関税という武器を振りかざし、各国に脅しをかけるかのような外交を展開するトランプ大統領。そんな合衆国大統領が次に打ったのは、輸入映画への100%の課税という誰もが予想だにしない一手でした。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では、トランプ氏がかような策を取るに至った背景を解説。その上で、輸入映画に関税をかける前に同氏がすべきことを提示しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:【アメリカ】ハリウッド再建には関税よりポリコレ改善が先?
トランプが「アメリカへ輸入されるすべての映画に100%関税」よりも先にやるべきこと
● 米 トランプ大統領 外国製作の映画に100%の関税課す方針
トランプ大統領が、アメリカに輸入されるすべての映画に100%の関税をかけると言い出しました。トランプ関税は映画業界まで巻き込むつもりのようです。詳しくは、以下、報道を一部引用します。
アメリカのトランプ大統領は4日、SNSへの投稿で「アメリカの映画産業が急速に衰退している。ほかの国々が映画製作者やスタジオをアメリカから引き離すためにあらゆる優遇措置を提供している」と主張しました。
その上で「これは組織的な取り組みで国家安全保障上の脅威だ。商務省と通商代表部に対し、外国で製作され、わが国に輸入されるすべての映画に100%の関税を課す手続きをただちに始めるよう権限を与える。アメリカで再び映画を製作させたい!」と投稿しました。
● 米 トランプ大統領 外国製作の映画に100%の関税課す方針
アメリカ映画が衰退しているのが気に入らないから、海外の映画をアメリカで上映するなら高い関税をかけるということですね。しかし、ハリウッド映画が飛ぶ鳥を落とす勢いだったのは、遥か昔です。ハリウッド映画は衰退して久しく、衰退の理由は様々ありますが、大きな理由はただひとつ、ハリウッド映画がつまらなくなったからです。
かつての栄光にあぐらをかいていたハリウッド映画は、地道にコンテンツを育成する環境をつくってこなかった。その結果が衰退です。韓国と真逆ですね。韓国は、政治が不安定でも、エンタメのコンテンツ育成には予算を割いて、エンタメ業界を進展させる人材育成や環境整備をコツコツとやってきました。その結果が、韓ドラブーム、韓国映画の世界的ヒット、BTSなどのアーティストの世界進出です。
アメリカのエンタメが世界をリードしていた時代は、とっくに終わっているし、エンタメ業界では「グレイトアメリカアゲイン」は不可能です。なぜなら、それを支える人材育成も環境整備もしてこなかったのですから。
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今でもハリウッドの財産として機能している伝説的女優
5月30日(金)より、東京をはじめ全国ロードショーが始まる『マリリンモンロー 私の愛し方』というアメリカ映画があります。
● 映画『マリリン・モンロー 私の愛しかた』オフィシャルサイト
これは、かつて世界を魅了したマリリン・モンローの人生を追うとともに、彼女を取り巻くアメリカ映画業界の闇として、「ひときわ衝撃的なのが、ハリウッドのスタジオの有力者との関係。性的な誘いを断ったマリリンが、その後、スタジオとの契約が更新されなくなるなど、目を疑うような「性の上納」文化が赤裸々に語られる」。
● 少年への性被害を見据えた映画が21年ぶりに今の日本で初公開される意味。あの大女優の“性の上納”真実も
日本でも旧ジャニーズ事務所の件や、フジテレビの不祥事で、こうしたタレントの「性の上納」といったことが明るみになってきていますが、どこの国でも、どの業界でもこうした闇はあるものです。この映画の製作は2022年、フランスで製作されました。マリリン・モンローは、今でもハリウッドの財産として機能しているわけです。
もちろん現役で頑張っているハリウッド俳優もいます。トム・クルーズは、『ミッション:インポッシブル』の新作の宣伝に東京に来たばかりです。都庁で都知事と握手をして、大勢の日本人を沸かせました。
● トム・クルーズ 都庁に降臨 大雨吹き飛ばした!ファン1000人に神対応3時間 小池知事からおもてなし
しかし、今はハリウッド映画のような巨額を投資したスペクタクル映画だけでなく、様々なジャンルの映画があります。時々、単館上映映画がネットで話題となって世界で上映されるというケースもあります。
映画産業というのは、投資しただけ見返りが得られるとは限りません。時には、投資してもしても結果が出ないときもあります。逆に、ろくに投資していないのに結果が出てしまうこともあります。それは偶然ではなく、その作品が生まれた背景にエンタメへの理解がある社会、優秀な人材、コンテンツを実現できる環境があるからこその結果です。
日本のアニメ映画が世界で一定の評価を得続けているのは、それまで日本人がマンガを愛し続け、日本社会がマンガやアニメに関わる人材育成や環境整備をしてきたからです。
ハリウッドは、かつてはそうした過程を経てきたのかもしれません。しかし、少なくとも近年は過去の栄光にあぐらをかいているだけではなかったでしょうか。
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もともと対立関係にあったはずのトランプとハリウッド
さらにいえば、最近のハリウッドは、「WOKE」「ポリコレ」がすぎるという点も、映画をつまらなくさせている一因かもしれません。やたらと多様性を尊重するばかりに、映画に黒人の役者を一定数入れるとか、原作の設定すらも変更するといったことも繰り返し行われてきました。
米ディズニーの『白雪姫』実写版は、まさにその典型のような映画で、主役はラテン系米国人で、白雪姫の名前の由来が「雪のように白い肌」という原作の設定は、「白い雪の日に生まれた」というものに改変されました。
原作では毒リンゴを食べた白雪姫が王子様のキスで目覚めるというものでしたが、実写版では王子様は出てこず、その代わりに山賊グループのリーダーが登場。自ら道を切り開く白雪姫に指導されながら、物語が展開していくというものだそうです。
● 実写『白雪姫』に酷評続出!ディズニーが貫く「ルッキズムへのNO」と“王子様の不在”による男児への影響とは?
こうした「目覚めた」改変に対して多くの酷評が集まり、結局、日本でも大型連休中にすでに打ち切られていたそうです。全世界でも不評の嵐で、165億円という巨額の赤字になりそうだとのこと。
● 165億円の赤字か 米ディズニー「白雪姫」実写版、大型連休中の日本でも上映打ち切り
もともとトランプ大統領とハリウッドは対立関係にあり、多くのハリウッドセレブが反トランプでした。そしてハリウッドのポリコレ体質も、トランプ大統領にとっては批判対象であったはずです。
トランプ大統領は、輸入映画に関税をかけると脅す前に、ハリウッドの体制を批判し、改善命令を出すのが先ではないでしょうか。
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※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2025年5月7日号の一部抜粋です。初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込660円)。
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