自社の商品やサービスの魅力を、相手に正しく伝えられているでしょうか。専門分野に長く携わるほど、業界では当たり前の言葉が、一般の人には伝わりにくくなっていることがあります。今回のメルマガ『探偵の視点』では、著者で現役探偵の後藤啓佑さんが、サービスを分かりやすく伝える工夫や、既存のスキルを新たな事業につなげるための発想法について解説します。
温かい「教育」
最近、僕の中で「できること」がかなり増えてきました。
10年ほど前、探偵になって5~6年目ぐらいの頃であれば、「探偵って何ができるんですか?」と聞かれたら、答えはかなりシンプルでした。
浮気調査が8割。
あとは人探しや、盗聴器の発見調査など。
このあたりは、おそらく一般の方でも「何をやって、どんな結果が得られるのか」をイメージしやすいと思います。
浮気調査なら、旦那さんや奥さんを追いかけて、浮気の証拠を撮る。
盗聴器の発見調査なら、自宅や会社などに盗聴器が仕掛けられていないかを調べる。
サービス名を聞いただけで、7~8割ぐらいは内容を想像できますよね。
ところが最近、僕自身ができることが増えてきたことで、少し問題が出てきました。
新しくできるようになったことの中には、その領域に触れたことがない人からすると、「それって、具体的に何をしてくれるの?」となるものが多いのです。
特に企業が絡む調査は、その傾向が強いように思います。
例えば、ここ数年で僕の主力の一つになっている「競業避止に関する調査」。
長年会社に勤めていた人が退職し、同じ業種で仕事を始める。
そして、元の会社のお客さんを持っていってしまったり、競合するような動きをしたりする。
そういったトラブルが起きた際に、僕たちは事実関係や証拠を集めます。
ただ、目的は相手を叩きのめすことではありません。
集めた事実を材料にしながら、必要に応じて弁護士などとも連携し、最終的には両者にとって現実的な落とし所を探していく。
僕たちが提案しているのは、そういった調査です。
でも、「競業避止調査」という文字だけを見て、ここまでイメージできる人は、おそらくあまり多くないでしょう。
もう一つ、「取引先調査」というものがあります。
こちらは逆に、言葉から別のサービスを想像されることが多いです。
「取引先を調べる」と聞くと、おそらく多くの方が帝国データバンクなどの企業情報をイメージすると思います。
売上高や従業員数、財務状況など、いわゆる「数字」の部分ですね。
しかし、僕が提供する取引先調査は少し毛色が違います。
例えば、
代表者が危ない交友関係を持っていないか。
どのような人物や企業とつながっているのか。
夜はどのような遊び方をしているのか。
そういった、数字だけでは見えてこない「人間的な部分」まで調べていく。
そして判明した事実を取りまとめ、「この会社と付き合う上で、どこにリスクがありそうなのか」
あるいは逆に、「調べてみたら、ここはかなり安心材料になる」という部分までお伝えする。
同じ「取引先調査」という名前でも、一般的にイメージされるものとはかなり違いますよね。
この記事の著者・後藤啓佑さんのメルマガ
こういったことを考えているうちに、一つ気づいたことがあります。
同じ仕事に長く従事していると、自分たちが使っている「職業の言葉」を説明しなくなっていくんですよね。
自分の中では当たり前だからです。
でも、社会一般では前提になっていない言葉を、相手も知っている前提で話してしまう。
経営者視点で考えると、これは結構な機会損失だと思います。
本当はそのサービスを必要としている人が目の前にいるのに、「自分に関係のあるサービスだと分からなかった」という理由だけで、通り過ぎてしまう可能性がある。
そこで今回、僕は「イメージカード」というものを作りました。
自分の主力サービスをできるだけ噛み砕き、「こういう時に、こういうことができます」と一目でイメージしてもらうための、名刺と一緒に渡せるカードです。
このカードを作る過程で、「自分にとって当たり前の言葉と、一般社会でイメージされるものには、こんなにズレがあるんだ」ということに気づきました。
これは探偵に限らず、中小企業の経営者にはかなりおすすめの作業だと思います。
自分の商品やサービスを一度、専門用語を知らない人に向けて説明し直してみる。
それだけで、今まで気づかなかった「分かりにくさ」が結構見えてくるはずです。
そして、もう一つ。
僕は今、「探偵のスキル」を浮気調査以外の分野にも、アイデアや実績とともに押し出そうとしています。
尾行ができる。
張り込みができる。
聞き込みができる。
人物の関係性を調べられる。
現地へ行って、表からは見えない事実を確認できる。
これらを「探偵だから浮気調査に使う」と考えるのではなく、一度バラバラのスキルとして考えてみる。
すると、「この能力って、別の問題を解決するためにも使えるんじゃないか?」という発想が生まれてきます。
自分たちのサービスを分かりやすくすること。
そして、自分たちの持っているスキルを一度分解してみること。
この二つをやってみると、既存サービスの機会損失を減らすだけではなく、全く新しい事業を生み出すヒントまで見つかるかもしれません。
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