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【交渉術】「あえて沈黙する」債権回収のプロが駆使する極秘テクニック

恐怖の「沈黙応対術」

『~債権回収トラの巻~ 中小企業の売掛金・債権回収 』より

これまでも、金貸しの交渉術を書いてきた中で、金貸しがあえて沈黙する場面を何度かご紹介してきました。

これは、テクニックの一つだというだけで、特に詳しい説明もしてきませんでしたが、今回は、なぜ沈黙しているのかについて、より詳しく説明していきたいと思います。

いつものように、事例を出してお話しましょう。

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火の車Aさん:「あの、聞いてもらえてますか?」

金貸しBさん:「・・・(沈黙)・・・。」(ジロリ)

火の車Aさん:「(汗)あの、今後の返済についてご相談にきたのですが・・・。実は、当社の資金繰りがかなり悪化していまして、できれば返済額を減らして頂けないでしょうか・・。」

金貸しBさん:「・・・(沈黙)・・・。」

火の車Aさん:「あの、すみません、聞いて下さってますか?」

金貸しBさん:「・・・(沈黙)・・・。」

火の車Aさん:「そ、それで、返済額なんですが・・」

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このような状況では、火の車Aさんの額から冷汗が噴き出してくるのではないでしょうか。心の中では、

(金貸しBさんは話を聞いてくれているのだろうか? いや、返事をしてくれないところを見ると、怒っているのかもしれない・・。どうしよう・・。やはりまずかったか・・。)

などと、想像を始めるのです。

それでも途中で話をやめるわけにもいきません。しどろもどろになりながら説明を続けることになります。

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火の車Aさん:「で、できればしばらくの間、元金の支払いを0円にさせてもらい、利息だけお支払いするという形にさせて頂きたいのですが・・。あのう・・、それでなんとかお願いできないでしょうか?」

金貸しBさん:「・・・(沈黙)・・・。」

火の車Aさん:「あ、あのう、もし難しいようでしたら、出直してきますが・・・。」

金貸しBさん:「・・・(沈黙)・・・。」

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金貸しBさんは、相手を見つめながら黙って話を聞いているだけです。怒っているのか、納得しているのか、火の車Aさんには金貸しBさんの考えていることがわからず、不安に苛まれていきます。

しかし、当の金貸しBさんは、納得しようが、不満であろうが、相手の説明が終わるまではただ黙って聞いていようと決めているだけです。それには二つの理由があります。

「あえて沈黙」が効果的な2つの理由

一つは、相手が言わんとしていることを推し量るためです。できれば、手の内をすべて見た上で、手仕舞いにするか、ひと押しするか、モメるのかを決めた方が有利に交渉を進めることができます。

もう一つは、沈黙を貫くことによって、相手の気持ちを落ち着かなくしているのです。

普通、話し手が相手に対して、言っていることを理解しているのか、納得しているのか、賛成か反対か、疑問を持っているのか、などは、相づちや表情など、相手の反応を探りながら話を進めていきます。これが、沈黙という無反応状態だと話の方向性が定まらず、不安になってしまうのです。そして、人にもよりますが、これが圧力となり相手の焦りを誘うことになるのです。

こうして、火の車Bさんは見事に金貸しAさんの交渉術に乗せられて焦ってきました。焦れば焦るほど口数は多くなっていくものです。口数が多くなれば失言も出てきます。

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火の車Aさん:「あの〜(汗)、ですから、私が一番気にしているのは、差押えでして、これがなんとしても困るわけでして・・。」

金貸しBさん:「・・(沈黙)・・。」

火の車Aさん:「もし差押えでもされれば、取引先からの信用もなくなってにっちもさっちも行かなくなってしまいますから・・。」

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ここで一気に金貸しAさんの表情が険しくなります。失言であることに加えて、交渉のポイントになると鼻が利いたからです。

これまで沈黙で圧力を掛けていたおかげで、相手はボロを出しました。

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金貸しBさん:「取引先の信用? それは、取引先は大事だけれども、うちはどうでもいいということですか?」

火の車Aさん:「いえ、決してそういう意味ではないのですが・・(汗)」

金貸しBさん:「そちらが一方的に、当初の条件と違う返済条件にしたい訳ですよね? それであれば、こちらは契約上差押えできますから、然るべき手続きを取らせて頂きますよ!」

火の車Aさん:「そ、そんな・・。そこを何とかお願いしてるんじゃないですか。」

金貸しBさん:「今言ったとおりです。支払額を0円にするなんてとんでもない。もう話になりませんね。お引き取り下さい。」

火の車Aさん:「そ、それは、払えなければ差押えをするということですか・・・。」

金貸しBさん:「・・(沈黙)・・。」

火の車Aさん:「それは困ります! わかりました。でしたら、不動産を担保に入れるということで、なんとか待って頂けないでしょうか?」

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こうして、沈黙を武器にすることで、相手自ら急所が売掛金であることを白状してきました。

しかも、ここぞとばかりに畳みかけた結果、不動産を担保にできるという、返済条件を変更するに十分な安心材料まで付いてきた次第です。

相手の説明に対して意思表示をしない。返事はもちろん、うなずかず、一切反応しないこともまた、交渉術の一つなのです。

 

information:
『~債権回収トラの巻~ 中小企業の売掛金・債権回収』
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