高市政権の積極財政や日銀の金利据え置きをめぐって、SNSでは賛否両論が渦巻いている。だが、政策の是非を熱く語っても資産は1円も増えない。投資家がやるべきことは、政策を批評することではなく、その政策でどこにカネが動くのかを見極め、資金の流れに乗ることだ。積極財政を支持しながら円を持ち続ける人々を見ると、私は奇妙に思う。その政策は明らかに円安をもたらす。ならば、擁護する前にドルを買っておかなければ、自分の意見で自分が損をする。市場で生き残るのは、正しい者ではない。変化にうまく適応できる者だけだ。(『鈴木傾城の「フルインベスト」メルマガ編』鈴木傾城)
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プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。
政治にどうこう言ってもカネは増えない
高市政権の「責任ある積極財政」や日銀の「金利据え置き」に対して、その良し悪しに対する意見が大きく割れ、議論になっている。XやYouTubeには、金融政策や財政方針について刺激的な主張が並び、コメント欄には賛否がぶつかり合う。
しかし、政策を擁護しても批判してもカネにならない。それを論じて自分の意見がどれだけ正しくても、それだけでは資産は1円も増えない。
政策を批評する姿勢そのものが間違っているわけではないが、投資という目的に照らすと非効率だ。投資家がやるべきことは、その政策ではどこにカネを賭けるのがベストなのかを理解し、資金が動く方向にカネを置き、リターンを得ることに尽きる。
たとえば、積極財政や金利据え置きはインフレ加速につがなるという懸念がある。政府と日銀はうまく手綱さばきをしてインフレを抑え込むというシナリオもあるが、市場関係者は「大枠ではインフレが加速する」と考える。
インフレは通貨の毀損を意味する。すなわち円安を意味する。とすれば、積極財政や金利据え置きは方向的には「ドル高円安」をもたらすのだ。実際、今まさに教科書通りにドル高円安になっている。
そうすると、誰が儲かるのかというと「じっとドルを保有している者」「為替市場でドルを買って円を売っている者」である。
積極財政や金利据え置きが正しいのか間違っているのかそんなことはどうでも良くて、政府がそれを進めるのであれば円を売ってドルを買った人間がリターンを得るのだ。
政策を批評している「だけ」の人間は1円も儲からない。
「自分の意見で自分が損する」
私が奇妙に思うのは、積極財政や金利据え置きが正しいと声高に擁護しているのに、ドルを保有せずに円を持っている人たちの存在だ。
積極財政や金利据え置きは明らかに円の価値を下げる。ならば、それを擁護しつつ円を持っていたら、自分の意見で自分が損することになる。
積極財政や金利据え置きを「正しい」と擁護するなら、円をドルに変えてからそうしないと自分で自分の首を絞める。それはとても悲しいことだ。積極財政を支持するなら、自分が儲かる方向に資産を移してから主張すべきなのだ。
端的に言うと、投資家は民主主義者であってはならない。投資家は常に何であるべきか?
Next: 正しい政策ではなく儲かる方向に賭ける?株価は意見では動かない…
正しい政策ではなく儲かる方向に賭ける
投資家は民主主義者ではなく、資本主義者でなければならない。政策の好き嫌いを論じるのではなく、政策が市場にどのような投資マネーの循環を生むのかを理解して、うまく立ち回る。
正しい政策に賭けるのではない。儲かる方向に賭ける。
これが重要な点だ。金融政策は投資家にとっては利用すべき対象でしかない。それをうまく利用することこそが資本主義者なのだ。現代社会は民主主義で動いているのではなく、資本主義で動いているので、資本主義者になったほうが100倍も得だ。
もちろん、人は誰でも政治に意見を持っている。だが、投資において重要なのは自分の意見ではない。市場から具体的な利益を得ることである。政策に対する怒りや支持の言葉は、それ自体は「ただの消費活動」にすぎない。
投資とは消費ではなく、自分が損をしないように資本を移す活動である。
結局のところ、人は2種類に分かれる。政策を語る者と、政策を利用する者だ。利益を出すのは後者である。政策に感情を乗せるか、それとも材料として冷静に扱うか。その分岐点が、うまく資本主義の社会で生きていけるかの差となる。
ちなみに、私が重視しているのは「日本政府はカネをばらまくのか引き締めるのか」「日銀は金利を上げるのか下げるのか据え置くのか」の2点である。なぜなら、私はドル資産を保有しているので、ドル高円安になってくれれば資産が膨張する。
とすれば、私が支持するのは「日本政府が円の価値を低下させてくれること」である。つまり、政府はじゃんじゃん円を刷り、日銀は利下げで金融緩和をしてくれたら私は得することになる。
ただし、それを際限なくやられると円の生活者としては不利になるので、ほどほどな円安が心地良いということになる。今は少し円安に振れすぎていると思うので、もう少し円高になって欲しいとは思うが、どちらにしてもうまく立ち回りたい。
そのために政府と日銀の政策を見ている。自分の資産のためだ。
私は積極財政を支持する発言をあちこちでしているのだが、そうしてくれれば私の資産が増えるからに他ならない。もし、あなたが積極財政を支持したいなら、ドルを保有してからにしないと馬鹿を見る。
市場は意見で動かない。資金フローで動く
市場の価格を動かす要因は、政治家の発言や評論家の主張ではない。実際に資金がどこへ流れたかという事実である。株式市場、債券市場、為替市場はいずれも資金がどこからどこへ移動しているかで価格が決まる。
今起きている「円安」は、要するに円からドルに資金が動いていることによって発生している。この資金フロー(資金の流れ)が起きると、今度は円安で儲かる企業が一番おいしい局面になるので、輸出企業やインバウンド関連に資金が流れ込むという動きも起こる。
今、日本ではインバウンド公害が深刻化しているのだが、資本主義の中での資金フローはそんなことはいっさい考慮しない。ただ単に、儲かると思われる方向に資金が流れていくだけだ。
つまり、「この政策は正しい」とか「間違っている」とか叫んだところで自分の資産には何のインパクトがない。こうした資金の流れは、政治的立場や経済思想の正しさとはまったく関係がない。
Next: どう立ち回るべき?うまく適応した者だけが利益を受け取る
自分が何を考えようが、資金が実際に動いた方向に投資家のリターンが生まれる。たとえ政策が「誤り」と評価されていても、市場で利益が生まれる領域は存在する。それならば、それに対応するしかない。
市場が評価するのは意見ではなく実際のマネーの動きだ。
そしてその動きが未来の利益を形づくる。投資家にとって重要なのは、政策が正しいかどうかではない。誰が何を主張しているかでもない。どこに資金が移動しているのかという一点だけなのだ。
政策が変われば制度が変わる。制度が変われば資金の流れが変わり、その結果として価格が変わる。政策はそれを見極めるために見る。政府が馬鹿な政策を発表し、日銀が馬鹿な動きをしても、それなりに資金が動くのだからチャンスはある。
うまく適応した者だけが利益を受け取る仕組み
政府が馬鹿なら、その政策に対して否定的な意見を述べる必要がある。そうしないと、大半の政治家は馬鹿なので間違えた方向に暴走していくだろう。しかし、それと投資行動は完全に分けておく必要がある。
たとえば、あなたが「金利は上げるべきだ」「防衛費の増額は問題だ」「財政拡大は危険だ」といった主張を持っていたとする。だが、それが正しかったとしても、間違っていたとしても、その意見が市場に影響を与えることはない。
莫大な投資マネーは、意見ではなく決まった政策によって動くからだ。
とすれば、投資家が取るべき姿勢は――
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『
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』(2025年11月26日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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