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「玉虫色」では虫にも失礼。維新“悲願”の中身なき「副首都法」採決をめぐる茶番劇の舞台裏

わずか2票という僅差で成立した「副首都法」。その裏では、与野党それぞれの思惑が複雑に交錯する駆け引きが繰り広げられていました。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では元全国紙社会部記者の新 恭さんが、採決当日の国会審議や付帯決議をめぐる舞台裏を詳細に検証。さらに同法案が抱える問題点を指摘するとともに、高市政権が維新との関係を巡り露呈させてしまった「政治手法」を疑問視しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:中身なき「副首都法」。採決をめぐる茶番劇の舞台裏

自民と維新に野党も「なあなあ」。日本伝統“なれ合い政治”で成立した「副首都法案」の恐ろしいほど空疎な内容

今月24日から26日にかけて読売新聞、日経新聞などが実施した世論調査で、高市内閣の支持率がガクンと下落した。世論を無視した皇室典範改正案を優先して成立させる一方で肝心の物価高対策については有効な手を打てていない。日々の生活に追われる庶民の心が離れていくのも道理だろう。

もう一つ忘れてならないのは、高市首相と維新との蜜月関係への国民の拒否感だ。広く国民に理解されているとは言い難い維新肝いりの「副首都法案」が成立したことは、政治を刷新するどころか、恩義や貸し借り、党利党略といった“古い政治”から脱却できない「高市政治」の実体を露呈してしまった。

その茶番劇は7月24日、朝から深夜までまる一日かけて国会で繰り広げられていた。同日夕方の日テレニュース。

事実上の会期末を迎えている国会。与党が24日の採決を目指していた「副首都法案」をめぐって、ほとんどの野党が猛反発。大紛糾となりました。

このニュースが流れた時点では、その日のうちに採決には至らず、さらなる会期延長が必要ではないかと見る声が官邸や与党内から上がっていた。

ところが、この法案を審議する「沖縄・北方問題及び地方に関する特別委員会」の横沢高徳委員長(立憲民主党)は夜になって採決に踏み切った。同特別委のメンバーは委員長を含め20人。うち与党は10人(自民8人、維新2人)、野党が9人(委員長をのぞく)だ。採決をすれば、10対9で可決する。

つまり、委員会を再開する前に、与野党間で、この法案を可決することがあらかじめ合意されていたわけだ。

前掲のニュースにもある通り、この日は朝から与野党が大揉めになっていたのは間違いない。野党が要求する「住民投票と議員選挙の同日選禁止」に与党が難色を示したからだ。

維新の吉村代表は「副首都法案」を成立させ、来春の統一地方選と「大阪都構想」の3度目の住民投票の同日実施をめざしている。

狙いは明白だ。選挙期間中は公選法の規制が網を張るため、事実上の維新候補批判となる「都構想反対」運動を封じ込める効果を持つ。おまけに維新は、府議選・市議選に立候補する公認候補者を、そのまま「都構想賛成」の強力なスピーカーとしてフル稼働させることができる。

そのための最大の武器となるのが「副首都」という名の国のお墨付きであり、「大阪都」を名乗れる法的根拠だ。

この法案の「附則」には「道府県」を「都」とする名称変更の特例が定められている。しかも、「公布から三か月を超えない期間内に施行する」と、来年の統一地方選に十分間に合うよう仕組まれているのだ。

そんな吉村代表の意図が明白だからこそ、野党はそれを阻止しようとする。政党エゴむき出しの維新は、今や野党の嫌われ者だ。

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まさに「茶番劇」の舞台となった7月24日夜の特別委員会

「同日選禁止」要求への与党側の態度がはっきりせず、休憩を宣して採決への流れを押しとどめていた横沢委員長。その停滞を最初に破ったのは、なんと立憲民主党だった。

午後1時半からの野党国対委員長会談。立憲から「副首都法案の採決に応じるべきだ」との見解が示されたのだ。このままでは65日の会期延長になり、見送られたはずの衆院定数削減法案が提出されたら、成立してしまう。そんな理由だった。

むろん、他の野党は納得しない。まず、副首都法案そのものが法律の体をなしていない。副首都をどのような基準で指定するのか、基本方針すらまだ決まっていないのだ。そして、前述の「同日選禁止」に対してもゼロ回答のままである。

その後。国民民主、参政、共産、れいわは変わらず採決に反対の姿勢を堅持したが、公明は「同日選を行わない旨の答弁がとれれば採決を了とする」と表明。立憲に続いて公明が「採決」へと傾いた。

こうした動きを受け、24日夜になって再開された特別委員会は、まさに“茶番劇”の舞台となった。野党の各委員が次々に副首都法案への反対意見を述べると、横沢委員長は淡々とした口調で「他にご意見もないようですから、討論は終結したものと認めます」と述べ、採決を行った。予定通り賛成10、反対9で可決したあとも表情は変わらない。「このさい、徳永さんから発言を求められておりますので、これを許します」。

徳永エリ議員(立憲)は立憲と公明が共同提案したという付帯決議案を朗読した。以下は、7項目のうち「同日選禁止」要求に関係するくだりだ。

「大都市地域における特別区の設置についての住民投票期間と関係市町村及び関係道府県の議会の議員の一般選挙並びに、長の選挙に係る選挙期間とが重複しないように最大限調整する」

どうやら、強制力のない付帯決議に、「重複しないよう最大限調整する」と表現を曖昧にした「同日選禁止」要求を盛り込むことで、舞台裏における与野党の話し合いがまとまったようである。

だが、この付帯決議、実は与党が提案してきたものだ。これなら野党側の顔を立て、維新も納得するだろうという、自民党お得意の玉虫色決着。与野党なれ合いの構図はいまも健在だ。

その後の参院本会議では、投票総数244のうち賛成123、反対121で、副首都法案が成立した。わずか2票差。チームみらい、無所属の一部が賛成にまわったことが決め手となった。

維新の吉村代表は府庁で記者団の取材に応じ、「付帯決議の意思は尊重したいが、同日選をめざすことに変わりはない」と述べた。これもシナリオ通りだろう。

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「大阪都構想を後押し」という目的が生んだ異形の法律

それにしてもこの法案、9,000字にも及ぶわりには、同じことばかり書き連ねていて、おそろしく中身が空疎だ。

大規模災害に備えて首都機能を補完する「副首都」を指定し、過度な一極集中を是正して多極分散型の経済成長をめざす。

目的はよくわかる。その達成のために「政府は首都機能の分散や災害時の事業継続、交通・通信網の多重化などを盛り込んだ基本方針を定める」とある。まだ、基本方針も決まっていないのだ。

その一方で、「副首都」が、政府から手厚い支援が受けられることだけは決定している。たとえば、国の機関の拠点整備や交通網の整備、規制緩和などだ。民間企業の移転を促進するために必要な税制上の措置も講じてくれる。

では、「副首都」になるには、どのような要件が求められるのか。条文上では「政令で定める」とされ、具体的な数値や詳細な基準の大部分は今後の政令委任事項となっているが、実のところ、その答えはこうだ。

「行政の代替機能、人口・経済の集積、適切な地方行政体制を備えていること」。つまり、大阪のような「大都市圏」であるということが前提条件だ。

しかし、副首都が大都市である必要があるのだろうか。AI、クラウド、高速通信、リモートワーク、さらには政府のデジタル化がこれだけ進展している現代。東京にある中央省庁や巨大オフィスを、そのままそっくり別の大都市へコピーするという昭和的な発想が通用するとは思えない。

重要データはクラウドに分散させ、各省庁の職員は自宅や全国の地方都市からリモートで意思決定や政策遂行できる仕組みを整えるほうが、災害時のリスク分散上、はるかに合理的なはずだ。

災害対策を謳う一方で、人口と経済が過度に集中した大都市をあえて副首都に指定しようとすること自体、リスク管理として自己矛盾を抱えているのではないか。「大阪都構想を後押しする」という目的が最初にあるから、そんな異形の法律ができてしまうのだ。

そのことを誰よりも理解しているはずの「チームみらい」が法案に賛成したことは、この政党の限界を感じさせた。与党との修正協議のなかで、副首都を「デジタル行政の先進地域」と位置づけさせたというのが賛成の主な理由だが、政権側にうまく利用されるだけの存在と国民の目には映るだろう。

危機感の共有を欠いたまま、数の論理と政局の損得だけで強行された今回の法案成立は、高市政権の足元がいかに脆いかを証明している。中身の空疎な「副首都」の看板の裏で進むのは、国家の危機管理ではなく、特定の政治的野望を叶えるための足固めにほかならない。

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image by: 日本維新の会 - Home | Facebook

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