インターネット検索を中心に、急速に存在感を高めてきた給湯器交換業ビジネス。その市場は拡大する一方ですが、どのような構造に支えられてきたかという点について語られていないのが現状です。ジャーナリストの山岡俊介氏が主宰するメルマガ『アクセスジャーナル・メルマガ版』では今回、ネット集客を主とする同業界の急成長が抱える歪みを徹底追求。その上で、かような構造が現場や取引先に及ぼしている悪影響を白日の元に晒しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:大手給湯器交換業者の闇──インターネットで大手量販店のシェア奪い躍進も(序章)
「よく見る会社」だから安心安全?急成長する大手給湯器交換業者の闇
ガス・電気・石油などを燃料に水を温めて、キッチン・お風呂・洗面所など家中で温かいお湯を供給する住宅設備機器の給湯器──この従来の給湯器が壊れたり、古くなって、最新のものに交換するニーズは、後述するエコタイプに補助金が付くこともあり高い。
昔はこの給湯器交換、ガスや電力会社に加え、給湯器も販売する家電量販店が工事業者に頼むことが多かったが、近年、シェアを伸ばしているのが「給湯器駆けつけ隊」(ミズテック)、「キンライサー」、「正直屋」を始めとする給湯器交換業者だ。
家電量販店のリフォーム事業(給湯器はその一つ)は、決して衰退したわけではない。店舗を起点とした販売、来店客への説明、対面での契約というモデルは、現在も一定の信頼を保ち続けている。
しかし、その一方でここ数年で急速に拡大して来たのが、インターネットを主軸とする給湯器販売を伴なう給湯器交換業者だ。
検索広告や比較サイト、口コミ評価を通じて顧客を獲得し、問い合わせ対応から施工までを一気通貫で行うビジネスモデルは、家電量販店より素早く、かつ低価格ということで支持を集めているようだ。
この流れを後押しした要因の一つが、国の補助金制度である。
給湯器交換業者に限ったわけではないが、省エネ給湯器へ補助金が付くなら、故障しなくても、この機会に交換というわけだ。
しかし、このモデルには構造的な弱点もある。
検索広告やリスティング広告は、クリックされるたびに費用が発生する。
さらにコールセンターの人件費、広告代理店への支払い、システム維持費を含めると、顧客1件を獲得するためのコストは決して安くない。
私たちがインターネットで「給湯器 交換」「エコキュート 補助金」などと検索すると、画面の一番上に、いくつかの給湯器交換事業者名が目立つ形で表示される。
多くの人は「上に出てくる会社=信頼できる会社」、「たくさん見られている会社=人気がある会社」と無意識に感じることだろう。
しかし、この表示順位は評価や実力だけで決まっているわけではない。実際には、検索結果の上部に表示されるために、事業者は検索エンジン運営会社に対しクリックされるたびに広告費を支払っている。
つまり、目立つ位置に表示されるほど、その裏側では多額の広告費が発生しているのだ。
この仕組みを知らない利用者から見ると「よく見かける会社」、「有名そうな会社」に映るが、実態としては企業イメージをお金で買っている側面もあるのだ。
必ずしも一致しない「検索結果」と現場での実態や取引の健全性
もちろん、広告自体が悪いわけではない。しかし、広告費を大量に投じなければ集客できない構造は、そのコストをどこかで回収しなければ成り立たない。
結果として現場の工事費、協力会社への支払条件、価格や契約内容の調整といった部分に無理が生じやすくなる。
検索画面の「上に出ているかどうか」と、現場での実態や取引の健全性は必ずしも一致しないのだ。
利益を確保するために、どこかで帳尻を合わせる必要が生じる。
その結果、現場を担う施工業者や協力会社への負担が増すケースがすでに目立つようになって来ている。
工事単価の引き下げ、事後的な減額、理由の説明がない支払調整──表に出にくいこれらの調整は、現場側にとっては死活問題である。
こうした構造は給湯器交換業界だけの話ではない。
家電量販店においても今年のケースだけ見ても、ヨドバシカメラやビッグカメラがプライベートブランド製品の製造を委託する下請け業者に不当に代金を減額して公正取引委員会に下請法違反で勧告を受けたこともある。
下請代金支払遅延等防止法では、「下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、下請代金を減額してはならない」と明確に定められている。
こうした実態を踏まえ、現在では家電量販店に限らず、ネット集客を主軸とする給湯器交換業者に関しても、すでに取引の実態や契約運用の在り方について関係機関が関心を示し、事前的な情報収集やヒアリングが行われているとの見方も業界内では出始めている。
そして、すでに問題視されているケースの中には、契約関係が現に存在し、解約通知や合意解消がなされていない状態にもかかわらず、説明や協議を伴わないまま、事実上の取引停止や対応の先送りが行われている事例もある。
こうした対応は、判断を放置する「不作為」によって問題を先送りする構造を示している。役員や管理職が自らの立場を優先するあまり、調整や指導を行わない結果、現場や取引先に混乱が生じているという。
次回以降は、当事者への取材や関連資料の検証を通じて、その具体的な事例につき取り上げていくつもりだ。
(本記事は『アクセスジャーナル・メルマガ版』2026年1月5日号に掲載されています。ご興味をお持ちの方はぜひご登録ください。公益性、真実相当性があれば相手が大物政治家でもアウトローでも恐れず報じる『アクセスジャーナル』はあなたの支援を必要としています)
【『アクセスジャーナル・メルマガ版』2026年1月5日号 目次】
- <ミニ情報>「希代の詐欺師」松澤泰生が起訴に
- 大手給湯器交換業者の闇──インターネットで大手量販店のシェア奪い躍進も(序章)
- <ミニ情報>「関電3原発差し止め訴訟」、大津地裁認めず──裁判官の配置操作疑惑通り?
- <お詫びと訂正>佐高信氏から「私は田原を『みんなで大家さん』に紹介していない!」と抗議の電話──本紙YouTubeに関して
- <連載>福賀中の兜町アンダーワールド(103)「2025年最後の仕手株情報など」
※ <お知らせ>本紙YouTube版『深層追及』、今週は(1)「関電3原発差し止め訴訟」棄却(2)「2025年本紙YouTube版ベスト5」
大手マスコミをしのぐスクープ力!『アクセスジャーナル』のおすすめ記事
- いわき信用組合「280億円」巨額不正融資の闇。反社への10億円資金提供と“仲介役”の正体
- 「西友」買収のトライアルHDに新たな疑義。土壌汚染1800倍でも「安価な対策」を選択してしまった理由
- マンション大規模修繕の深い闇。ボッタクリ構造を主導する「業界のドン」工事費水増しの悪質な手口
- 相手を恫喝する音声記録も入手。あの「西友」買収で全国区の知名度を得た「トライアルHD」の信じがたい“コンプライアンス違反”
- 高市総裁の名も出る地元メガソーラー建設「贈収賄」疑惑、玉木代表は実弟の「投資詐欺」事件…日本は大丈夫か?
image by: Shutterstock.com