしても、原発は「トイレのないマンション」なのです。原発を運用し続ける限り、無限に増え続ける使用済み核燃料の処理の問題は、今もまったく解決していません。自分が生きてる間さえ良ければ未来などどうなっても構わないと思っている無責任な人たちは「地層処分」などと抜かしていますが、4つのプレートが常に干渉し合っている上に、北から南まで2,000を超える活断層が縦横無尽に走っている日本列島の地下に使用済み核燃料を埋めるなんて、正気の沙汰とは思えません。
人が近づけば数十秒で死んでしまう使用済み核燃料は、無害になるまで10万年以上も掛かりますが、これを比較的安全な状態にするための容器は100年しか持ちません。つまり、地下数百メートルに埋めた大量の使用済み核燃料は、100年ごとに掘り出して、新しい容器に入れ替えて、また埋めなければならないのです。これを10万年先まで、一体、誰がやってくれるのでしょうか?
今のあたしたちにできることは、せめてこれ以上は使用済み核燃料を増やさないこと、これ一択です。それなのに、どうして東大まで出てる玉木氏は、高卒のあたしでも分かるこんな当たり前のことが理解できないのでしょうか?その答えは簡単です。国民民主党は電力総連や電機連合など原発に関連した産業別労働組合から支援を受けており、これらの労組の組織内議員を党内に何人も抱えているからなのです。
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