25年10月期3Q マネジメントメッセージ
中山博登氏(以下、中山):株式会社アシロ代表取締役の中山です。本日は弊社の2025年10月期第3四半期決算説明会をご覧いただき、誠にありがとうございます。
マネジメントメッセージはスライドに記載のとおりです。第3四半期は、派生メディア事業が広告運用でやや苦戦したのですが、第4四半期以降は十分に改善できる見込みです。また、その他の特筆すべき点としては、第3四半期に業績予想の上方修正をし、増配を見込んでいることが挙げられます。
業績予想の修正と4Q及び今後の見通し
中山:今回の予算の修正について、「修正の仕方がやや弱いのではないか」というお声をいただくことを想定し、第4四半期の現状をスライドに示しています。第4四半期で営業利益が少し弱くなった要因と思われる点を赤字で記載しています。
大きく4点あります。1点目は、リーガルメディアの高単価商品において、お客さまの予算調整による影響が若干出ていることが挙げられます。2点目は、保険事業です。こちらは特段赤字が膨らむことはないのですが、来期以降の成長加速のために先行投資的な部分を含めており、コストに少し影響が出ています。
3点目は、その他に関して、現在AIプロダクトの開発を進めています。来期以降は弊社独自のAIプロダクトや、弊社の事業効率を高めるようなAIの開発を止めるべきではないと感じており、引き続きAI投資を実行していきます。
4点目は、全社についてです。修正幅がご期待に沿えていない部分がある中でも、従業員は非常によくがんばってくれています。したがって、さまざまな福利厚生も含め、従業員還元として人件費が若干増加する見込みです。
この4点が、営業利益がみなさまの期待値に若干届いていない要因です。もちろん、高単価商材の予算が戻ってくる、保険事業の投資を抑える、AI関連サービスの開発投資を抑える、などにより予算調整が動く可能性もありますので、あえて今、第4四半期の状況を共有する必要はなかったかもしれません。
しかし、フェア・ディスクロージャー・ルールに則り、機関投資家だけではなく、広く投資家のみなさまに弊社の現状を知っていただくために、このタイミングで開示することが適切だと判断し、開示するに至りました。
25年10月期 3Q(25年5月-25年7月)決算サマリー
中山:2025年10月期第3四半期の決算サマリーはスライドのとおりです。
売上収益(事業別 四半期推移)
中山:これまではストック性の収益の比率が高かったため、利益がどんどん積み上がっていき、第2四半期の数字に対して基本的には第3四半期が上回っていました。
しかし、2025年10月期第2四半期は、ストック系収益は伸びつつも、フロー系収益の人材紹介や転職支援のHR事業、派生メディア事業の数字を非常に強く取り込んだ時期でした。したがって、非常に好調だった第2四半期と比べて成長しきれていない部分があり、第3四半期がやや減収となり、第3四半期が特段不調だったというわけではありません。
ただし、第3四半期に派生メディア事業は広告運用で苦戦しました。また、HR事業の転職支援について、内定は多く出ていたものの、第3四半期に入社が固まりませんでした。第2四半期に売上が発生する多くの入社が固まって、第3四半期での入社が少なかったことも影響しているかと思います。
いずれにしても、第3四半期においてアシロ全体として非常に苦戦したという印象ではないため、ご安心ください。
営業利益(四半期推移)
中山:利益に関しても、第2四半期は非常に調子が良く、反対に第3四半期は派生メディア事業がやや苦戦しました。加えて、HR事業の入金が第2四半期に固まったことにより、でこぼこしてしまいました。
逆に言えば、第2四半期が順調に進みすぎました。もしも、第2四半期のHR事業の売上が第3四半期に少し流れ込んでおり、派生メディア事業がそこまで広告で苦戦しなければ、同水準で来られたのではないかと思っています。第3四半期が特段に悪かったわけではないので、ご安心ください。
(参考)事業別営業利益(四半期推移)
中山:こちらのスライドでも推移がよくわかると思います。HR事業の3,000万円という営業利益が、通常は各四半期に分散しているのですが、第2四半期に固まっています。こちらがもう少し平たくなっていれば、それほどでこぼこしませんでした。
それよりも派生メディア事業の影響が強いと思います。第2四半期が比較的良い一方で、第3四半期はやや苦戦しました。
ご参考:新商品「bonobo」について
中山:第2四半期でお伝えしていた「bonobo(ボノボ)」を、ようやくリリースできました。
こちらは保険という商品のカテゴリ上、我々が提供する通常のサービスと違って、規制があったり免許制だったりして、インターネット企業らしいスピード感で進めきれていない部分はありますが、粛々と準備を進めています。
ご参考:新商品「bonobo」について
中山:将来的に2030年を目標に、契約保有件数を数万件規模で保有していきたいと考えています。こちらの保険事業にも、ぜひご期待ください。
連結四半期決算(PL)
中山:スライドは、損益計算書です。
連結四半期決算(BS/CF)
中山:スライドは、貸借対照表とキャッシュフロー計算書です。現時点で、大きな変化はありません。私からのご説明は以上です。
質疑応答:保険事業の販売状況と今後の課題について
荒井沙織氏(以下、荒井):「保険の販売状況の感触や、保険事業の今後の課題について教えてください」というご質問です。
中山:販売体制については、売るための準備に思ったよりも時間がかかっています。まず代理店にしっかり売ってもらおうという戦略を取っていたのですが、代理店に対し、保険を販売してもらうための研修や教育の実施に時間がかかっています。販売の感触などはこれからつかめてくるのではないかと思います。
今後の課題として、まずはマーケットの共有です。弊社がこれまで取り扱ってきた弁護士領域において、ターゲットとなる日本の弁護士事務所の数は1万数千所ほどです。しかし、今回用意している「bonobo」という保険は、大企業を含めた全企業がターゲットとなり、中小企業がメインとなります。したがって、少なく見積もっても100万社から150万社が弊社のターゲットとなり、このマーケットサイズを鑑みると、非常に大きなポテンシャルを持っていると考えられます。
一方で、今後、課題になり得ると感じているのは、新規性の高い弁護士保険であるという点です。この保険は、中小企業において後手後手に回りがちな法務領域について、弊社が用意したオプションを活用し、リスクを下げていくという特性を持っています。しかし、これまでに類似商品があまり多くないため、そのような保険の利便性や、リスクにどれくらい備えられるのかについて、しっかりとご理解いただくのに少し時間がかかると思います。
ご理解いただければ、非常に大きなポテンシャルの中で勝負できると思いますので、粘り強く、着実に販売を続けていきたい所存です。
質疑応答:バトンズとの業務提携について
荒井:「M&A業界への進出を示唆するものとして、バトンズとの業務提携がありました。今後の展望について教えてください」というご質問です。
中山:M&A業界は魅力的な業界であり、M&Aを含めた事業承継は日本の国家レベルで取り組むべき課題になるのではないかと感じています。
弊社の「ベンナビ」というサービスの中に「ベンナビ相続」というものがあります。こちらでは、個人からの相続のご相談が非常に多いのですが、企業からも相続を含めた事業承継のご相談をいただいています。このあたりについて、弊社としてどのようなソリューションを提供するかが重要になると思っています。
ただし、M&A業界は非常に伸びており、プレーヤーも続々と進出しているため、安易に参入して勝てる領域ではないと思っています。弊社は既存のアセットを活用しながら、勝ち筋を作っていき、十分に勝てる見込みがあれば、事業化していくことになるという順序になり、みなさまにご報告していくことになるのではないかと思っています。
現状、弊社のユーザーの中でそのようなユーザーが埋もれていることについては、協業することによってニーズに応えようと、提携を行っている段階です。まだ事業化までは進めていない状況です。
質疑応答:ロードマップについて
荒井:「売上高100億円、200億円に向けた具体的なロードマップを知りたいです」というご質問です。
中山:営業利益については、例えば保険が売れてくると売上は立ちますが、支払備金の問題で営業利益にどれくらいヒットしてくるかという問題もあります。保険の売れ方と支払備金の関係の整理がつかない限り、具体的なものを出しても蓋然性が伴いません。そのため、もう少し時間がかかってしまうと思います。
一方で、2030年に200億円の売上高を出すことに加えて、弊社の事業スタイルから考えて、営業利益率20パーセントは十分に守っていけると思っています。2030年の売上高200億円達成という目標に向けた事業進捗について特段不安はなく、十分に実現できると思っています。
今回も「第4四半期のネガティブな要因を出さなくてもいいのではないか」「ロードマップをざっくりと出してしまえばよいのではないか」というご意見があるかもしれません。しかし、弊社としては極力、個人投資家の方から機関投資家の方まで、広くみなさまに蓋然性を持っていただけるようなものを計画と呼びたいと思っています。そのため、蓋然性が確実になるまで、もう少しお待ちいただければと思います。
荒井:「そういったネガティブな情報を提供してくれるところも信頼できる」というご意見もいただいています。
質疑応答:今期の業績拡大の理由について
荒井:「今期における業績急拡大の理由を知りたいです」というご質問です。
中山:売上高が前期は40億円台後半で、今期は60億円台中盤から後半にかけて伸びており、この部分を指して「非常に伸びた」と思っていただけるならば、まだまだ規模が小さく、売上比率を伸ばしやすい状況にあったことが一番の要因だと思います。
営業利益は、単純に前期までは利益を出していなかったからです。出そうと思えば出せたのですが、前期までを投資期間と位置づけ、営業利益を出すことにあまり重きを置かず、それ以上の大きな価値として投資すべきだという判断をしていたため、営業利益が出ていませんでした。その「出そうと思えば出せる」部分をしっかり出してきたのが今期ということです。
質疑応答:来期の業績に対する不安について
荒井:「上方修正から逆算すると、第4四半期の売上高は15億円、営業利益は2億円の予想になります。前四半期比ではかなり厳しい内容ですが、現状の実力値はこの水準なのでしょうか? 来期は減収減益も想定せざるを得ない内容で、絶句しています」というご質問です。
中山:先にネガティブな要因をあえて出したのですが、反応がやや過剰かなと感じています。
2024年10月期第3四半期と今期2025年10月期第3四半期を比較すると伸びています。また、2024年10月期第4四半期を見ていただくと14億程度ということですので、YoYで見ると着実に伸びてきており、2025年10月期第4四半期も伸びたかたちで十分着地できると見込んでいます。したがって、現時点で「来期が減収減益になってしまうのではないか」と、そこまで過剰に心配する必要はまったくないと思っています。
また、既存事業についても、2025年10月期第3四半期にあった派生メディア事業の広告運用の効率性の改善を着実に進めているほか、大口顧客の予算調整も、弊社がしっかりと予算を確保できる動きをとり、予算の拡大を目指しています。加えて、保険の準備も進めています。これは今期にはない数字であり、第4四半期に乗ってくる予定です。
HR事業も、来期以降に130パーセント成長できるような仕込みを十分に進めています。加えて、AI関連のプロダクトや、AI以外のプロダクトもローンチする準備も行っています。
したがって、来期が今期より減収となる要因以上に、来期はスタート地点として十分高い位置から始まり、今期にはなかったプロダクトも今後提供開始されます。また、上期から下期にかけて少し下がってきたものに関しては、改善余地もしっかりと捉えています。そのため、そこまで悲観することはなく、私も元気ですので、ご安心いただければ幸いです。
質疑応答:中長期の売上成長イメージについて
荒井:「中長期の売上成長イメージの収益成長率は最低25パーセント、営業利益率は20パーセントを継続するということでしょうか?」というご質問です。
中山:もちろん継続します。2021年に上場してから「中山は安心して見ていられる」と思っていただけていたにもかかわらず、今回の決算でネガティブな情報を出したことで、「あの安心感のある中山はどこへ行ったんだ?」と不安に思われたのかもしれません。
四半期ごとに見た時に、これまで長年、積み上がるかたちのストックビジネスで成長してきたところ、フロービジネスの比率が上がってきており、その余波を受けて、予算をかけた割に利益が出ないことや、逆に予算に比べて売上目標を大きく上回ることなどが起こりやすくなってきています。
このような状況を見て不安な気持ちを抱かれるかもしれませんが、ここで保険のようなストック性の高いものを用意して、ストック比率は下げずに安定感を増すための動きも行っています。商品数やラインナップも増えているため、ご期待いただければ幸いです。
質疑応答:保険事業と既存事業のシナジーについて
荒井:「保険事業と既存事業のシナジーについて教えてください」というご質問です。
中山:今回販売している保険は、企業が将来、法律相談をしたい時や訴訟に巻き込まれた時の弁護士費用を保険でカバーするというものです。毎月数万円をお支払いいただき、いざという時に弊社が費用を負担するという保険となります。
弊社は、多大なお金と人的リソースを投じて法律相談を集めている会社でした。今回販売する保険が、例えば1万社から3万社に売れた場合、その会社が最初に法律相談をするのは株式会社アシロ少額短期保険となります。
民間や個人の法律相談に関しては、引き続き「Google」などのプラットフォームを活用して弁護士を探していただくことになると思いますが、この保険が売れれば売れるほど、企業からの法律相談はGAFAMなどのプラットフォームではなく、アシロに来る可能性が出てきます。
我々としては、無料で、むしろ保険金をお支払いいただきながら法律相談を集められるというのは非常に大きなメリットであり、間違いなくシナジーになると思っています。
荒井:「事業を行っていれば大口の顧客が離れることは当然あると思います。今回のこの件に関して気にされている方がたくさんいらっしゃるようですが、表面の数字しか見ていない投資家のことは気にせず、突っ走ってください」というご意見もいただいています。
質疑応答:大口顧客離れの要因について
荒井:「リーガルメディアで離れた大口顧客は広告費の調整とのことですが、一過性の調整でしょうか? 単に顧客離れとして認識しておくほうがよいでしょうか?」というご質問です。
中山:ここはかなり重要なポイントになりますが、一過性です。解約や顧客離れが起こったわけではなく、お客さまの予算の中で、内部事情も含めて「この時期に関しては広告予算を減らしたい」というご要望をいただいたということです。
当然ながら、逆のパターンとしてさらに増やす可能性もあった中で、「今回に関しては、いったん予算を縮小させて体制を立て直したい」というお話があり、予算が少し下がってしまったのが要因ですので、一過性であると捉えています。
質疑応答:アディーレ法律事務所事件の影響について
荒井:「アディーレ法律事務所の事件の影響は、アシロにはありましたか?」というご質問です。
中山:結論からお伝えすると、まったくありませんでした。この事件は我々にとっても非常にショッキングな出来事であり、アディーレ法律事務所の内部では体制のことなど、さまざまな影響があったかもしれません。
一方で、現在法律相談をされている方にとっては、自分の案件が処理されなくなるのではないかといった大きな懸念や問題が生じたと思いますが、あのような事件が起こっても法律事務所の業務が停止しない仕組みをしっかりとっておられることに、非常に感銘を受けました。弊社にもまったく影響が及ばずに済んでいます。
質疑応答:来期の投資方針について
荒井:「今期は益出しの期間かと思いますが、来期の投資方針についてあらためてお話しいただけないでしょうか?」というご質問です。
中山:特段大きな投資は見込んでいません。例えば、ある契約を取れば100万円になるケースがあったとします。ストック型では月3万円の契約で年間36万円になります。平均契約継続期間が3年の場合、「36×3」で108万円になることがほぼ見えています。
そして、この契約が5万円のコストで取れるとすると、短期的には月額3万円の収益に5万円のコストをかけることになるため、2万円の赤字に見えます。しかし、明らかに収益的に合理性がある場合は、圧倒的に契約を取るほうにコストをかけるべきだと判断して投資する可能性があります。そのような蓋然性の高い案件以外は、大きなコストをかけて投資をする予定はありません。
AIの開発関連に関しても、数億円のコストをかけて開発するよりも、小ロットや小規模なものでPDCAサイクルをぐるぐる回して開発していくことになると思います。したがって、特段大きな投資をする予定はまったくありません。
質疑応答:AIサービスの収益化について
荒井:「スライド3ページに『AIサービスローンチ予定』とありますが、これは収益化するのでしょうか?」というご質問です。
中山:大小ありながらも収益化はしていくことになると思います。決算発表資料上で、どの程度みなさまにご説明するレベルのものになるかは現時点ではわかりかねるのですが、収益化は十分可能だと思います。
もし売れなかったとしても、自社のマーケティング費用や社内の運用コストなどを十分に下げてくれるか、あるいは我々の成長に寄与するかということを開発する際に注視しています。この優先順位を間違えないように投資していければと思っています。
荒井:「前回はAIプロダクトの内容に触れていなかったため、今回はもう少し何か織り込まれているのではないかと思った」という声もいただいています。どのあたりで新たなものを具体的に打ち出すのでしょうか?
中山:アシロがよく取る作戦として、「ヒツジの皮をかぶったオオカミ作戦」があります。投資家の方が気づかないうちに、実は大きく収益化されているのです。
荒井:知らないうちに進んでいるわけですね。
中山:「全然知らないものを見ていたら、実はその内側にはオオカミが隠れていた」という戦略を取りがちです。みなさまに共有していないように見えながら、実は収益化やプロダクト化が進んでいて、気づいた頃には「こんなところまで来ていたのか」というかたちで知っていただくことになるのではないかと思っています。
「このようなプロダクトを、このように売って、これくらい売れている」という非常にわかりやすいストーリーもありますが、「表向きにはこれが動いているように見えて、実は裏側でこれが儲かっている、伸びている」ということをアシロはかなり行っています。
AIに関しても、「見えていない、動いていないようで、実は非常に動いていて、このような部分の収益化に大きく貢献している」というご説明の仕方になります。したがって、もう少しインパクトのある数字になれば、「実は、ここに付随していた」というかたちでご説明できると思います。
荒井:それでは、現在の事業の中のどこに、オオカミであるAIが潜んでいるのか、それも楽しみに見ていくとよいかもしれないですね。
質疑応答:第4四半期の営業利益と来期の予想について
荒井:「投資分を除いた第4四半期の営業利益の実力値はどの程度でしょうか? また、来期の営業利益の目線について、今期より『低い』『横ばい』『上回る』の3択ではどれになりますか?」というご質問です。
中山:現状でいえば、私自身は「上回る」の一択だと思っています。
質疑応答:前回説明からの変更点や課題について
荒井:「前回ご説明されてから、方向性を変更した部分や、新たに出てきた課題などがあれば教えてください」というご質問です。
中山:前回の発表から出ている課題は、スライド3ページに赤字で記載しているとおりです。例えば、フロービジネスとはいえ、大口顧客の予算をうまく調整し、もっとグリップしてハンドリングして、しっかりとずれないようにコントロールすることが課題だと思っています。また、第3四半期にあったように派生メディア事業部のマーケティング効率が悪くなっていることも課題です。
保険に関しては、一層加速して売っていくつもりでしたが、当初予定していたよりも販売が少し遅れていることが課題です。AIのプロダクトをもっと出せていないことも課題です。また、弊社が持っているアセットを活用すればさらに収益化できたところを、見過ごして収益化できていないこと、今持っている既存の事業以外を作り出せないことも課題です。
このように本当に多くの課題がある会社ですが、すべての課題は期待値だと思っています。まだ伸びる余地が十分にある会社なのだと捉えていただければと思います。
たくさんある課題を一つひとつ改善していきます。そして、アシロという会社は2025年度第3四半期の決算で終わるわけではありません。ここからが勝負ですので、まだまだ十分成長できる会社だと思っています。
我々が伸びるのは絶対に厳しいと断言されてもおかしくないケースは、我々がターゲットとしている世界中の人がほぼ全員その商品を持っていて、弊社がその商品以外に売るものを持っていない時です。これは確かに厳しいです。
しかし、実際はそれ以外の商品も持っており、その商品もまだまだ改善余地があり、むしろ持っている人はほとんどいない状況です。依然としてマーケットは存在しており、若干うまくいっていない部分はあったものの、アッパーサイドは十分多くあります。これからも、引き続きご期待いただければと思っています。
質疑応答:事業の進捗状況について
荒井:「事業は社長自身が想定した展開で順調に進んでいるという認識でしょうか? 思いどおりに展開したものと、そうではなかったものがあれば、事業ごとに教えてください」というご質問です。
中山:基本的に、会社設立以来、思いどおりにうまく展開したことはありません。基本的には「もっとできたのに」と感じながら、前期できなかったことに今期取り組み、今期ももっとできた点を反省して次に活かすという改善の繰り返しです。
ただし、行き当たる課題を予想して、課題回避のための事前準備の精度を上げることが重要です。例えばマーケティングの効率が悪くなることを事前に予測し、早めに手を打つことはできると思います。
また、大口の予算の動きがある場合、その予算が内部要因的にどうしても動かしようがないのであれば、違うところに予算を取りに行くなどの準備がもっとできたと思っています。それが実行できていなかったことが一番の課題だと思っています。しかし、そこも期待値として捉えていただければ幸いです。
質疑応答:顧客離れの波及について
荒井:大口顧客の解約に関連したご質問です。
中山:アシロのIR資料にも掲載していますが、投資家と私の間で意見を統一したいと思います。解約は出ていませんので、「解約」という言葉を使うのは一切禁止としてください。
荒井:わかりました。「今回の顧客離れの理由については先ほどご回答いただいていますが、他の顧客に波及する可能性はあるのでしょうか?」というご質問です。
中山:ありません。顧客事務所で一過性の予算の調整が動いただけです。事実以外のことが誤認され、懸念に至ってしまっては申し訳ないため、やや語気を強めてご説明していますが、弁解をしているわけではありません。
どちらかというと、より正確に物事を伝えたいという思いから、第4四半期の現状をご説明しています。顧客離れに関しては、一過性の予算調整が動いただけということです。解約が出たら「解約が出ています」と伝えますのでご安心ください。
荒井:すべて伝えていただけるということですね。
中山:悪いことも良いことも極力すべて伝えます。
質疑応答:採用について
荒井:「人材の採用は順調でしょうか? また、海外人材も採用しているのでしょうか?」というご質問です。
中山:弊社は、人材の居住地などに特にこだわりはありません。アシロという会社にカルチャーフィットし、一緒に成長できそうな人材に関しては、いつでもどこでも採用したいと考えています。
一方で、AIがどこまで何をしてくれるかわからない状況の中で、むやみやたらに人を採りすぎるのも投資としては危険ではないかと感じています。したがって、AIで代替できるかどうかを確認しながら、AIではどうしてもできないこと、もしくは、人がいたほうが数年単位で見て明らかに効率が良いという部分に関しては、採用を積極的に進めていきます。
それ以外の領域に関してはかなり慎重に人を採用しないと、過剰投資にもなりかねないため、慎重に進めているところです。
質疑応答:インフレの影響について
荒井:「インフレが進んでいますが、アシロの業績にはどのような影響がありますか?」というご質問です。
中山:アシロの業績に対しては、基本的には影響はないと思います。例えば、我々が扱っている法律相談について、インフレが起こっているために法律の相談料に転嫁されているという話はあまり聞いたことがありません。
一方、成果報酬の部分では、例えば弁護士の場合、得られた経済的利益の何パーセントかを報酬として受け取っているため、得られた経済的利益が増えていくと弁護士報酬が上がる可能性はあります。今のところインフレによってなにか大きな影響が出ているわけではありません。
しかし、どこかの時点で我々も価格引き上げの検討はしていくかもしれません。やはり一番価格転嫁されやすいのは、コンシューマー向け、一般ユーザー向けの消費財や商材の小売だと思います。我々は法人かつかなり特殊な領域であるため、最後のほうにインフレの影響が出るのではないかと思っています。
荒井:今の水準では影響はないということですね。
質疑応答:次期中期経営計画について
荒井:「アシロが評価されて嬉しい反面、PERが上昇し割安感が消えてきました。継続して株主を続けたいので、次期中計についてもお聞かせください」というご質問です。
中山:これは月曜日のPERを見て話しましょうか?
荒井:そうですね。引き続きホルダーではいらっしゃるかと思いますので、見守っていただきましょう。
中山:月曜日に話しましょう。
荒井:買い増しされるのでしょうね。
質疑応答:社長の原動力について
荒井:「プレッシャーのかかるお仕事をされていますが、中山社長がここまでがんばれる理由は何でしょうか?」というご質問です。
中山:非常に青臭いことを言わせていただくと、みなさまの笑顔がすべてです。おそらく全人類に言えることだと思いますが、これだけ世の中にさまざまなかたちでの推し活が普及しているのがその証左かと思います。
人間は、自分自身の利益や損得のためだけにがんばったり、生き続けたりすることはできないと思います。自分のがんばりによって喜んでくれる人、楽しんでくれる人がいるからこそがんばれるのです。そのような意味で、私個人としては、がんばった結果として良いことも悪いこともある中で、みなさまに少しでも「投資してよかった」と思っていただけるのが一番の励みになります。
また、アシロの理念が一番密接に関連していることですが、関わる人たちに幸せになっていただきたいと思っています。それが実現できたタイミングが、アシロの全社員にとって幸せなタイミングであるのは間違いないと思っています。みなさまのハッピーな笑顔が見られれば嬉しかったのですが、現状はふがいない結果になっていることは大変申し訳なく感じています。
荒井:未来において笑顔にしていただければと思います。
質疑応答:「解約」というワードについて
荒井:「先ほど『解約』というワードはNGというお話をされましたが、説明資料の12ページに『解約』と明記されています」というご意見です。
中山:そちらについては、ぜひ掲示板等でご意見をいただければと思います。IR担当者をかばうわけではないのですが、第3四半期から第4四半期にかけて、小口の割には大きな案件で解約が発生したため、おそらくそれに表記が引っ張られたのだと思います。
私の認識はまったく異なり、その案件に関しては予算の調整でした。担当者が「解約」という文言を使い、資料に残ってしまったことは、私の確認ミスです。ご心配をおかけしていますが、こちらは「調整」ですのでご安心ください。
荒井:これでみなさんに刻み込まれましたね。
中山:掲示板等にぜひご意見を書き込んでいただいて、叱咤激励していただければありがたく思います。
荒井:IR担当の方の励みになるようなお言葉をぜひ残してあげてください。
中山:どしどしお願いします。励みになっていくと思います。
荒井:みんなのためですね。
中山:みんなのため、ワン・フォー・オールでいきたいと思います。
荒井:この後、この文言は差し替えになるということでよろしいでしょうか?
中山:差し替えることになると思います。
質疑応答:株主優待について
荒井:「株主優待は検討されていますか? 『アシロパーカー』や『QUOカード』などが欲しいです」というご質問です。
中山:結論からお伝えすると、「QUOカード」を配布するような原資があれば、むしろ増配に回していきます。我々は上場直後から配当を出しており、株主還元に積極的に取り組んでいます。
一方で、企業価値向上が重要ですので、現状でこれ以上アセットを還元するよりも、少しため込んでいったほうが良い勝負ができるのではないかと思っています。逆に、PBRが1倍を割れるようなレベルでため込みすぎているのであれば、もっと積極的に株主還元していきたいというスタンスです。
パーカーが欲しいというご要望はよくいただくため、この声が本当に大きいのであれば、例えば総会にご参加いただいた株主さまには「アシロパーカー」をお土産として配布することを検討していきたいと思っています。ただし、「本当にそんなに着たいのだろうか?」という懸念はあります。
荒井:毎回「アシロパーカー」についてのご質問はいただいており、先ほどおっしゃっていた推し活には、やはりグッズも欠かせないのではないかと思います。そして、前回はなかった新しいTシャツをご紹介いただけますか?
中山:私が着ると囚人服のようなのですが、社名の「アシロ」と証券コードを入れたニューTシャツです。社員全員が同じものを着て仕事をすることは社内の一体感やグルーブ感を生み出し、これは我々が非常に重要視しているカルチャーの1つです。
今年もTシャツを4種類ほど作りました。アシロ社内では、積極的に新旧のバージョンが着用されています。皆、このTシャツが出るのを待ち続けており、夏までTシャツを買っていないという社員もいるくらいです。
荒井:絶妙な色合いでおしゃれです。ロゴがプリントではなく、刺しゅうになっているところに高級感がありますね。
中山:コストはそれほどかかっていません。
荒井:もしかすると今後、推し活グッズとしてみなさまのお手元にも届く日が来るかもしれません。
中山氏からのご挨拶
中山:不安材料を引きずって第4四半期を一緒に過ごすよりも、今回ある程度悪い材料を共有したことで、「こういう感じなんだな」という共通認識を持っていただけたのではないかと思います。
我々としては、9月から10月にかけて全社員が来期に向けての準備をしつつ、今期中にも取り返せるように懸命に動くしかないと思っています。悪い材料はすべて出たと捉えていただき、課題等もしっかり共有いたしますので、そこを直していくだけだと来期にご期待いただければと思います。引き続き、よろしくお願いします。