60歳以上が4割弱。職員の高齢化が進む訪問介護の現場が「熱意と努力」だけで成立している現状

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いわゆる「団塊の世代」の約800万人全員が75歳以上となり超高齢化社会を迎えることで、社会に様々な影響が生じるとされる「2025年問題」。中でも深刻なのが介護の現場ですが、その問題解決は決して容易な事ではないようです。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では健康社会学者の河合薫さんが、国が進める「地域包括ケア」の考え方を評価する一方で、現場の熱意と努力だけで成立していると言っても過言ではない訪問看護の実態を紹介しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:在宅ケアと2025問題

プロフィール河合薫かわいかおる
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

2025年問題の本質。「在宅ケア現場」の厳しい実態

フジテレビ問題に関するニュースで、影が薄くなってしまった通常国会ですが31年ぶりの少数与党で、これまでとは異なる様相になりました。

そんな中、先月29日、立憲民主と国民民主両党は、介護事業者への補助金支給などを盛り込んだ緊急支援法案を衆院に共同提出しました。2024年度介護報酬改定で、訪問介護の基本料が引き下げられ、現場に深刻な影響が出ているためです。

これまでも訪問介護現場は厳しい状況の中でも、なんとか現場の努力で乗り切ってきました。

しかし、小さな事業所では介護報酬の引き下げがダイレクトに影響。物価高の影響もあり、24年の「介護事業者」倒産が、過去最多の172件(前年比40.9%増)に達し、「訪問介護」が過去最多の81件、「デイサービス」も過去2番目の56件といずれも増加しました。休廃業や解散も最多の612件で、大半が従業員10人未満の零細業者です。

立憲と国民の案では「補助金は約357億円」を見込んでいて、25年度予算案に反映するよう修正を求める方針とのこと。一方、福岡厚生労働相も、昨年11月20日に日本経済新聞などのインタビューに、介護業界の賃上げに前向きな姿勢を示し、「特に訪問介護では人手不足が経営上のリスクになっている。25年度予算案の概算要求で求めた支援策を、経済対策に前倒しして盛りこみたい」と話していました。

団塊の世代すべてが後期高齢者に突入したという現実もありますから、早急にまとめて、実行に移すことが期待されます。

とはいえ、訪問介護も含めた「在宅ケア現場」は、国が進める「地域包括ケア」のひずみが山積していて、1つを解決すればそれでいいというものでは、もはやないほどまるで絡まった糸のように混沌としています。

地域包括ケアは、一言で言えば「最後まで自宅で」という考え方。医療や介護が必要な状態になっても、住み慣れた地域で自立した生活を続けることができるよう医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保されるという国の考え方です。

このような考え方は「人の尊厳」を重視しているし、ある意味においてとても人に寄り添っています。しかし、実態はそこで働く人たちの誠意に依存してる側面が大きいのです。

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