4月から新社会人になる人も、新入社員を迎える人も、新しい環境への準備が必要な時期がやってきました。仕事場では、年の差を感じながらも、新入社員への指導方法に苦悩する先輩たちが少なくないようです。そんな中、累計25万部超の「すぐやる技術」シリーズの著者である久米信行さんに宛てて、「20代の新入社員に“すぐやる技術”を正しく伝える方法」についての相談が届いたようです。久米さんが自身のメルマガ『久米信行(裏)ゼミ「大人の学び道楽」』の中で、この質問を「4つのポイント」に分けて回答しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:20代に「すぐやる技術」を伝える留意点
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オトナの放課後相談室:20代に「すぐやる技術」を伝える留意点
Question

新入社員を指導する機会があります。もうすぐ還暦を迎える私は「すぐやる技術」に書かれているような内容を伝えて行きたいと思いますが、今の20代に伝えるに当たっての留意点等ありましたら、アドバイスいただきたいです。
(東京都/50代/男性)
久米さんからの回答
まずはマンガ版から童話へ。指導や命令より、お得な裏ワザとして紹介を。
うれしい質問をありがとうございます。まさに私が20年近く、大学で苦労し続けてきたことで、まだ正解はわからないのですが、経験から少しずつ体感できたことをお伝えしたいと思います。
1. 読書嫌いな若者もマンガなら読んでくれる
もともと拙著『すぐやる技術』は、明治大学の授業を聴講してくださった編集者の発案によるもので、まさに20代の若者のために書いた本です。学生からの一問一答形式で、なおかつ図解も入れて学生にもわかりやすく書いたつもりです。
ところが、昨今は、明大生でさえ、本を進んでは読まなくなりました。毎年、教科書として、課題図書にしているのですが、どうも芳しくないのです。
そのため、編集者と頭を悩ませて作られたのが、マンガ版『すぐやる技術』です。
こちらを教科書にしたら、当たり前と言えば当たり前なのですが「読みやすかった」「わかりやすかった」との声。一般論ではなく、いかにも近くにいそうな引っ込み思案の女性社員を主人公にしたのも共感を生んだようです。まるで「私のようだった」という声も聞かれました。
そして、続いての課題図書を「すぐやる人だけがチャンスを手に入れる」という半分童話仕立ての本にしたのです。マンガよりはとっつきづらかったようですが、話の途中途中にある質問にも、自分のことのようだとドキッとさせられたようです。
つまり、20代の若者には、本よりもマンガ、言葉より映像、教訓よりも身近なエピソードの方が、とっつきやすいようです。
2. 過去の成功体験を引用すると「何それ自慢」と思われる
私は中小企業経営者になることを宿命づけられていたので、20代には山ほど先輩経営者の公演を聴きあさりました。当然ながら、講演の中には、工夫や努力をして成功に至った話を盛り込まれ、私はそれを役立つ面白い話として聞いておりました。
しかし、私が、過去の経歴で、その手の話をすると「何それ自慢」という気持ちになり、反感を買いがちなのが、イマドキの若者の厄介なところなのです。
あまりに夢が無い時代を生きてきたことや、周りに役立つ訓話をしてくれるような大人がいなかったからかもしれません。
しかし、昔は自分もダメ人間だった、大きな悩みを抱えてきたと、この年上のおっさんも自分と同じ仲間だと思ってもらえると、少しは素直に話を聞いてくれるようになります。
ですから、自分は、すぐやることができなくて苦労してきた。失敗を繰り返してきた。しかし、ある時、ふとしたきっかけで…ぐらいのエピソードだと、「何それ自慢」とは思われなくなるはずです。
3. 簡単で即効性があり、効果が実感できるSNS交流を試してもらう
日本特有の同調圧力が強い環境で、目立たぬよう、足を引っ張られぬよう生きてきた若者たちですから、大胆なことを「すぐやる」度胸はありません。
そこで、簡単で即効性があることから、すぐやることを始めてみましょう。
例えば、instagramをやっているけれどfacebookがまだという多くの若者には、「すぐやる」「認められる」facebook体験をしてもらうと良いでしょう。
ご自身が親しくしているSNS通の社員や友人何人かにも協力してもらい、友人たちのfacebookをフォローして「いいね」と「コメント」をしてもらうのです。
そのコメントに大人=社員や友人からお礼の返信をしてもらったり、若者たちのfacebookに「いいね」や「コメント」をしてもらうのです。さらには友達にもなってもらえたら、もっと喜ぶでしょう。
明治大学にお呼びしているゲスト講師の多くはfacebookをやっているので、学生たちのコメントには、同様のレスポンスをしてくださっています。すると学生は小さな自信を得て、自己肯定感も高まるようです。
いきなり、あいさつをしたり、お礼の手紙を書くのは、ハードルが高いですが、SNSで大人とつながる経験は簡単かつ新鮮で嬉しいものでしょう。
4. SNSでのコメント交流や、嬉しい体験の感想をほめる
もし2回、3回と、若者たちの「すぐやる技術」のお話をする機会があったら、2回目は、1回目に試してもらったことの報告をしてもらうと良いでしょう。
SNSを使った課題なら、若者のコメントと、ご自身の友人からの返信コメントのやりとりをみんなに簡単に大画面で見せてシェアできます。
若者の多くはシャイで自己肯定感に問題を抱えていますが、ご自身がコメントのやりとりを読み上げてほめてあげた上で、一言感想を聴くぐらいなら抵抗はないでしょう。
ここでもほめて拍手をしてあげれば、その若者も、一緒に聴講していた若者も、ほっこり良い気分になって、また試してみたいと思うはずです。
こうしてご提案しながらも、まだ最良の方法に私がたどり着けていないもどかしさを感じています。しかし、ひとつだけ言えるのは、内心変わりたいと思っている若者が、実は多いということです。そのきっかけがつかめないだけで、やさしく背中を押してあげて、ほめてあげる大人に出逢えなかったのです。
ぜひ、ご自身が、最初に認めてあげる大人になることで「すぐやる若者」を一人でも増やしていただければ幸いです。
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