MAG2 NEWS MENU

大炎上で火傷を負ったVAIO Phone、撤退しなければ命取りに

発表されるや否やたちまち大炎上を引き起こしたVAIO Phone。スマートフォンジャーナリストの石川温さんは、VAIOらしいデザイン要素がほとんどなかったのが一番の問題で、一刻も早くスマホ市場から撤退したほうが身のためだと言います。

VAIOは単に日本通信へ「ブランドの安売り」をしただけなのか

『石川温の「スマホ業界新聞」』 Vol.122より一部抜粋

大炎上案件となった「VAIO Phone」問題。こんなに大騒ぎとなる新製品発表も珍しいだろう。今週はアップル「Apple Watch」や「MacBook」も発表になっているのだが、それらがすっかり霞んでしまったほどだ。

今回のVAIO Phone、正直言って、計画が発表された当初は、さほど期待はされていなかった。

確かにVAIOがスマホに参入するというのは話題であったが、ソニーから分社したばかりで体制も整っておらず、できることは限られているというのは明らかだった。VAIOにとってみれば、まず立て直すべきは本業のPCであり、スマホは明らかに「片手間」であることは、誰が見てもはっきりしていた。

また、VAIOの発表会などでスマホのことを突っ込んでも明快な答えは出てこなかったし、日本通信が決算会見で箱をアピールするなど、どうみても、日本通信が主体となっていることもあり、「期待しても難しい」というのはわかっていた。

しかし、1月26日にPC Watchにて、『かつてVAIO Pで協業した日本通信とVAIO。両社にVAIOスマホの狙いを訊く』というインタビュー記事が掲載された。

そのなかで、スペックはさておき、デザインにおいては「VAIOらしさとしてこだわっているのはデザインになります。これならVAIOスマートフォンを名乗るのに充分満足できる製品に仕上がっています」(花里氏)という自信に満ちたコメントが掲載されたことから、一気にVAIO Phoneに対する期待値が上がったのであった。

今回の最大の問題は、VAIO PhoneにVAIOらしいデザイン要素がほとんどなかったということに尽きる。

会場で初めて触ったときに感じたのが「これ、2年前のNexus4とテイスト変わらないじゃん」ということだった。画面サイズの違いはあれど、背面や側面の処理は数年前のスマホとほとんど変わっていない。

「VAIO」というデザインで攻めるのであれば、出身元であるソニー「Xpreia」と互角に戦えるデザインに仕上がっている必要はあるだろう。日本通信の三田聖二社長も「アップルと対等に戦えるのはVAIOというブランドだけ」と力説するなら、iPhoneに匹敵するデザインであるべきだ。

会見終了後の囲みで、「スマホに書いてあるVAIOロゴをガムテープで貼って、5万1000円で売ったら、消費者は買ってくれるか」という質問に対して、日本通信の福田副社長は「それは買ってくれないと思う」と答えた。

VAIOが本当にデザインで自信があるなら、ロゴがなくても、ユーザーが「デザインが格好いい」と思って手を伸ばすのではないだろうか。それがロゴがなかったら、買ってはもらえないということは、デザインがイマイチということを認めているようなものだし、VAIOというブランドに日本通信もVAIO側も甘えているだけではないか。日本通信とVAIOは、「所詮、ユーザーにはデザインなど理解できるわけがない」と、ユーザーを馬鹿にしているのではないか。

今回の件は本当に、単なるVAIOブランドの安売りで終わってしまった感が強い。スマホを本業にしているソニーモバイルでさえ、デザインに苦労し、市場で存在感を出すのに四苦八苦しているにもかかわらず、スマホのことを理解できていないVAIOが片手間で参入したところで、火傷をするに決まっている。

そもそもスマホのデザインを語るなら、外観だけでなく、操作性にも手を入れるべきだ。ハードとソフトが融合してこそ「スマホのデザイン」ではないか。

スマホ市場は、ブランドを貸しただけで利益が得られるほど、簡単で甘い市場ではないはずだ。

製品発表後、VAIO関係者が「誤解がある」「こんなはずではなかった」「悔しさでいっぱい」と漏らすのを聞く限り、どうやら今回の案件はVAIO側が望んでいた結果ではなかった雰囲気がある。

VAIOが本気でスマホをやるというのであれば、日本通信に頼ることなく、自社で開発チームを立ち上げるべきだ。現状、「VAIO Phoneコールセンター」に電話をすると、日本通信につながるという。これでは、VAIOにはスマホのノウハウが蓄積はされない(情報は共有されるだろうが)。

今後、WindowsPhoneという可能性があるなか、VAIOがスマホに活路を見いだしたいのなら、サポート体制も含めて、一から出直して、自社でもっと取り組む必要があるだろう。

もし、その気がないのなら、一刻も早くスマホ市場から撤退したほうが身のためだ。スマホは辞めて、本業のPCに集中した方が良い。でなければ、今回のVAIO PhoneはVAIOにとって命取りになりかねない。

Source: b-mobile

 

『石川温の「スマホ業界新聞」』 Vol.122より一部抜粋

【Vol.122の目次】
1.VAIOと日本通信が「VAIO Phone」を正式に発表
━━2社の幹部がメディアからの素朴な疑問に答える
2.VAIOは単に日本通信へ「ブランドの安売り」をしただけなのか
━━命取りになりかねない「片手間でのスマホ参入」
3.MNO批判の日本通信が「ちっちゃなMNO」に変身
━━日本通信が自ら実証した「MNOビジネスモデルの優位性」
4.今週のリリース&ニュース
5.編集後記

 

著者/石川 温(ケータイ/スマートフォンジャーナリスト)

日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。
≪無料サンプルはこちら≫

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け