銀行の時間外手数料に108円払い続けるあなたに教えたい「おカネ」の歴史

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消費してないのに消費税とられるなんて……。一体「おカネ」って何なんでしょうか。『本当はヤバイ!韓国経済』でお馴染み、三橋貴明さんのメルマガではおカネは価値ではなく、単なる「債務と債権」だと伝えてます。

「おカネ」の正体

 

我々が日常的に使っている「おカネ」とは、何なのだろうか。現金紙幣は、単なる紙切れだ。銀行預金はデジタルデータで、硬貨は金属片に過ぎない。

それにも関わらず、我々は紙きれやデジタルデータの増減に一喜一憂し、時には犯罪すら犯す。

当たり前だが、一万円紙幣に「一万円の財」としての価値があるわけではない。福沢諭吉の肖像が描かれていない一万円札の「紙」としての価値は、数円といったところだろう。

銀行預金というデジタルデータは、世界中のコンピュータが破壊された場合、消滅することになる。

政府が発行する硬貨は、金属片に刻印が押されているものだ。ジョン・ロックの時代とは異なり、100円玉に「100円としての金属価値」があるわけではない。

実は、おカネとは、媒体の種類に限らず、単なる「債務と債権」の組み合わせなのである。

と書いても、よく分からないだろうから、まずは「おカネの誕生」について考えてみよう。

おカネとは、
「当初、物々交換で財やサービスを交換していた人類が、互いの需要のミスマッチを調整するために生み出した」
と言われたりするわけだが、実はこれは「俗説」である。何しろ人類の歴史上、「物々交換」の経済が存在した事実は、確認されていないのだ。

無論、太古の昔から、人類は「贈り物」や「分配」は頻繁に行っていた。ところが、社会構造に「物々交換」が含まれていたケースは皆無なのである。

物々交換の「不便」を解消するためではないとして、それではおカネはなぜ生まれたのか。

簡単だ。互いの債務と債権を、明確化させるためである。

読者の多くは、おカネとは「政府(または中央銀行)が発行するもの」と考えているかも知れない。現金紙幣や硬貨については、確かにその通りだ。

とはいえ、我々は「銀行振り込み」により、自分の債務を帳消しにできる。すなわち、
「モノやサービスの購入代金を、銀行預金というおカネの一部を渡すことで支払う」
ことが可能なのである。

あるいは、小口の買い物について考えてみよう。最も分かりやすいのが、デビッドカードだ。

読者が銀行預金を100万円、保有していたとする。すなわち、読者が銀行に対し100万円の債権を持ち、銀行が読者に対し100万円の債務を負っているわけである。

スーパーマーケットで、読者は1万円分の財を購入した。

すなわち、その時点で読者はスーパーマーケットに対し、1万円の債務を負ったことになる。逆に、スーパーマーケットは読者に対し、1万円の債権を保有した。

読者がデビッドカードで買い物の支払いをした場合、
「読者が銀行に持つ債権のうち、1万円分をスーパーマーケットに対し負った債務を消滅させるために振り替えた」
という話になるわけだ。あるいは、
「銀行が読者に持つ債務が、1万円分、スーパーマーケットに移った」
という話でもある。銀行にとって、債権者が(1万円分)読者からスーパーマーケットに変わってしまったわけである。

実は、おカネとは当初の段階から、個人間の債務、債権の記録として誕生した可能性が高いのだ。何しろ、古代メソポタミア文明の遺跡からは、債務・債権を意味する楔形文字が刻まれた粘土板が大量に発見されている。

また、メソポタミアのハンムラビ法典には、債務、債権に関する複数の記述が残されている。それにも関わらず、メソポタミアでは硬貨も紙幣も使われていなかった。

メソポタミアのA氏が、市場でB氏から麦を買った。すなわち、A氏は麦の代金分、B氏に債務を負ったことになる。粘土板に、その旨を示す楔形文字が刻まれる。

B氏は、別の市場でC氏から果物を買った。B氏は代金を、自分がC氏に債務を負うのではなく、A氏の債務(B氏にとっては債権)で支払う。A氏の債務の債権者は、B氏からC氏に変わる。

上記の通り、債務・債権が正確に記録され、かつ譲渡可能であるならば、別に紙幣や硬貨すら必要にはならないのだ。

おカネの正体とは、紙幣でも硬貨でも、デジタルデータですらなく、債務・債権の組み合わせなのである。すなわち「信用」だ。

 

『週刊三橋貴明 ~新世紀のビッグブラザーへ~』 Vol.302より一部抜粋

著者/三橋貴明
中小企業診断士。07年頃、「2ちゃんねる」上での韓国経済に対する分析、予測が反響を呼ぶ。『本当はヤバイ!韓国経済』(彩図社)など著書多数。メルマガでも小気味良い文体と正確な数値データに基づく的確な論理展開で日本経済を“コンサルティング”。
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