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【QAあり】アステナHD、営業利益前年比+65.2%と大幅増を達成 人的資本投資を通じた企業価値向上と組織強化へ

目次

瀬戸口智氏(以下、瀬戸口):代表取締役社長の瀬戸口です。2025年11月期第2四半期の決算についてご説明します。よろしくお願いします。

本日は、エグゼクティブサマリー、決算概況、業績予想・3ヵ年中期経営計画の3つに分けてお話しします。

エクゼクティブサマリー

エグゼクティブサマリーです。当第2四半期においては、前年同期比で増収増益となりました。

主な要因として、ファインケミカル事業の開発受託が好調であったこと、HBC・食品事業における輸入化粧品の販売が好調であったこと、さらに医薬事業において高収益性製品の販売が好調であったことが挙げられます。また、一部の販管費が下期に後ろ倒しとなったことも要因と考えています。

通期業績については、7月11日に公開したリリースのとおり、売上高は640億円、営業利益は31億円を予想しています。営業利益は上期の業績の伸長に伴い、前年同期比での増加が見込まれています。

トピックとしては、すでに開示していますが、HBC・食品事業においてイワキ株式会社がM&Aを実施しました。スライドに記載のとおり、池田物産グループは主に化粧品原料をグローバルに販売しているグループです。

これにより、HBC・食品事業の化粧品原料部門において、製品・商品・顧客の拡充、情報量の増加、海外展開の拡大を進め、プラットフォーマーとしての地位を一層強固にしていきたいと考えています。

2025年11月期第2四半期 決算概況

第2四半期の決算概況です。スライドの上半分は先ほどお話しした内容と重複していますので、経常利益、純利益、EBITDAをご確認ください。いずれも増加という結果になっています。

2025年11月期第2四半期 セグメント別業績

セグメント別の業績です。ファインケミカル事業、HBC・食品事業、医薬事業はそれぞれ増収増益となりました。売上高は、ファインケミカル事業とHBC・食品事業が業績に貢献しました。営業利益はファインケミカル事業が大幅に伸長し、寄与しています。

ファインケミカル事業

各セグメントの詳細についてご説明します。ファインケミカル事業は増収増益となりました。

業績のポイントとして、医薬品開発エコシステム部門では、MicroED関連の受注を中心に新規案件が増加したことや、中分子原薬プロセス開発案件の受注が順調に推移したことが挙げられます。

医薬品原料プラットフォーム部門では、高付加価値品目の販売が提案型販売によって堅調に推移しました。一方で、事業拡大に伴う増員やオフィス移転により、費用が増加しています。

医薬品CDMO部門では、外用剤製造における2シフト制の導入により工場稼働率が上昇しています。市場における新薬開発の活発化に伴い、高品質な原薬の需要が増加したことが業績を牽引しました。

トピックとしては、医薬品業界で世界唯一の受託ビジネスを開始しました。これは、株式会社リガクが提供するMicroED実験専用機「XtaLAB Synergy-ED」を活用した受託ビジネスです。

この機器は、原子レベルでの結晶構造分析が可能な高い分解能力を備えており、有機化合物などの詳細な分子構造を明らかにすることができます。お客さまの新薬開発を、既存サービスと併せて総合的にサポートしていきます。

HBC・食品事業

HBC・食品事業は増収増益となりました。

業績のポイントとして、食品原料部門では市場が緩やかに回復したものの、需要の減少分を補えず、低調な推移となりました。一方で、食品原料プラットフォーム「i-Platto(アイプラット)」の登録者数が増加したほか、高付加価値商品の販売増加により新規獲得額が増加しています。

化粧品原料部門では、原材料費や人件費などの原価上昇により、低調に推移しました。一方で、企画機能やインサイドセールス機能の強化により、新規獲得額が増加しています。

ライフサイエンス部門では、需要が落ち着いたことに加えて市場縮小の影響もあり、低調に推移しました。一方で、営業リソースの最適化や提案機能の強化により、新規顧客は増加しています。

化粧品製販部門においては、韓国コスメの「Torriden(トリデン)」と自社企画製品「Pureal(ピュレア)」の販売が、引き続き好調に推移しています。一方で、化粧品企画開発ソリューションサービスの開始に伴う先行投資費用の増加により、販管費が増加しました。

トピックとしては、すでにお伝えしたとおり、池田物産グループの株式を取得しました。これにより、製品ラインナップおよび販売チャネルの拡充を通じて、化粧品原料部門と食品原料部門の機能を強化し、プラットフォーマーとしての地位をさらに強固なものとしていきます。

医薬事業

医薬事業は増収増益を達成しました。

医薬品部門では、選定療養品目となった後発医薬品の販売が好調に推移しました。一方で、薬価改定により先発医薬品と同等以上の薬価となった後発医薬品の販売が低調に推移しました。また、原料不足などにより一部製品の製造停止が継続しています。

美容医療部門では、医療機関専売化粧品「NAVISION DR(ナビジョンDR)」シリーズおよび「illsera(イルセラ)」シリーズの販売が堅調に推移しました。

トピックとして、2024年12月より、3Aimsから販売を承継した製品を「illsera」ブランドとして展開しています。これは皮膚疾患で敏感になった肌のケアを目的とした商品で、「illsera」という名称には、「illskin therapy」つまり「病気の肌の癒し」という意味を込めています。

化学品事業

化学品事業は減収減益となりました。

表面処理薬品部門では、市況の回復が見られず、業績は横ばいで推移しました。電子部品向け薬品は、海外での新規顧客獲得に成功したため堅調に推移しています。一方で、プリント基板向け薬品は日本を中心に販売低迷が続いています。半導体関連向け薬品も、EV需要の減速を受けて販売が低調です。

このような状況のもと、高付加価値製品である「微細配線形成用薬品」「受動部品向けめっき薬品」「半導体電極形成用薬品」の販売促進に注力しています。

表面処理設備部門では、顧客の設備投資が一巡したことで販売が大幅に減少しました。一方で、修理・メンテナンス案件や部品販売に注力した結果、設備販売案件以外の販売は過去最高となりました。

トピックとして、クリーンルーム内のUBMめっき装置の改修を行いました。これは、半導体市場におけるパワー半導体12インチウエハの需要に対応するための先行投資です。これにより、ニッケル、パラジウム、金めっき処理が可能となり、従来の8インチウエハ向けメルプレートUBMプロセスを12インチウエハにも対応できるようにしました。

ソーシャルインパクト事業

ソーシャルインパクト事業は減収減益となりました。

ヘルスケア部門では、「農業×ヘルスケア」というコンセプトのもと、「NAIA(ナイア)」ブランドの刷新を行いました。これに伴う先行投資により利益が減少しています。また、PR活動にも投資を行い、ブランド認知度向上に注力しています。

地方創生部門では、現地決済型サービス「ふるさとNOW」の導入件数が増加し、売上高および営業利益が順調に推移しました。サービスが全国各地へ広がり、経済活性化など地域社会への貢献につながっています。

トピックとして、この4月に能登発のネイチャー×サイエンスコスメ「NAIA」をリニューアルしました。リニューアルに先立ち開催したプレス発表会をきっかけに、北陸地方を中心にテレビ特集、新聞、ラジオ、雑誌など複数のメディアで取り上げられています。

同時に、能登地方の炭や酒粕を取り入れた新製品を発売しました。機会がありましたら、ぜひお試しください。

能登地域における地域共創型の取り組み

当社のソーシャルインパクト事業は、地域に新たな仕事を生み出し「稼ぐ力」を育て、「人の循環」を創出することで、都市と地域をつないで地域の持続性を高める、私たち独自の地域共生モデルを目指しています。

まずは、自社で農業に取り組むことからスタートしました。現地に赴いて担い手不足や高齢化などの課題を実感し、地域の農家・自治体・企業と連携して、持続可能な協同体制を築いてきました。

この一連の動きとして、珠洲市の農家を集約して自治体と連携し、2025年4月に地域全体で「オーガニックビレッジ宣言」を打ち出しました。これは、農業単体では導入が困難な技術や知見を地域ぐるみで導入することで、地域の農産物を高付加価値化することを狙いとしています。当社は、そのまとめ役や販路拡大の役割を担っています。

また、農業だけでは人口減少やライフスタイルの変化に対応できず、収益が限られてしまいます。この出口を増やすために農業とヘルスケアを融合させたのが、先ほどの新ブランド「NAIA」です。地域資源と科学的知見を活用し、社会に新たな価値を届けるとともに、農業副産物の出口戦略拡大による「循環型もの作り」にも取り組んでいきます。

さらには、「NAIA」を通じて能登を知り、能登を訪れる人を増やすことも目指しています。このように、自然の循環、物の循環、人の循環を促していきます。

2025年11月期通期業績予想・3ヵ年中期経営計画

2025年11月期の通期業績予想と、2027年を最終年度とする3ヵ年の中期経営計画についてご説明します。

まずは通期業績予想についてです。2025年11月期の売上高は640億円を見込んでおり、前期比で約10パーセントの増収となる見通しです。営業利益は31億円、ROEは7.0パーセントと、いずれも従来の予想を上回る水準となっています。

背景には、主に2つの要因があります。1つ目は、ファインケミカル事業で付加価値の高い品目の受託製造および自社品製造が堅調に推移していることです。2つ目は、HBC・食品事業で輸入化粧品の販売が拡大していることです。

このような好調な動きは下期にも影響し、通期の営業利益を押し上げると考えています。

中期経営計画についてです。当社では、本年1月14日に公表した「中期経営計画のローリングに関するお知らせ」に基づき、2027年を最終年度とする3ヵ年の計画を策定しています。この計画では、2027年の目標として、売上高700億円、営業利益35億円、ROE8.8パーセントを掲げています。

主要事業の好調を背景に2025年11月期の業績予想を上方修正したことと、先ほどご説明した池田物産グループの株式取得により、この中期目標の達成可能性がより高まったと考えています。これは一過性のものではなく、特にホールディングス体制への移行後、各事業において構造改革が着実に進捗していることの表れだと認識しています。

ファインケミカル事業では、営業体制および受託体制の見直しを通じて業務の効率化を推進してきました。その結果、コスト構造の改善と収益性の向上を実現しています。

HBC・食品事業においては、幅広い販路を活用した販売機会の最大化と、池田物産グループの株式取得のような機動的なM&A戦略を通じて、事業基盤の強化を着実に進めています。

医薬事業および化学品事業では、ニッチ領域に特化した製品展開を通じて他社との差別化を図り、安定した事業構造を構築しています。

今後も持続的な発展を目指し、各事業の強みを最大限に活かしながら、取り組みを一層強化していきます。

中長期的な企業価値向上に向けて

今ご説明した中期経営計画の達成および中長期的な企業価値向上に対しては、「資本効率の向上」「事業成長戦略」「非財務施策」の3つの観点で推進していきます。これらの取り組みにより、収益性の向上と、みなさまに成長期待を強く持っていただくことで、持続的な企業価値の向上を目指していきます。

これらを着実に実行するために注力・投資すべきと考えているのが、人的資本です。当社は、多様な事業を支える「人」を最大の資本と位置づけています。また、創業以来受け継がれてきた「誠実・信用・貢献」の精神が、私たちの最大の強みです。

一方で、変化の激しい時代においては、自ら考え行動できる人材こそが競争力の源泉となります。柔軟性・革新性・自律性を備えた人材の育成に、組織的かつ計画的に取り組んでいます。

次世代リーダーを育成するトップマネジメントプログラムは、すでに2期目に入りました。また、グループワイドの研修体系の整理・充実化も進めています。

AIの活用については、リーダー以上を対象にリテラシー研修を実施しており、一般社員からエバンジェリストとして活躍するための専門研修の受講も進めています。

①資本効率向上

資本効率の向上についてです。先ほどお伝えしたとおり、当社が企業として持続的に成長するために最も重要な資源は「人」です。人を「コスト」ではなく「投資」として捉えています。人材の成長が促進されることで、より良いサービスや製品が生まれ、社会に新たな価値を提供することが可能になります。

また、収益を単なる「コストと利益の構造」として見るのではなく、スライドの図のように、仕入れなどの「外部支出」と、製品・サービスを通じて新たに生み出した「付加価値」に分類する視点を導入しています。

この付加価値部分が増加することで、人的資本へのさらなる投資が可能となります。同時に、株主のみなさまや地域社会を含むステークホルダーへの還元も拡大できる、良いサイクルを回していくことができます。

人的資本への投資については、金銭的な報酬に加え、ワークエンゲージメント、やりがいや成長実感といった無形の価値も含め、社員への支援強化を図ります。また、株式報酬制度や階層別育成体系を導入することで、モチベーションと成長を促進していきます。

これらの人的資本への投資を起点とし、付加価値の創出と分配を通じて、持続可能な成長の循環を実現します。そして、この循環をより大きく力強いものへと育てていくことを目指します。

当期の中間配当については、DOE1.5パーセントを下限とし、配当性向30パーセントを目安に実施する方針に基づき、当初予想どおり1株あたりの普通配当を9円とします。2025年11月期の期末配当も、1株あたり9円を予定しています。

②事業成長戦略

事業成長戦略についてご説明します。付加価値を継続的に創出するためには、事業活動を通じて安定的かつ十分な原資を生み出しながら、より高収益な事業へ挑戦していくことが不可欠です。

そのため、当社が掲げる3つの事業戦略を「安定」「価値創出」「高収益」の3つの戦略領域に再構成し、バランスの取れた企業価値の向上を目指しています。

安定収益基盤領域では、医薬品・食品原料のプラットフォーマーとしての機能を活かし、原料プラットフォームを構築します。また、ニッチトップ戦略に位置づけられる外皮用剤や表面処理薬品など、専門性の高い分野でも堅実な収益を確保していきます。これはまさに、グループ全体の経営を支える土台となるものです。

価値創出領域では、主にヘルスケア・ビューティケア分野において、原料取引から自社ブランド展開までを一貫して行う川下展開を進めています。「Torriden」「Pureal」「シルキーカバー」「NAVISION DR」「NAIA」など、多様なブランド展開を通じて豊富な顧客接点を築き、これらの接点を活かして幅広い顧客層にアプローチすることで、市場拡大を目指していきます。

また、地域資源を活かした製品開発や社会的価値の創出にも取り組んでおり、これらの事業全体が収益性と社会性を両立し、今後の企業価値向上に大きく貢献すると考えています。

高収益成長領域では、CDMO事業を軸に成長分野に注力しています。製造機能に加えて研究開発や設備投資を推進し、ROE向上を見据えた高収益ドライバーとして引き続き育成していきます。

このような3つの領域を戦略的に推進することで、各種計画の達成と持続的な発展を実現していきます。

③非財務施策

非財務施策とともに、当社が目指す未来についてご説明します。当社は2025年に、「存在意義を明確にし、社員の判断と行動をつなぐ軸」として「明日の『あたりまえ』を創り続ける」という新たなパーパスを策定しました。

パーパスの策定は、一貫性のある経営の意思決定やガバナンス強化の一環として位置づけています。組織としての方向性を明確にすることで、説明責任や透明性の向上にもつなげていきます。

多様な事業を展開する当社にとって、共通の価値観や判断基準を持つことは、経営の一貫性を保ち、中長期的な企業価値の向上に資すると考えています。今後このパーパスは、中期経営計画の遂行や人材戦略の方向付けなど、経営のさまざまな場面で意識して活用していきます。

また、IR活動の強化として、当社では「経営企画部 広報・IRグループ」という部署名でIR組織を設置しています。みなさまとの対話がより充実するよう努めていきます。情報発信機能としては「X」のアカウントを開設していますので、ぜひご覧いただければ幸いです。

7月11日にリリースした「統合報告書2025」では、パーパスに込めた思いや、付加価値の適正分配に関する考え方などを詳細にご紹介しています。ぜひご覧いただければと思います。

今後とも当社の歩みにご期待いただくとともに、変わらぬご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

質疑応答:下期の見通しについて

質問者:下期について、上期比と前年同期比のどちらも大幅増収ながら利益が極端に下がるという予想を立てられています。上期から考えると下期で基調変化が起きるのでしょうか?

瀬戸口:本来であれば上期を2倍した数字が理想であり当然と考えられますが、スライドにも記載しているとおり、使う予定の経費が後ろ倒しになっています。化学品事業における市況の読みとしては、やはりやや慎重にならざるを得ない部分があります。

そのため、全般的に下期は抑制された進捗になるだろうという予想を立てています。通期営業利益は31億円と予想していますが、ここに関しては最低ラインと考えていきたいと私は思っています。

質問者:ファインケミカル事業やHBC・食品事業は売上高および営業利益が非常に好調ですが、このあたりの基調が崩れるのを前提にはしていないということですか?

瀬戸口:おっしゃるとおりです。

質問者:医薬事業は第2四半期の営業利益を見るとピークアウトしたと感じますが、これが下がってくるという前提では動いていないのでしょうか?

瀬戸口:あまりそのようには考えていません。

質問者:化学品事業は低調が続いていますが、こちらはいかがでしょうか?

瀬戸口:プリント配線板については少し厳しいと見ており、他でカバーできる体制を構築する必要があるというのが率直な考えです。

質疑応答:下期見通しにおける池田物産グループの収益計上について

質問者:下期の見通しの前提について、池田物産グループののれん償却を含めた収益は予算に織り込んでいるのでしょうか?織り込まない前提で下期予算が作られているのか、どちらになりますか?

瀬戸口:9月1日をクロージング予定としていますので、取り込めるとしても9月から11月の3ヵ月分となります。そのぶれにあまり大きな意味はないため、9月1日にクロージングが無事完了するという前提で織り込んでいます。

ただし、のれん償却などもありますので、売上高には確実に影響するものの、営業利益にはあまり大きな影響はないと考えています。

質問者:おそらく営業利益にはあまり織り込んでいないのではないかと勝手に想像していますが、売上高は期初予想から10億円程度上げています。過去の実績から見ると、3ヵ月相当で10億円以上の上乗せになると考えています。この売上分を織り込んでいるのでしょうか?

瀬戸口:売上の部分は織り込んでいます。利益は織り込むのが難しい状況です。

質疑応答:ニッチ領域における競争優位性について

質問者:ニッチ領域で勝つにあたり、何を競争優位性にしようと考えていますか? おそらくコストや特許などさまざまなもので優位性が取れると思いますが、主に何をお考えになっているのかを教えてください。

瀬戸口:例えば、皮膚薬においては、剤形の多様性という技術的な得意分野をさらに強化します。化学品においては、微細な物質への対応力を磨き上げ、その技術を活用して新たな商品や半導体向け製品を開発・推進しています。

他の事業においても、ニッチな分野で競争力を発揮できる部分があれば、それらをさらに強化していく方針です。

質疑応答:株価の割安感について

質問者:今の業績予想からすると株価が若干割安だと思います。東証の上場基準において「流通株式時価総額100億円」に関する話があると思いますが、その点についてどのようにお考えですか?

瀬戸口:流通株式時価総額はすでに100億円を超えていますが、株価が割安だと評価していただけるのは非常にうれしく、「ぜひご購入いただきたい」と思っています。

我々も、IR活動を含めてコツコツと取り組んでいます。一時期は活動が停滞していた期間もありましたが、みなさまに注目していただける機会を増やし、対話の場を積極的に設けている状況です。

また、成長性についても、先ほどご指摘いただいたようにしっかりと堅実な基盤の上で成長できている点を、こうした場で積極的に伝えることに努めています。これにより安心して購入していただき、成長する企業であると判断していただけるよう、地道に取り組んでいます。

このような取り組みの中で、株主還元を含め、さまざまな対策について積極的に検討・実施していきます。特に奇抜な方法を取るわけではありませんが、着実に進めていく方針です。

質疑応答:化学品事業における貴金属価格高騰の影響について

質問者:化学品事業についてです。近年、金・銀・プラチナなど金属が高騰している中で、パラジウムが一時的に低い価格になっていると思いますが、これらの金属が今後高騰した場合、化学品事業の利益にはどの程度影響があると考えますか?

瀬戸口:当社では銅を多く使用しており、当該素材の価格変動は事業にかなり影響します。

藤原誠氏:化学品事業担当の藤原です。当社では貴金属に関して建値で販売しており、原料価格が上昇すれば売上も比例して上昇する仕組みになっています。反対に、価格が下落した場合も同様の影響があります。

質疑応答:M&A後の収益性向上と今後の課題について

質問者:昨年も大きな業績を上げていましたが、今年はそれを超える過去最高の業績を見通されています。数年前に大きく伸びた後、M&Aを実施して収益がさらに向上しました。セグメント的には若干のばらつきが見られるものの、全体として収益性が高まり、中期経営計画の達成が見込まれます。

今期の業績を踏まえ、セグメントにばらつきがある点は見受けられますが、M&Aを実施する前と比較して、どのあたりに改善が見られるかをご総括ください。また、どの部分がいまだ課題として残っており、それを克服すればさらに成長の余地が広がると考えられるかについて、現時点のお考えをお聞かせください。

瀬戸口:前期からですが、ファインケミカル事業が収益性を大きく改善させた要因として、付加価値の高いビジネスであることが挙げられます。今回もその効果が非常に大きかったと思っています。

もう1つは、HBC・食品事業において、韓国コスメや自社品など利益率の高い分野がしっかりと成長している点です。これにより、HBC・食品事業の営業利益率が大幅に向上し、結果的に31億円という営業利益予想を示すことができています。

したがって、例えば数年前の「不採算品再算定の薬価が上がったから儲かりました」のような短期的なものではなく、パーマネントとは言えないまでも、しっかりとした基盤が整い、トレンドとして良い方向に推移しています。この先も安定して堅調に推移するだろうと見込んでいます。

質問者:すでに手を打っていますが、これからもう少し手を打ってテコ入れをしていかなければならないという点、もしくは事業分野別の伸びしろという面ではどのように捉えていますか?

瀬戸口:ファインケミカル事業はまだこれからです。佐倉工場で案件を受託し、しっかりと利益を出していかなければならないビジネスだと考えています。また、医薬事業については、ジェネリックの市場環境を考えると、しばらくは停滞する状況が続くと思っています。

化学品事業については、市況の影響を受けやすい部分があります。そのため、悪い時は大きく落ち込まず、良い時に大きな利益を上げられるような改革を進めていく必要があると考えています。

質疑応答:池田物産グループをM&Aした理由について

質問者:池田物産グループの海外事業について言及がありましたが、池田物産グループが御社に原料を仕入れているということでしょうか? または、御社と取引があるということでしょうか?

さらに、池田物産グループが現在販売している部分で、海外ではどのような事業が展開されているのかについて教えてください。また、御社にとって池田物産グループのどの点が一番魅力的だったのでしょうか?

また、池田物産グループ自身がM&Aにより施策という点で「御社と組んだほうがいいぞ」となったのは、具体的にどの部分なのでしょうか?

門倉稔氏(以下、門倉):HBC・食品事業担当の門倉です。池田物産グループの得意分野についてですが、主に化粧品の原料が挙げられます。

いくつかの資料にも記載されていますが、池田物産グループは特に海外への化粧品原料の輸出入を得意としている会社です。当社内にも化粧品原料部門という部署がありますが、商品やお客さまの面で重複がほとんどない点が本件の大きな特徴だと思います。

それを踏まえ、池田物産グループが当社をパートナーとして選んでいただいたことが、最も大きな要素であると感じています。その結果、池田物産グループとともに事業を進めていくことになったと考えています。

質疑応答:ソーシャルインパクト事業の赤字解消と黒字化見通しについて

質問者:ソーシャルインパクト事業について、上期のセグメントでの赤字がやや増えています。

先行投資で数億円規模が必要になるとのことでしたが、下期あるいは来期・再来期と数年をかけた取り組みになると思います。ブランド構築や投資、もの作り、マーケティング活動などに関しては、短期的には売上よりもコストが先行し、しばらく赤字が続く見込みかと考えます。

この事業について、赤字の減少や将来的な黒字化のタイミングをどのように見ておけばよいのでしょうか?「まだ黒字になるのは少し先だ」「もうだいぶ変化が出てきている」などについて教えてください。

清水雅楽乃氏(以下、清水):ソーシャルインパクト事業担当の清水です。当社はDtoCビジネスにおいて、消費者に直接マーケティングを行い、製品を販売する事業を展開しています。

DtoCの傾向を見ると、成長している事例では3年で大きく成長を遂げています。一方で、それを達成できない場合は、多産多死の市場で退場していくプレイヤーも多いと見受けられます。したがって、期間的な区切りとして3年は重要な節目になると考えています。

また、その期間内に成果を出すためには一定の投資が必要であり、認知度を高めることが必須です。さらに、認知度に加えてブランドをしっかり構築することが、今期および来期の課題であり、勝負の時期であると考えています。

質疑応答:長期借入金の使用目的および今後の施策について

質問者:短期借入金が減少し、長期借入金が約2倍に増加していると思います。これの資金使途としてM&Aや設備投資が想定されているようですが、現時点での借入の主な目的と今後のファイナンス施策について教えてください。

上山勇氏:財務企画部長の上山です。まず、長期・短期借入金の増減についてですが、こちらは残高として第2四半期で160億円の着地となり、残高自体は増えています。

長期への振替は、過去に実施したいくつかのM&Aにおける短期借入部分の資金使途を考慮した結果であり、長期と短期のバランスが主な目的となります。​

質疑応答:ファインケミカル事業と医薬事業の好調要因について

質問者:ファインケミカル事業において「高付加価値品目の受託・製造が好調」とあります。また、医薬事業でも高収益性製品の販売が好調とあります。それぞれ、具体的にはどのようなものでしょうか? 今後の持続性についてはいかがでしょうか?

岩城慶太郎氏(以下、岩城):ファインケミカル事業担当の岩城です。まず、ファインケミカル事業についてですが、過去から高収益製品としての地位を築いていた製品が、今回非常に好調だったことがあります。新規に展開した製品として、スライドに記載している「MicroED」は非常にご好評をいただいています。

また当社グループには、製造販売会社のスペラネクサスと開発受託会社のスペラファーマ、JITSUBOがあります。この中で、スペラネクサスにおいてシナジー効果が発現しています。

スペラファーマを経由し、スペラネクサスの主要なお客さまである新薬メーカーからの案件がスペラネクサスで成果を上げており、非常に好調な状況となっています。

一方で、医薬事業については、高収益製品が牽引しました。特に「ルリコナゾール」が非常に好調な売れ行きとなっています。

ここ数年、医薬事業では薬価が上がり続けています。基本的には後発医薬品の薬価は下がるのが一般的ですが、特に外用剤に関しては、これまで薬価が下がりすぎていたため、見直しが行われました。その結果、いくつもプラスになった製品が出てきています。

例えば、後発品である当社製品の薬価が先発品の薬価を上回ってしまう事態も発生しました。

このような状況により、薬価の変動によって利益率が非常に大きく向上する製品も出てきています。

質疑応答:池田物産グループの2024年3月期の業績悪化要因とPMIへの考えについて

質問者:池田物産グループは2024年3月期の業績が悪化していますが、どのような理由と認識していますか? こちらは一過性でしょうか? また、経営陣の変更はないかなど、PMIについての考えを教えてください。

門倉:2024年3月期の業績悪化については、2022年および2023年、2024年の売上や利益などを開示していますが、2022年と2023年は特需があった関係で、2024年がやや悪く見えています。

一部取引先からの売上が非常に多く入ったタイミングがあり、このような数字の動きとなっています。反対に、2021年や2022年と比較すると、2024年まで増収・増益を達成できている状況です。

PMIについて、経営者の入れ替えに関しては現状大きな変更は予定していません。詳細はクロージングをお待ちいただければと思います。

質疑応答:下期における販管費の期ずれについて

質問者:下期において販管費の期ずれはどのくらいありますか?

瀬戸口:医薬事業の開発費用において上期には使えなかった部分があり、これが金額的に最も大きく、上期から2億円程度ずれている状況です。開発費用ですので、これをきちんと消化する必要があると認識しています。

質疑応答:期初予想と修正予想において変更された前提について

質問者:下期予想の前提について、各セグメントでどのように直したのでしょうか? 化学品事業は低調のため下方修正したと推測していますが、他のセグメントではどのような変化がありますか?

瀬戸口:基本的には、今日ご覧いただいた内容がそのままスライドになっています。当然ですが、各事業から今月・半期・通期の数字を提出してもらい、それらを確認しながら増減を調整しています。

本日ご報告した事業の中で好調だった事業については、下期にも強気の計画が反映されていますし、異なる部分はその数値に基づいた計画になっています。もちろんステイの会社もあるため、事業全体を細かく分けると増減はあるものの、全体としてはそのようなかたちでご理解いただければと思います。

質疑応答:注射剤の進捗について

質問者:注射剤製造設備の運用が遅れ減損したが、受注が思ったように進まなかったことが理由だと思います。前回も同じ状況を確認したと思いますが、半年が経過して、その後の状況はどのようになっているのでしょうか?

瀬戸口:昨年は注射剤製造設備が減損という結果になりました。ただ、減損したことで案件自体がなくなったというわけではなく、案件はキープしています。前回も岩城からご説明したとおり、現在はファーストペンギンとしてコツコツと営業活動を継続し、歩みを進めている状況です。

岩城:注射剤製造に関しては、現在私が認識している限りで6件の引き合いをいただいており、順次お話を進めているところです。

質疑応答:塩野義製薬による鳥居薬品買収の影響について

質問者:塩野義製薬が鳥居薬品を買収したことによる御社への影響をどのように考えていますか? 例えば、足元でそのような動きがあるのかどうか、これまで製造してきたものが塩野義製薬の判断によって取り上げられることがあるのか、あるいはすぐには起きないとしても、1年や2年といった中期的なスパンで変わる可能性があるのかどうか、それがある場合には具体的にどのような対策を考えているのかなどについて確認させてください。

岩城:塩野義製薬による鳥居薬品の医薬事業買収に係る製造委託について、先日、業界紙に非常に推測的な記事が掲載され、大変憤りを感じています。当社としても、Webサイトにおいてその記事内容を否定するリリースを出しました。

その記事には「佐倉工場の受託が終了し、塩野義製薬がすべて引き上げる予定だという議論がされている」という内容が書かれており、大変だと思い確認しましたが、両社においてそのような議論が行われている事実は一切ないとのことでした。

現在の業界全体を見回して考えると、佐倉工場が持つ規模感で外用剤の受託が可能で、かつラインに空きがある工場はありません。当社規模の塗り薬を受け入れる余地はないと思われます。他にも製造受託会社は多く存在しますが、あの規模で空きがある工場は1つもないのが現状です。

そうなると、新規投資をせざるを得ない状況です。ただ、新規投資を行う場合、現在は建設費などが高騰しているため、工場を建設して実際に稼働するまでには4年から5年程度かかると予想されます。

その期間と費用を考慮した上で「どちらが安く作れるか」を検討すると、佐倉工場での受注のほうがコストを抑える可能性が非常に高いとの見解を持っています。そのため、受注が他に移るリスクは非常に低いと考えています。

一方で、受託業である以上、受託品目がなくなる可能性は常に想定しておく必要があります。そのため、受注品目がなくなった際に備えて品目の準備を進めています。

質疑応答:震災後の能登の復興状況について

質問者:能登について、現在はどのような状況なのでしょうか? 1年半前の震災により、御社の事業展開にかなり影響があったと思いますが、御社自身の復興状況や能登全体の復興状況について教えてください。また、来年以降の復興計画についても現状をご説明いただければと思います。

清水:「復興」という大きなテーマに関しては、さまざまな視点や印象があるかと思いますが、あくまで我々の目線から見た事業の復興についてお答えします。我々の所有する社屋の中には全壊したものもありましたが、半壊したものはすべて復旧を完了し、通常の使用が可能な状態となっています。

社員については、地震前とまったく同じ状況に戻ることは難しいものの、地震期間中に意図的に拠点の機能を北陸や別のエリアに移したこともあり、現在では徐々に戻りつつあります。また、当社グループ全体の社員の往来に関しては地震前よりも活発になっており、その点においては地震前以上に活動が増えているといえます。

取引先の事業については、地震前と完全に同じ状況には至っていない部分もありますが、かなり回復しており、我々との取引も進展しています。

今後についてですが、地震そのものにかかわらず、このエリアでは雇用が少なく、地域内で稼ぐ力が弱いという根本的な社会課題があると認識しています。そのため、地域が持つ本来の力と当社の企業力を掛け合わせることで、稼ぐ力を強化し、人の往来を促進して、さまざまなかたちで新たな価値を生み出していきたいと考えています。

この内容はスライドにも記載されていますが、当事業をテコとして課題解決を進めていく所存です。

質疑応答:事業展開の未来について

質問者:御社のご説明内容は現代的だと感じる一方で、まだニッチな事業体を組み合わせて事業を展開しているという印象もあります。

そのような展開を進める中で、今後これを中心に1,000億円を超える規模に発展させ、さらにその先で現在とは異なるステージを示せる可能性があるのではないかと思います。現在の展開の中で、そのような動きが見えている点があれば、ぜひ教えていただきたいです。

業績の修正が入っているため、さらに上振れの余地がありそうだということは理解しましたが、今後の展開において、このようなことができる会社になりそうだという具体的なビジョンがあればお聞かせいただけますでしょうか。

瀬戸口:ファインケミカル事業をしっかり成長させることが重要です。売上高においては、2030年において約900億円を掲げています。その目標を踏まえつつ、さらなる収益拡大や効率性の向上に向けて、引き続き努力していかなければならないと考えています。

また、今回、プラットフォーマーとして池田物産グループをM&Aしましたので、そこでもしっかりと収益を稼ぎ、成長分野に戦略的に投資していくという考え方がベースとなります。

社内ではすでにポートフォリオに関連して市場の成長性や利益率を考慮しながら、「この事業についてはどうするんだ」「ここを伸ばしていこう」と議論しながら取り組みを進めています。特に効率性については、非常にこだわった運営を目指しています。

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