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神埜雄一氏(以下、神埜):株式会社セプテーニ・ホールディングス代表取締役グループ社長執行役員の神埜です。2025年12月期第3四半期の決算について、私よりご説明します。
本日のアジェンダはスライドのとおりです。初めに、2025年12月期第3四半期累計の連結決算概要についてお話しします。その後、第3四半期単体の連結決算について説明し、各セグメントの状況をお伝えします。最後に、今期の業績予想に対する第3四半期終了時点での進捗状況について説明します。
エグゼクティブサマリ
まず、今回の決算のエグゼクティブサマリを記載しています。今回のポイントは、2025年第3四半期累計実績と今期の通期見通しについての2点です。
1点目の第3四半期累計決算の概略としては、収益が前期比プラス6.7パーセントの増収、Non-GAAP営業利益が前期比プラス27パーセントの大幅な増益となりました。
好調だった第1四半期実績に加え、第2四半期および第3四半期では、ダイレクトビジネス事業の貢献や対売上高収益率の改善によりトップラインが伸長しました。また、コスト面でも人員配置の最適化や継続的な見直し等により筋肉質な事業基盤の構築が進み、大きく増益することができています。
さらに、前期に発生した子会社株式の一部譲渡に伴う株式売却関連益計上による一過性要因を除いた継続事業からの四半期利益も、前期比で増益となっています。
2点目の今期の通期見通しについてです。第3四半期終了時点での業績予想進捗率は、収益およびNon-GAAP営業利益ともに70パーセントを超えており、順調に進捗しているという手ごたえをもっています。今期も残り1ヶ月半ほどとなりましたが、引き続き通期業績予想の達成を目指していきます。
FY2025/3Q累計 (1-9月) ハイライト
2025年第3四半期累計期間の連結決算レビューです。まず、第3四半期累計の連結決算ハイライトです。
第3四半期累計実績として、収益は約223億円で前年同期比プラス6.7パーセント、Non-GAAP営業利益は28億6,000万円で前年同期比プラス27パーセントと、増収増益で終えることができました。
また、通期の業績予想に対する進捗状況としても、収益およびNon-GAAP営業利益ともに70パーセントを超えており、順調に推移していると実感しています。
増収増益の背景としては、短期課題であった対売上高収益率が前年同期比で1.1ポイント改善し、収益が売上高成長率を上回る成長を示したことが1つの大きな要因です。
今期に掲げている通期での増益転換に向けて、Non-GAAP営業利益は20パーセントを超える大幅な増益を実現しています。
FY2025/3Q累計 (1-9月) ハイライト(セグメント別)
第3四半期累計のセグメントごとの決算ハイライトです。マーケティング・コミュニケーション事業は、第2四半期以降、一部のお客さまの影響がありながらも、既存案件の拡大と新規案件獲得により増収となり、併せて販管費の抑制も行い、増益で着地しています。
ダイレクトビジネス事業は、オフライン広告案件を中心に拡大し、大幅な増収増益を果たしました。
データ・ソリューション事業は、前期に納品した一部案件の減少により、若干の減収減益での着地となっています。
FY2025/3Q累計 (1-9月) 連結P/L
第3四半期累計の連結損益計算書(P/L)です。先ほどハイライトで収益と営業利益についてご説明しましたので、ここでは営業利益以下の科目について説明します。
前期は、コミスマ株式会社の一部株式譲渡に伴う売却関連益により、非継続事業からの当期利益として約22億円を計上していました。このため、第3四半期累計の親会社の所有者に帰属する四半期利益は約25億円となり、前期比で4割程度の減益となっています。
しかし、コミスマ株式会社の株式売却等の一時的な要因を除いた継続事業からの四半期利益は、前期比プラス21.4パーセントと大幅に増加しています。
FY2025/3Q累計 (1-9月) 連結業績推移
第3四半期累計の連結業績推移です。対売上高収益率の改善に加え、事業ポートフォリオの見直しやコストコントロールにより販管費の調整を行い、Non-GAAP営業利益は前期比プラス27パーセントと大幅な増益となりました。
さらに、Non-GAAP営業利益率も前期比で2ポイントほど改善しています。
FY2025/3Q (7-9月) 連結P/L
第3四半期(7月から9月)の連結決算概要についてご説明します。第3四半期単体の連結P/Lを示しています。
収益性の改善により、対売上高収益率が1.1ポイント改善し、増収となりました。コスト効率化を徹底する組織体制の強化により、Non-GAAP営業利益は前期比プラス64.3パーセントの大幅増益となっています。
さらに、営業増益に加え、持分法投資利益も順調に増加し、親会社の所有者に帰属する四半期利益は前期比プラス138.4パーセントと大きく増加しました。
連結業績四半期推移(非継続事業組替え後)
セグメント別の連結業績の四半期推移を示しています。セグメント変更後の四半期ごとの実績については、2024年12月期のみ遡及修正を行っているため、2023年12月期の実績は連結として記載しています。
マーケティング・コミュニケーション事業およびダイレクトビジネス事業の貢献により、前期比で増収増益を達成し、Non-GAAP営業利益率も改善しました。
連結 税引前当期利益 四半期推移(非継続事業組替え後)
税引前当期利益までの分解と持分法投資損益の累計推移を示しています。株式会社電通デジタルを中心とした持分法投資利益は、第3四半期で約2億4,000万円と順調に増加しています。
電通グループとの業務提携の進捗
電通グループとの業務提携の進捗についてご説明します。電通グループとの協業によって生じた売上の総額を棒グラフで示しています。
濃い青色の部分は、四半期の取引額が1億円以上の大型のお客さまからの売上合計を示し、薄い青色の部分は四半期の取引額が1億円未満のお客さまからの売上合計として色分けしています。また、オレンジ色の折れ線グラフには、四半期のお取引額が1億円以上のお客さまの数を四半期ごとに記載しています。
この四半期において、大型顧客の新規獲得が進み、提携売上高は前期比22.9パーセント増と順調に拡大しています。
電通グループとの業務提携が開始されてから、この年末でちょうど7年を迎えますが、今年の電通提携売上高は過去最高を更新する勢いで現在進捗しています。
また、定量的な成果だけでなく、電通グループ各社との協業や連携が数多く進んでおり、今後のさらなる拡大に向けて手応えを感じています。
連結従業員数推移
連結従業員数の推移についてご説明します。海外拠点を中心に人員数は減少していますが、業務効率の改善などにより人員の需給バランスには問題なく推移しています。
本年度は、販売管理費の調整を含め、生産性の推移を追いながら中途採用をコントロールしています。来年度も引き続き、業績の進捗や生産性の状況を確認しつつ、人員採用数の増減をコントロールしていく方針です。
マーケティング・コミュニケーション事業 事業概況
セグメント別の事業概況についてご説明します。まず、マーケティング・コミュニケーション事業についてです。
この四半期では、前四半期から発生した一部のお客さまの影響がありつつも、既存案件の拡大や新規案件の獲得により増収を確保することができました。
また、Non-GAAP営業利益は11.4パーセント増と、2桁増益を達成しています。
マーケティング・コミュニケーション事業 四半期業績推移
マーケティング・コミュニケーション事業の四半期業績推移です。今期よりセグメントを変更したため、変更後のセグメント実績は直近7四半期分を記載しています。
この四半期では、対売上高収益率の改善に向けた取り組みや中途採用数のコントロールが功を奏し、Non-GAAP営業利益率は前期比で1.8ポイント改善しました。
マーケティング・コミュニケーション事業 増減内訳
マーケティング・コミュニケーション事業の前年同期比増減の内訳です。前回の第2四半期決算説明会で説明しましたように、一部の大口顧客とのお取引減少の影響が大きくありました。
しかし、この四半期では既存顧客からの増額や新規顧客の獲得、対売上高収益率の改善など、各種の取り組みによって、前期実績水準以上の収益にこの数ヶ月で回復することができました。
引き続き、既存顧客の拡大や新規顧客の獲得強化を推進していきます。
マーケティング・コミュニケーション事業 トピックス
今年2月に資本業務提携を発表した株式会社ビービットとの取り組みについて、新たなサービスの提供を開始しましたのでお知らせします。
当社の強みである広告運用力と、株式会社ビービットが強みとする顧客理解・UX改善のノウハウを掛け合わせ、集客からコンバージョン、顧客育成まで一気通貫で支援する体制を構築しています。
この度、本提携による具体的なソリューションの1つとして、特に重要となる集客からコンバージョンまでの顧客体験を一気通貫で最適化する「CROパッケージ」の提供を開始しました。
引き続き、株式会社ビービットとの連携をさらに強化し、本サービスを通じて企業のマーケティング活動における成果の最大化に貢献していきます。
ダイレクトビジネス事業 業績概況
ここからはダイレクトビジネス事業についてご説明します。まず、ダイレクトビジネス事業の業績概況です。
この四半期の収益は約15億7,000万円で、前期比19.5パーセント増と増収となりました。また、Non-GAAP営業利益は約3億6,000万円に達し、前期比56.7パーセント増の大幅な増益を達成しています。
セグメント全体としては増収増益で終えることができました。
ダイレクトビジネス事業 四半期業績推移
ダイレクトビジネス事業の四半期業績推移を示しています。制作原価が増加し始めた2024年度第3四半期を底に、Non-GAAP営業利益率は徐々に改善し、第2四半期に続いて20パーセント台まで回復しています。
ダイレクトビジネス事業 トピックス
ダイレクトビジネス事業に関するトピックスをご紹介します。11月4日に、株式会社サイバーレコードと企業版ふるさと納税支援事業の展開に向けて、合弁会社を設立しました。
ダイレクトビジネス事業をはじめとして、当社グループが有する広範な顧客基盤と、株式会社サイバーレコードが保有するECサイトや個人版ふるさと納税の運営代行で培われたノウハウ、さらには全国の自治体ネットワークを融合し、近年急速に拡大する企業版ふるさと納税市場で事業展開を進めます。これにより、企業の地域貢献と持続可能な地域社会の実現を支援していきます。
データ・ソリューション事業 業績概況
ここからはデータ・ソリューション事業についてご説明します。データ・ソリューション事業の業績概況です。
前期に納品した一部案件の終了に伴い、収益は約7億5,000万円で前期比マイナス10.5パーセントの減収となりました。Non-GAAP営業利益は約1億1,000万円で、前期比マイナス16.3パーセント、金額にして約2,000万円の減少となり、セグメント全体としては減収減益の結果となっています。
データ・ソリューション事業 四半期業績推移
データ・ソリューション事業の四半期業績推移を示しています。海外拠点を中心とした人員数の適正化と、競争力となるエンジニア人材獲得のバランスをとりながら、引き続き増収増益を目指していきます。
データ・ソリューション事業 トピックス
データ・ソリューション事業のトピックスについて説明します。今年5月に公表した株式会社MYUUUとの資本業務提携の進捗状況についてお話しします。
株式会社MYUUUとの業務提携においては、ノーコードでAIアプリケーションを開発できる生成AIプラットフォーム「Dify」を活用した生成AI研修サービスおよびワークフロー構築支援サービスの提供を開始しています。
今回は、株式会社ポーラ・オルビスホールディングスでの生成AI研修の実施事例をご紹介します。お客さまの課題に合わせてカスタマイズした実践型のオンライン研修を提供した結果、高く評価いただき、グループ会社さま向けの追加実施にもつながっています。
引き続き当社グループは、企業のニーズに応じた実践的な研修や複雑なワークフローの構築支援を通じて、企業の持続的なビジネス成長をサポートしていきます。
2025年12月期 通期業績予想(連結)
業績予想に対する進捗状況についてご説明します。2025年12月期の通期業績予想の再掲です。今期は収益303億円、Non-GAAP営業利益40億円、親会社の所有者に帰属する当期利益38億円を計画しています。
配当予想については、現在の配当方針に基づき、1株あたり配当金18円で据え置く予定です。
収益性と生産性の向上を実現するため、通期を通じてグループ一丸となり増収増益を目指していきます。
2025年12月期 通期業績予想(セグメント別・再掲)
セグメント別業績予想の再掲です。収益面では、マーケティング・コミュニケーション事業、ダイレクトビジネス事業、データ・ソリューション事業のいずれも増収を計画しています。
Non-GAAP営業利益については、コストコントロールを含め、3事業とも増益を計画し、それぞれの事業推進を実行していきたいと考えています。
業績予想に対する進捗状況(連結)
先ほど示した業績予想に対する第3四半期終了時点の進捗状況を記載しています。今期掲げている増収増益の実現に向け、第3四半期終了時点の業績予想に対する進捗率は約70パーセントと順調に推移しました。
今期も残り約1ヶ月半となりますが、業績予想の達成に向けてラストスパートをかけ、トップラインの積み上げ、収益性改善、生産性向上に引き続き注力し、この1年を良いかたちで締めくくりたいと考えています。
業績予想に対する進捗状況(セグメント別)
セグメント別の業績予想に対する進捗状況です。各セグメントとも計画に沿って順調に進捗しており、引き続き通期業績予想の達成を目指していきます。
以上が私からの2025年12月期第3四半期決算の説明です。今期掲げてきた増収の継続と営業増益転換によるV字回復の実現を目指して邁進していきます。
今後ともセプテーニグループへのご支援をどうぞよろしくお願いいたします。本日はお忙しいところ、ありがとうございました。
質疑応答:日本における広告媒体のトレンドと生成AIの影響について
質問者:業界の広告媒体の動向について、中長期的な変化の見方を教えてください。先日の各プラットフォーマーの決算発表などにおいて、グローバルではMeta社のSNS広告やAlphabet社の検索広告など、生成AIに強い広告媒体の媒体価値が高まったことが確認されました。
日本でも同様に、Meta社やAlphabet社など生成AIに強い広告媒体の媒体価値が向上し、出稿先としてこれら二大プラットフォーマーのシェアが拡大しつつあるのでしょうか? 生成AIの台頭に伴う日本でのオンライン広告の出稿先の媒体トレンドや変化、また、その変化が御社にとって追い風になるのかについて、お考えをご教示ください。
神埜:おっしゃるとおり、グローバルの傾向と日本の傾向は似ており、国内のインターネット広告市場においてもGoogle社やMeta社が展開するメディアのシェアは依然として高く、成長を続けています。
一方で、ここ数年では「TikTok」などの縦型動画メディアも成長しています。日本では「TVer」をはじめとする動画メディアも含めて、成長を続けています。規模としてはGoogle社やMeta社ほどではありませんが、着実にシェアを広げています。特に「TVer」は日本特有の傾向だと考えています。
質疑応答:生成AI活用による広告出稿シフトと日本の広告媒体構成比率の変化について
質問者:生成AIの活用に伴い、広告のレコメンド精度が高まることで、テレビなどの伝統的な広告媒体と比較した際のオンライン広告への広告出稿シフトについてうかがいます。つまり、伝統的な媒体からオンライン広告への出稿シフトはさらに加速していくのでしょうか? 日本の広告媒体の構成比率になんらかの変化の兆しがあれば、ご教示いただけますと幸いです。
神埜:2025年はまだ締まっていませんが、2024年を振り返ると、日本の広告市場全体では約7兆6,000億円となりました。
2024年のデータでは、4マスメディアの成長率が100パーセントから101パーセントと示されています。一方で、デジタル広告については約109パーセントの成長率で、近年は108パーセントから110パーセント程度のトレンドが続いています。そのため、おそらく今年度についても同様の傾向が見られるのではないかと思います。
ただし、今年度に関しては、1月からアメリカの政権交代や日本の新政権誕生、関税の問題など、さまざまな要因が影響し、特に1月から4月頃までの間、企業による広告出稿の見定めがかなりあったと思います。
直近の7月から9月にかけて、通常どおりの広告出稿に回復してきていると感じており、引き続き成長率の高いデジタル広告への出稿意欲が非常に高まっていることを実感しています。
具体的な顧客業種については、当社の顧客では人材サービスや金融、通信・情報サービス、エンタメ系は以前からデジタル広告の活用割合が高い分野ですが、ここにきて流通・小売業や食品メーカー、エネルギー関連企業によるデジタル広告活用への意欲が高まり、当社との取引も増加傾向にあることを確認しています。
従来、4マスメディアを中心にプロモーションや広告費を投資していた企業においても、広告市場全体の成長率が落ち着いてきている中で、デジタル広告への投資意欲が増加しているというのが、我々の所感です。
質疑応答:対売上高収益率向上の背景と今後の見通しについて
質問者:対売上高収益率についてです。これまでも対売上高収益率を上げるためにさまざまな取り組みを行ってきましたが、その効果がここ2四半期ほどで加速し、この四半期は特に大きく貢献したと思っています。取り組み自体の振り返りと、直近になって効果が大きく現れてきている背景について教えてください。それは外部環境の影響が大きいのか、社員のみなさまがこの取り組みに慣れてきた影響なのか、なにか変化があったのでしょうか?
あわせて、今後の見通しについて、この傾向が来期に向けてさらに加速するのかどうか、こちらについてもご回答をお願いします。
神埜:こちらについては、以前からお伝えしているとおり、当社の対売上高収益率を向上させるための大きな施策が複数あります。その中で特に重要なのは、まず広告効果を向上させること、またその成果をもって取引条件の改定についてお客さまに合意いただくことです。
広告効果の改善、というかたちでしっかりと成果を上げることで、グループ全体、特にマーケティング・コミュニケーション事業を中心に、お客さまとのやり取りにおいてメンバーが主導的に取り組む姿勢が強まってきました。この結果として、直近では対売上高収益率が20パーセントを超える状況を実現できており、これが1つの大きな要因であると考えます。
また、広告販売が中心となる案件では、10パーセントから20パーセント程度のマージン設定でさまざまなお客さまとお取引をしていますが、先ほど株式会社ビービットとの協業、ソリューション開発事例をご紹介しましたように、ソリューションのご提案を通常の広告販売と組み合わせることで、当社としての粗利率が高い取引の比率が上昇してきています。この1年から2年をかけて取り組んだ成果が着実に出始めているのではないかと思います。
現時点で収益率の改善および上昇の天井がきているような感覚はなく、引き続きこの改善、上昇を目指していけると考えており、これまでの取り組みによってようやく土台が整い、同時に成果が出てきたという所感です。
質疑応答:大型顧客獲得の背景と今後の持続性について
質問者:大型の新規顧客が確実に獲得できているという点について、その背景や、来期に向けてさらなるアップサイドが期待できるかどうか、この傾向の持続性について教えていただけますか?
神埜:大型顧客を獲得できた背景には、当社の広告運用の成果がしっかりと出ていることが挙げられます。また、先ほども少し触れましたように、デジタル広告へ出稿する企業・業種の多様化が進んできていることも要因の1つです。
4マスメディア広告に比べてデジタル広告の予算の比率がもともと高い業界もありますが、これまでそうでなかった業界やお客さまがデジタル出稿を増やされているという傾向があります。この点は、当社だけでなく電通グループ全体としても見受けられるもので、この傾向は今後も続くと考えています。
日本の総広告費は2024年で約7兆6,000億円ですが、今後5年をかけて8兆円前後まで伸びると予測されています。デジタル広告費は2024年に約3兆7,000億円(総広告費の50パーセント弱)でしたが、2030年に向けて55パーセントから65パーセントの間まで増加していくと見込まれており、デジタル広告へのシフトの傾向は今後も続いていくと考えています。
質疑応答:データ・ソリューション事業の減収要因と今後のトレンドについて
質問者:データ・ソリューション事業において、この四半期は前期納品の案件の反動ということで減収に転じていますが、この傾向は一過性のものなのか、また、データ・ソリューション事業の業績の前提となるトレンドについてなにか確認できるお話があればお願いします。
神埜:こちらは昨年から事業化を含めて準備を開始してきましたが、まだマーケティング・コミュニケーション事業やダイレクトビジネス事業ほどの規模には至っていません。そのため、一部のお客さまの開発案件が終了すると、提供していたエンジニアのリソース等が一時的にコストのみ計上されるかたちになってしまうことがあり、取引終了のタイミングや事業規模が大きくない点を踏まえると一時的なボラティリティは出る事業だと考えています。
ただし、今後の採用や、お客さまに対する我々の提案、そして当社サービスへの理解が、1年前に比べて徐々に進んできており、お客さまの予算獲得によりつながりやすい状況になってきていると実感しています。
したがって、この傾向が水平に続くのではなく、ここからしっかりと成長させるフェーズに入っていけると考えています。1年半以上の準備を経て、その体制が整いつつある状況です。
質疑応答:採用コントロールの方針について
質問者:採用コントロールの考え方について、今後は、収益性を見ながら中途採用を行うとのことですが、判断基準となっている収益性はどれくらいの水準を意識されているのか、いつ頃達成しそうかなどを教えてください。
神埜:今後の採用コントロールの方針についてのご質問ということで、回答します。今期は、先ほどから話しているトップラインの成長と収益率を重視し、一部お客さまの影響もありましたが、早々にしっかり回復できています。
一方で、これまでの数年でコストがやや膨らんできた部分もあります。そこで、事業ポートフォリオの見直しや現状の事業における生産性向上に取り組み、この1年は新卒採用以外はバランスを見ながら中途採用を調整してきました。
営業利益率が増加傾向にあることが、ようやく前四半期から今四半期にかけて見られるようになりました。この状況を踏まえて、成長を持続するための中途採用の開始については、来期以降を視野に議論中です。
具体的な数値については控えますが、グループ全体および各事業の1人当たりの営業利益を指標に、トップラインの成長を考慮しながら、採用ボリュームやタイミングをコントロールしやすい中途採用を中心に来期以降は計画中です。
一方で、新卒採用は当社にとって重要な採用機会であり、来期も引き続き新卒採用を行います。その上で、中途採用についてどの程度のボリュームでどのタイミングで実施するかを検討していきたいと思います。
質疑応答:海外事業における人員減少の背景と今後の展開について
質問者:海外事業についてうかがいます。今回、海外拠点の人員減少の背景と、海外事業は現状どのように位置づけており、今後どのような方向性で進めていくのか、中期経営計画期間でどのように利益を貢献させていくお考えかをお聞かせいただけますでしょうか?
神埜:まず、海外拠点の人員についてですが、これはデータ・ソリューション事業のオフショア開発拠点の人員調整を行ったものです。
生成AIの登場等により、比較的軽度な開発需要や保守・運用といった業務が一部代替可能な時代になってきています。そのため、コスト調整を目的として、開発拠点における人員の適正化を図ったというのが背景です。
一方で、海外拠点の売上については、マーケティング・コミュニケーション事業を中心に、海外のお客さまの日本国内向けプロモーションのご支援をこれまで行ってきており、この領域は引き続き堅調に成長しています。この点は国内におけるデジタルマーケティングプレイヤーの中でも、当社がもつ海外のお客さまとの関係性や実績というのは競争優位の1つになっている点です。
加えて、最近の為替動向もあり、日本企業による海外向け広告配信の需要が増加しています。この需要には、当社オーガニックでの取り組みや電通グループとの協業を通じて積極的に対応しており、伸びを見せていると感じています。そのため、これまで主にアウトイン案件(海外企業による日本向けプロモーション)を中心としていた海外広告事業に、インアウト案件(日本企業による海外向けプロモーション)も加えた展開を進めたいと考えています。
質問者:海外収益はこれまであまり大きく増減せず推移してきたと思いますが、今後は拡大局面に入っていると理解してよろしいでしょうか?
神埜:おっしゃるとおりです。アウトイン案件もそうですが、インアウト案件はより強く伸ばしていきたいと考えています。また、現在の市場環境もそのような状況になりつつあると感じていますので、ここに力を入れて取り組んでいきたいと考えています。
質疑応答:マーケティング・コミュニケーション事業における対売上高収益率について
質問者:マーケティング・コミュニケーション事業における対売上高収益率の改善要因としてご説明いただいた取引条件の見直しについて、その浸透度は全顧客のうちどの程度なのか、また業界ごとに偏りがあるのかを教えてください。
また、この条件見直しに同意いただいた顧客やソリューション販売ができている顧客の対売上高収益率は、マーケティング・コミュニケーション事業全体の対売上高収益率である17パーセント程度に対してどの程度上の水準なのか、今後のアップサイドを考える上でのヒントを教えていただけますでしょうか?
清水雄介氏:清水からご回答します。ご質問に関して、どの程度の取引条件の改善カバレッジがあるかについて、この場で具体的なパーセンテージをお伝えすることは差し控えますが、イメージとしては一律に引き上げるのではなく、深くお取引関係のあるクライアントを中心に徐々に改善するアプローチを取っています。そのため、全体の中で2桁台前半のパーセンテージに相当する顧客数から浸透しているというイメージをもっていただければと思います。
また、事業全体の対売上高収益率17パーセントと比較した場合、クライアントごとに業種や置かれている状況、さらに年間のマーケティング投資予算などばらつきがあるため、一概に上下を議論することは難しいです。しかし、それぞれのクライアントとの取引条件を徐々に現実的な水準に調整し、相互の共通認識を持ちながら丁寧に交渉を進めてきた結果であると考えています。
この取り組みが来期以降の基盤の1つとなります。先ほど神埜が述べたように、ここが上限ではありませんので、引き続き足元の水準からさらなる改善を目指し、グループ全体としての収益率改善につなげられることがスコープに入っている段階であるとご認識いただけると幸いです。
質疑応答:マーケティング・コミュニケーション事業の収益について
質問者:資料の18ページ目にあるマーケティング・コミュニケーション事業の収益に関する階段グラフについてです。既存顧客との取引額がマイナス6億円となっているのは、4月以降に発生した1社のみによるものであり、他の顧客からの影響は発生していないという理解でよいでしょうか?
また、御社がこれを補うための取り組みとして挙げている新規顧客による増収についてですが、次の第4四半期や来期の第1四半期にかけて、この特定顧客によるマイナス影響を新規顧客の増収だけでカバーできる、売上高ベースでポジティブに打ち返せる期待値を持てるのかといった点について、現時点での手応えをお伝えします。
神埜:まず、スライドの「既存顧客との取引額の増減合計」の箇所についてですが、これは1社のみではなく、複数社のお客さまで減額になったケースと既存のお客さまで増額となったケースを足し上げてマイナス6億円となっています。
今四半期については、4月以降の一部のお客さまの影響により、既存のお客さまとの取引額の増減をネットしてマイナス6億円となりましたが、次の4月でこの影響は一巡するため、この部分は徐々にプラスに転換できると考えています。したがって、この資料は、一部のお客さまのみを反映したものではありません。
新規のお客さまについてですが、先ほどもお伝えしたとおり、デジタル広告の活用は非常に進んでおり、当社としてもオーガニックで単独提案を行い受注したり、広告業界におけるいわゆるコンペの数が大幅に増加してきており、その勝率も一昨年や昨年と比べて向上しています。
この新規顧客獲得については、次の第4四半期や来期の第1四半期、さらにはそれ以降も引き続き伸ばしていく方向で力強く進めていきます。
質問者:マイナス6億円の部分というのは特定の顧客による影響が大半であり、7月以降に新たな大型クライアントのマイナス影響が出たというわけではない、という理解でよろしいでしょうか?
神埜:おっしゃるとおりです。この中には細かい減少要因も含まれますが、マイナスの主な要因としては第2四半期の決算発表でお話しした一部のお客さまの影響が、この四半期にも引き続き残っていることによるものです。
質疑応答:来期業績の考え方について
質問者:来期業績等についての考え方を簡単にコメントいただければと思います。第1四半期までは一部顧客の影響が残るかと思いますが、それが一巡したあとは、トップライン成長を再加速させることを目指すのか、それとも収益性のさらなる改善に力を入れる期とするのでしょうか? また、環境が変化した中で投資を重視する年になるのでしょうか? 御社にとって来年度をどう位置付けるのか、重要なテーマについて可能な範囲でコメントをお願いします。
神埜:まず、今期については、前期に対して増収増益を達成しようという目標のもと進めてきました。いろいろな影響はありましたが、現状では順調に進捗していると感じています。
来期以降についても、引き続きトップラインの成長を目指していきます。足元では一部顧客からの影響がありますが、来期以降も引き続きトップラインの成長と収益率の改善に力を入れて取り組みたいと考えています。
また、以前からお話ししているキャピタル・アロケーションにおいて投資枠をしっかりと確保しています。これに基づき、M&Aや事業連携といった取り組みを相手方と協議しながら、インオーガニックな成長もしっかりと進めていきたいと考えています。
質疑応答:生成AI活用拡大による収益性改善について
質問者:生成AIの活用拡大に伴う御社への影響についておうかがいします。例えば生成AIの御社業務への活用拡大により業務効率化が進む場合、人材採用の抑制など、販管費のさらなるコントロールによる収益性改善の余地はどの程度あると考えていますでしょうか? 生成AIの御社業務における活用余地についてのご説明やコメントをいただけると幸いです。
神埜:当社における生成AIの活用についてですが、これは多くの企業さまと同様に、定型業務やワークフロー、提案書作成、さらには通常の社内のやり取りなど、幅広い分野で代替が進んでいます。このような生成AIの導入・活用により、当社の営業利益率が向上している要因の1つとなっています。
現在、各事業およびグループ全体で生成AIの活用を推進しており、その効果も徐々に顕在化しています。ただし、生成AIを導入したからといって直ちに人員整理を行うわけではありません。当社では退職率が一定水準で推移しているため、退職者をそのまま採用で補完するのではなく、生成AIを活用することで1人当たりの生産性を向上させる取り組みを進めています。
特に、この半年から1年で生成AI活用の基盤が整ったことにより、今後はさらに生成AIの活用を推進することで、営業利益の1人当たり生産性向上を図るこの取り組みを継続していきたいと考えています。
質疑応答:新業種の取り扱い増加の背景について
質問者:先ほどご紹介いただいた新しい業種の取り扱いが増えてきているというお話についてです。私の印象では、これまではそこまではっきりとそのようなお話はなかったように思いますが、今日は何度か言及があったように感じました。このようなお話ができるようになった背景には、この四半期でなにか変化があったのでしょうか?
それともこれまでのトレンドの延長線で規模感が出てきたというイメージなのか、このあたりについて教えていただけますでしょうか?
神埜:どちらかというと、この四半期で急に変化が出てきたわけではありません。当社においてはオーガニックでの取り組みに加えて、電通グループとの協業を推進しています。この協業も通じて、より多様な業種のお客さまが、ここ1年から1年半にかけて徐々に増えてきている印象があります。
また、これはおそらく業界全体の傾向でもあり、どこか特定の代理店や業種だけが増えているのではなく、産業全体としてデジタル広告への出稿意欲が高まっているという点が大きなポイントだと考えています。
質疑応答:その他事業の利益上昇の背景と今後の見通しについて
質問者:この7月期から9月期におけるその他事業のNon-GAAP営業利益が3,300万円となっていますが、第1四半期や第2四半期がほぼゼロであったことを踏まえると、明らかに利益が拡大しています。この背景についてご説明いただけますでしょうか? また、このトレンドが今後も継続する可能性についても、ご解説いただければと思います。
神埜:こちらはその他事業ということで、現在事業化の準備を進めており、その中心にはHR関連のサービスを提供する子会社群があります。足元では若干利益が出る状況になってきていますが、まだ規模を拡大するレベルには至っていません。
引き続き準備を進めながら、今後規模を拡大し成長を実現できる体制を整えていきたいと考えています。