中国発のオープンソース大規模言語モデルのAI「DeepSeek」を採用する中国自動車メーカーが続々と出はじめているようです。日刊で中国の自動車業界情報を配信するメルマガ『CHINA CASE』では今回、DeepSeekが絡むことで中国の自動車業界がどのように変わる可能性があるのかを解説しています。
DeepSeekが中国自動車業界にも衝撃、メーカーによる採用続々
世界のAI業界を席巻した、中国発の生成AI、DeepSeek。
オープンソースの大規模言語モデル(LLM)というユニークさから、中国ではバイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイなどクラウドサービスがDeepSeek仕様サービスを発表。
今回、中国自動車メーカーも続々とDeepSeekの採用を発表している。
DeepSeekは中国の自動車業界にも激震を走らせることになるのか?
LEAPの場合
現時点までに、DeepSeekとの連携を発表しているのは、例えばまずは中国新興メーカーLEAPだ。
同社が独自に開発した生成AIによるスピーカーシステムをDeepSeek-R1と融合、スマートコックピットの対話精度向上を図っており、間もなくOTAにより配布が行われる見込み。
LEAPはさらに社内IT業務にもDeepSeek-R1を活用、社内業務の効率化を進めている、とした。
Geely、東風、上汽
吉利(Geely)はやはり自社開発の「星睿大規模モデル」とDeepSeek-R1を統合、FunctionCallを活用し、音声アシスタントや車両制御の精度を向上させる、とした。
東風集団も傘下ブランド「猛士」「風神」等のモデルにDeepSeekを搭載、2025年4月にはOTAによるアップデートを予定している。
また、やはり東風の「嵐図(VOYAH)」も、中型SUV「知音」からDeepSeekを搭載したAIアシスタントを導入、OTAでの継続的な機能改善を予定している。
大きく上汽集団でも、五菱(Wuling)のブランド「宝駿(Baojun)」や「智己(IM)」でもDeepSeekの採用を発表している。
スマートコックピット強化
こうした背景には、マルチモーダルAIの強化を各社が進めていることが挙げられる。
車載インタラクションとスマートコックピットの利便性向上を図り、DeepSeekが車載AIの新たな標準技術として定着する可能性が高い。
今までの中国製生成AIがどうしてもOPEN AIのChatGPTに敵わなかったのに比べ、DeepSeekは費用面はもとより、能力面もそれを凌駕する可能性が指摘されている点も、その傾向を後押ししている。
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オープンソースの強み
DeepSeekは完全オープンソースの大規模言語モデルであり、各社が自由にカスタマイズできる点に強みがある。
メーカー独自のデータを学習させ、車載AIを最適化でき、オープンソースのため、運用コストを抑えられる。
中国に特化した生成AIだけに、中国市場向けのデータに特化したトレーニングにも利便性が高い。
様々な応用の可能性
また、DeepSeekは大規模言語モデルとして、自然な対話能力とマルチモーダル処理(テキスト・音声・画像の統合)を備えている。
これにより、音声アシスタントの精度向上(多ターン会話、意図理解の向上)、FunctionCallを活用した車両制御の最適化(エアコン操作、ナビ設定など)、運転支援機能の強化(リアルタイム音声ガイド、危険予測アラート)などが期待できる。
中国のダブルスマート化、スマートコックピット/ドライブの現在の傾向もAIの高度化がブランド価値向上に直結する面も大きい。
メーカー独自開発は不要に?
さらに中国では現在、複数のメーカーが独自の大規模モデルを開発しているが、DeepSeekをコア技術として標準化し、業界全体で共有する可能性も考えられる。
これにより、車載AIの開発コストを削減し、競争力を強化できるし、何よりもこちらの方がシンプルで高性能になる可能性がある。
DeepSeekはマルチモーダルAIとして進化を続けており、今後はジェスチャー操作や視線追跡、感情認識なども組み込まれる可能性がある。
これにより、より直感的なインタラクションが実現、HMI(ヒューマンマシンインターフェース)の最適化も可能となる。
出典: https://auto.gasgoo.com/news/202502/9I70417968C109.shtml
※CHINA CASEは株式会社NMSの商標です。
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