MAG2 NEWS MENU

自民・萩生田氏が悩む「櫻井よしこ氏の熱い眼差し」高市応援、石破おろし、選択的夫婦別姓反対…これ俺が全部やる流れか?

自民非公認の“裏金議員”として昨年10月の衆院選(東京24区)を戦い、しぶとく生き残った萩生田光一氏。全国の有権者からは今も厳しい視線が注がれるが、勝ちは勝ちとばかりに政治的巻き返しをはかる。そんな萩生田氏に並々ならぬ熱い期待を寄せているのが、櫻井よしこ氏らいわゆる「岩盤保守」の論客たちだ。もっとも、元全国紙社会部記者の新 恭氏の見立てでは、萩生田氏にとってその期待感は「嬉しいというよりむしろ相当なプレッシャーになっているに違いない」とも。高市早苗氏を盛り立て「石破おろし」を仕掛けるには、多くのハードルを乗り越える必要があるようだ。(メルマガ『国家権力&メディア一刀両断』より)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:岩盤保守の願望を叶えられるか。萩生田氏にかかる「石破おろし」の重圧

この記事の著者・新 恭さんを応援しよう

メルマガ購読で活動を支援する

櫻井よしこ氏が萩生田光一氏に「石破おろし」熱望

昨年10月の衆院選を無所属で戦って当選した萩生田光一氏は、新年から晴れて自民党に復帰できたようだ。時事通信などの記事によると、自民党が「党所属国会議員」として扱うことにしたという。

といっても、もともと党籍はあり、先月18日に政倫審で弁明したあと、次期衆院選の公認候補予定者として東京24区支部長に就任していたのだから、既定路線ではあった。

とにもかくにも、政倫審出席をもって裏金問題の“みそぎ”はすませたと、党も萩生田氏本人も、世間の受けとめとは無関係にそう考えているわけだ。

萩生田氏が新年になって積極的にネット動画の番組に出演しはじめたのは、そんな自分勝手な割り切りがあるからにちがいない。

1月10日夜の言論テレビ「櫻LIVE」。主宰する櫻井よしこ氏の「安倍自民党を再生するのは萩生田さんしかいない」という激励に、萩生田氏はにこやかに応えた。

「再生と復活の年にしたい。気持ちを新たに色んな事に挑戦するつもりです」

“安倍自民党の再生”こそ、櫻井氏ら岩盤保守を代表する言論人の願いである。その根底には、今は亡き安倍晋三氏に替わりうる人材が育っていない自民党への不満がたまっている。

政治の刷新を名目に安倍派の解体を企図した岸田文雄前首相への憤りは今も鎮まらない。安倍元首相の政敵とされてきた現在の石破茂首相に対する負の感情はそれ以上といえる。

昨年の総裁選では高市早苗氏に期待をかけた。第1回目の投票で高市氏がトップに立った時、喜びは最高潮に達した。だが、決選投票で石破氏に逆転を許し、“安倍政治”を継ぐ女性総理の誕生という夢は破れた。

落胆した岩盤保守層の多くはその後の衆院選で自民党から離れ、国民民主党、参政党、日本保守党へと流れた。その結果、自民党は大敗したが、石破首相は政権にしがみついた。それに対し、高市氏が反旗を翻す兆しは今のところない。

櫻井氏ら保守言論人三人が萩生田氏を囲んだ「櫻LIVE」では、当然のことながら、石破首相の政策に対する批判が噴出した。とりわけ、中国との距離を縮めようとする外交政策は格好のターゲットだ。

【関連】杉田水脈はなぜ女のプライドを捨て「エセ保守の男たち」に媚びたのか?安倍・萩生田・ほんこん…男の顔色を窺う人生で得たモノ失ったモノ

「石破首相ではだめだ」中国との関係改善に苛立ち隠さず

岩屋毅外務大臣は昨年12月、中国を訪問し李強首相、王毅外相と会談した。

そのさい、王毅外相の早期訪日を実現し「ハイレベル経済対話」を行うことで一致し、中国人向けのビザの発給要件などを緩和する方針を打ち出した。日中韓首脳会談(サミット)の開催や、石破首相の訪中、習近平国家主席の訪日を視野に入れているとメディアで報じられている。

13日からは自民党の森山裕幹事長と公明党の西田実仁幹事長が訪中し中国共産党との政党間交流を行った。岩屋外相も韓国やフィリピンなどを歴訪した。

その一方で、石破首相の対米外交は、なんともちぐはぐだ。1月中旬にトランプ氏と会談する方向で水面下の調整をしていたが、結局、先送りにしてしまった。

石破首相は昨年11月に南米を訪問した後、トランプ氏に会談を働きかけたが、「就任前に各国首脳とは正式会談をしない」と断られた。カナダのトルドー首相やフランスのマクロン大統領とは会っているから、軽く扱われたということなのだろう。

中国との関係改善には素早く手を打つわりに、同盟国の次期大統領との人間関係構築には尻込みしているように見えてしまう。会談日程の先送りについて“安倍外交”を絶賛してきた保守層から「トランプ氏が苦手で逃げているんではないか」と嫌味な声が上がるのもやむをえまい。

「櫻LIVE」の出演者たちは「石破首相ではだめだ」と口をそろえた。石破氏でだめなら、高市氏か。だが、今のところ、自民党内に何の動きもない。櫻井氏が「高市さんを盛り立てていくとしたらどういうように・・・」と水を向けると、萩生田氏は次のように語った。

「総裁選のネクストバッターズサークルにいると思っている。全国をまわっておられるし、総裁選でたくましさが増した。あとは胆力。変な時に繊細で、夜中にメールしてきたり。細かいこと気にしないでやってほしい」

この発言はどうとらえるべきだろうか。高市氏を総裁選で支援した安倍派議員の多くが落選している。麻生太郎氏が総裁選で高市支援にまわったが、次回は誰を応援するかわからない。全国の党員にリーフレットや郵便物を郵送し、様々な経費がふくらむ総裁選には「億単位」の資金が必要とされる。無派閥の高市氏に二年連続でチャレンジする余力はあるのか。

萩生田氏が「石破おろし」を仕掛けるのはいつか?

それでも、萩生田氏が本気で高市氏をバックアップし、「石破おろし」を仕掛けるとしたら、どのタイミングになるだろうか。

党内で反乱が起こる可能性が高いのは、選択的夫婦別姓の法案が提出される時だろう。2月末に新年度予算案が衆院を通過し年度内の成立が確定すれば、その後に議員立法で選択的夫婦別姓法案が提出される可能性が浮上している。

立憲民主党、公明党、共産党、国民民主党、れいわ新選組、社民党は賛成の立場。自民党と日本維新の会は慎重姿勢だ。しかし、もともと石破首相は前向きだったことから、最終的には自民党も賛成にまわって成立するのではないかと保守派の論客たちは疑心を深めている。

2023年6月に成立したLGBT法を、当時の自民党政調会長、萩生田氏が阻止できなかったことを念頭に、櫻井氏は選択的夫婦別姓法案についてこう言い放った。

「やろうとしているのが石破さんや野田さん。迅速に強力に反対していただかないと、萩生田さんへの期待もしぼむと思う。コアなる支持者の自民党離れが進み、自民党が崩れちゃう」

萩生田氏は「(夫婦別姓ができずに)どういう分野が困っているのかということをきちんと聞き、穴を埋めていけば、別に法律を作る必要はないのではないか」と語る。

だが、統一教会や裏金の問題で自民党の腐敗を象徴するような存在となった萩生田氏にどれだけの影響力が残っているのだろうか。

しかも、昨年の衆院選に立候補した旧安倍派の50人のうち当選したのは22人にすぎない。安倍派5人衆のうち総理への最有力候補と目されたころの勢威は明らかに衰えている。持ち前の腕力で巻き返しをはかろうとしているところだろうが、保守論壇からの期待の声は、嬉しいというよりむしろ相当なプレッシャーになっているに違いない。

石破首相と関係回復も?気になる麻生太郎氏の動向

そこで、気になるのは党最高顧問という名ばかりのポストに甘んじている麻生太郎氏の動向だ。高市氏に対しては、昨年の総裁選で支援し、敗れた後も次に向けて準備するようアドバイスしていたが、“同盟関係”が今も続いているのかどうか。

【関連】「高市、飲み会に行け」麻生太郎氏の倒閣作戦に酒がいる理由。石破総理が自民“党内戦争”を制する最低条件とは?

このところの麻生氏は、かつてあれほど毛嫌いしていた石破首相との関係を修復しようとしているようにも見える。

安倍政権で総理補佐官や党総裁外交特別補佐をつとめトランプ氏周辺にパイプのある側近、薗浦健太郎氏(元衆院議員)の手配により、いち早く自ら渡米してトランプ氏に会ってきたかと思うと、こんどはトランプ氏夫妻との会食を希望する安倍昭恵氏の渡米に薗浦氏を同行させ、「石破首相に会いたいと思っている」というトランプ氏の発言を引き出した。

これを受けて、石破首相は昨年12月24日、麻生氏と国会内で30分ほど面会し、トランプ氏へのアプローチについてアドバイスを受けている。首相のほうから丁重に相談を持ちかけられたのだから、悪い気はしないだろう。

一部のメディアでは、麻生氏による石破首相への嫌がらせだとか、揺さぶりだとかいう声が上がっているが、それよりも麻生氏としてはとりあえず首相に恩を売っておきたいという気持ちが強かったのではないだろうか。

今後の政局がどう転んでも対処しやすいからだ。つまり、麻生氏の腹のうちはまだ決まっていないと考えたほうがいい。

萩生田氏にすれば、岩盤保守層の期待に添いたいのは山々だが、今のところ手がかりがみつからないというのが本音だろう。それでも、政界の一寸先は闇だ。今夏に参院選をひかえ、石破首相を引きずり下ろしたいという空気が徐々に高まってくれば、何らかのきっかけで状況はあっという間に変化し、萩生田氏や高市氏が反乱ののろしをあげる時が来るかもしれない。

だからといって、自民党の権力争いが政治刷新につながっていくとは思えないのが、われわれ国民としてはつらいところだ。

【関連】櫻井よしこ「大炎上」に見る保守言論の衰退。なぜネトウヨは女教祖を見捨てたか?愛国・韓国・カルト三店方式の限界点

この記事の著者・新 恭さんを応援しよう

メルマガ購読で活動を支援する

 

【関連】UFOと戦争、あるいは“空飛ぶ円盤”櫻井よしこと三島由紀夫の「愛国」をめぐる相違について

image by: 萩生田光一 公式Facebook

新恭(あらたきょう)この著者の記事一覧

記者クラブを通した官とメディアの共同体がこの国の情報空間を歪めている。その実態を抉り出し、新聞記事の細部に宿る官製情報のウソを暴くとともに、官とメディアの構造改革を提言したい。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料お試し登録はこちらから  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 国家権力&メディア一刀両断 』

【著者】 新恭(あらたきょう) 【月額】 初月無料!月額880円(税込) 【発行周期】 毎週 木曜日(祝祭日・年末年始を除く) 発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け