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トランプ vs プーチン「停戦協議」のカギはクルスク州か?二人は決して“親友”なんかじゃない

米トランプ大統領とロシアのプーチン大統領は18日、ウクライナ戦争の停戦協議をおこなうことが発表されました。ウクライナのゼレンスキー大統領との「決裂」動画の記憶が新しいトランプ氏ですが、曲者プーチン氏とはどのような「取引」をするつもりなのでしょうか? 今回のメルマガ『在米14年&海外販路コンサルタント・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』では著者の大澤さんが、両国首脳の思惑と裏側を解説しています。

トランプとプーチンの駆け引き

ウクライナ戦争、停戦は実現するでしょうか。

トランプ大統領は何をしたいのだろう?と思う人も多いでしょう。

世界が見ている記者会見でゼレンスキー大統領と喧嘩をするなんで前代未聞です。

私の印象は、トランプ大統領は本当にディール(取引)を好むという事です。

そして、このウクライナ戦争に関しては

  1. ロシアとウクライナを停戦させる 
  2. アメリカの利益を最大化させる

を焦点にディール(取引)をしようとしています。

その角度から見ると、今の状況が見えてきます。

何度も解説したように、トランプ大統領がプーチン大統領と停戦交渉するためには、強力なカードが必要です。

それで、まずウクライナと、資源と引き換えに軍事支援を継続する合意を結ぶことを目指しました。ロシアにとって米国の軍事支援の継続は最も嫌なカードでしょう。

しかし、2月28日のゼレンスキー大統領とミーティング、合意直前の記者会見で喧嘩別れになりました。

バンス副大統領の「あなたは失礼だ。米国と大統領にもっと感謝すべきだ」という発言で、はっきりと雰囲気が変わったのです。

これはトランプ大統領とバンス副大統領が示し合わせていたと思います。事前承認なしに、副大統領にこのような発言ができるわけがないからです。

理由は、まだウクライナ国内の意見が固まっていないとトランプ大統領が見たからでしょう。

思い返すと、昨年までロシアが小型の戦術核を使うのではないかという恐れさえありました。それがこの会談前には「停戦は当然できるだろう」という雰囲気になっていました。

人間は欲しかったモノが手に入るとわかったとたんに、それを当然のように思い始めるのです。

この時も同じです。「停戦は当然。問題はその条件だ」といった雰囲気です。これはウクライナにも、それを見守る世界にもありました。

ディールを何度も経験しているトランプ氏は、これをよくないと考えたのでしょう。ウクライナに不満分子が存在して一枚岩でないと、ロシアに突かれるからです。また自分の功績を過小評価されるという思いもあったでしょう。

それでウクライナと世界に「停戦は当然のことではない」と思いしらしめるために、あえて合意調印前に1時間もの記者会見を開いて、決裂させたのです。

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続いて3月3日にはウクライナへの武器供与の一時停止を指示しました。

このウクライナへの恫喝は効き、米国の提示する停戦条件に反対する人は力を失ったでしょう。ウクライナは一枚岩になったのです。

ウクライナは3月11日に米国が提案したロシアとの30日間の停戦案を受け入れる用意があると表明しました。

これでトランプ大統領はプーチン大統領との交渉の足場を固めたのです。

さて今、プーチン大統領は何を考えているのでしょう。

「米国の停戦案には戦争の根本原因の除去がない」と難色を示しています。

しかし注目すべき点は停戦案を完全に否定はしていないという事です。

条件に文句をつけているだけなのです。

その条件交渉、実質的なポイントはクルスク州です。

昨年8月、ウクライナ軍がロシアのクルスク州に侵攻しました。今、ロシア軍は全力で取り戻そうとしています。

なぜ今なのでしょう?

米国・ウクライナ側の停戦交渉のカードには「クルスク州からの撤退」があるはずです。

例えば「ウクライナ軍はロシアのクルスク州から撤退するから、ロシア軍はウクライナのxx地域から撤退せよ」、といった交換条件です。

プーチン大統領は自力でクルクス州を取り戻すことでそのカードを無効化させたいのです。

クルクス州の戦闘の行方は遠からずハッキリするでしょう。その時点で停戦合意の準備が双方にできたという事になります。

こういった視点からみると、停戦交渉は今までのところトランプ大統領の想定内で進んでいる事がわかります。

P.S.
なお、トランプ大統領とプーチン大統領に密約があって共謀してウクライナを蹂躙しようとしている、といった考え方がありますが、それは間違っています。

そのような打診をトランプ大統領がプーチン大統領にすれば、それはプーチン大統領に大きな弱みを握られることになるからです。

トランプ大統領とプーチン大統領はお互いを「敵として信用できる」と感じているだけで「本当の親友」ではないのです。

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image by: bella1105 / Shutterstock.com

大澤 裕この著者の記事一覧

・株式会社ピンポイント・マーケティング・ジャパン 代表取締役社長  ・情報経営イノーベーション専門職大学 客員教授 ・法政大学大学院イノーベーションマネジメント研究科 兼任講師 慶應義塾大学を卒業後、米国バンカーストラスト銀行にて日本企業の海外進出支援業務に従事。カーネギー・メロン大学でMBAを取得後、家業の建築資材会社の販売網を構築するべくアメリカに子会社を設立。2000年、ピンポイント・マーケティング・ジャパンを設立。海外のエージェントとディストリビューターを使った販路網構築・動機づけの専門家として活動を行っている。2015年「中小企業が『海外で製品を売りたい』と思ったら最初に読む本」を、2017年「海外出張/カタログ・ウェブサイト/展示会で 売れる英語」をダイヤモンド社から上梓。

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【著者】 大澤 裕 【月額】 ¥330/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎週 日曜日

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