第2期トランプ政権は「カオス状態」必至。ど素人&出来損ないのトラブルメーカーで溢れかえる米ホワイトハウスの絶望

 

発足直後から相互不信の塊だった第1次トランプ政権

それと同時に、すぐにでも始まるのは政権内部の対立抗争、足の引っ張り合いである。ピーター・ベイカーとスーザン・グラッサーの『ぶち壊し屋』(白水社、24年10月刊)は、上下巻合わせて1,000ページ近く、しかも2段組で小さ目の活字がびっしりという大著だが、トランプ第1期政権の4年間に「ほとんど呆れるしかないほどのならず者の大統領」の下で「その闘争本能、気まぐれなやり方、それに国家の利害と私的な利害とを混同する性癖のおかげで」ホワイトハウスがどれほどの大混乱に陥り、「アメリカがあと一歩で危機に直面するところ」にまで追い込まれていたことの詳細なドキュメントである。

政権は最初から相互不信の塊だった。同書は述べている。

▼「誰もが嘘をついていましたからね。いつもです。それにほぼ何ごとに関しても」(発足時の補佐官)。「トランプ政権ではどんどん人を裏切らないと、気づいたときには自分がまんまと裏切られていたという羽目になるんですよ」(ある閣僚)。

▼このような混乱は偶然の産物ではなかった。それは何十年も前からトランプのビジネス手法であったし、テレビのリアリティー・ショー「アプレンティス」でもトランプが説いていたものだ。トランプは「人の世は残忍な場所だ。ジャングルと少しも変わりやしない」と述べた。トランプの政治手法は野放しの弱肉強食型で、まさに万人の万人に対する闘争であり、その経営スタイルは教科書どおりの分断統治だった。トランプは政権を従来どおりのやり方で構成することを拒み、内部抗争を踏み台にし、結果的に自分が唯一の権威ある決定者となるように仕向けたのだった。

▼「トランプは一致団結をめざすようなチームを率いるつもりはありませんでした。内紛や内輪揉め、つかみ合いの喧嘩を防ごうともしませんでした。まるで出演者たちが熾烈に競い合う『アプレンティス』めいた世界でしたよ。トランプは配下の連中が張り合い、互いに抗争することを好んだのです。要するにトランプの歓心を買うための競争です」(ある政権幹部)〔以上、P.46~47〕。

▼トランプにとって、人生は勝つか負けるかのゼロサム・ゲームだった。相手の方が成功していれば、それはその分だけトランプがしくじっていることを意味した。「私はウィン・ウィンというものを信じない。私が信じるのは、私が勝利することだ」と、トランプは伝記作家に語ったのだった……。〔P.40〕

このような恐ろしい人生観を彼はどこで身につけたのか。1月17日に都内で封切られた映画『アプレンティス/ドナルド・トランプの創り方』では、若きトランプが伝説の弁護士ロイ・コーンから教え込まれた「3つのルール」、すなわち、

第1に攻撃、攻撃、攻撃。攻撃あるのみ。
第2に絶対に非を認めるな。
第3に常に勝利を主張せよ。

――に由来すると描かれているらしいが(私はまだ観ていない)、ピーターとスーザンの『ぶち壊し屋』では、父親の教えとされている。

▼「おれは勝ちたいんだ」と。トランプはいつでもその一点にこだわってきた。父親のフレッド・トランプは「殺し屋」になれと。息子は生涯を通してその言葉を崇め、実践したのである。トランプは何事でも優位に立ち、決して譲らないことを身につけた……。〔P.40〕

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