不動産デベロッパーが仕掛ける持ち家信仰に踊らされ、家を買いたいと思う日本人は多い。彼らはこの国の確定した未来から目を背けている。どういうことか?(『鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編』)
※本記事は有料メルマガ『鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編』2017年1月8日号の抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。
日本で持ち家が「財産」だった時代はとうの昔に終わっているのに
この国自体が「終わっている」
日本は世界で最も激しい少子高齢化に突き進んでいる国であり、人口が減少している国でもある。人口が減っているということは、「働き手」も減っているということだ。
「働き手」のことを生産年齢人口というが、15歳から64歳までの人口もバブル崩壊以後、じわじわと減少している。
日本は、1990年のバブル崩壊から国が壊れたままで直せない状況にあると言える。
それは、バブル崩壊以後、26年に渡ってバブル期の株価の頂点であった3万8915円を一度も超えることができなくなっていることや、銀座の地価1億2000万円をも超えられないことを見ても分かる。
少子高齢化の放置、人口減の放置こそが日本を蝕む最大のガンであると、何度も繰り返し警鐘が鳴らされていた。しかし、日本政府はまったく手を打たず、日本人も危機感を覚えることがなかった。
今のままで推移するのであれば、日本は立ち枯れすることになる。だから、客観的かつ合理的に考えるのであれば、「日本に長期投資する」というのは正しいことではない。
これは株式であっても不動産であっても然りだ。もちろん、すべての企業、すべての不動産がじり貧になるわけではないのだが、全般的に見るとかなり厳しい状況になるのは間違いない。
「郊外に夢のマイホーム」という悪夢
私も日本の株式はいくらか持っている。しかし、日本株を増額する予定はまったくない。
短期的に見れば、円安が進むのであれば日本企業の売上が上がって株価も上がるという局面が起きるので、今年あたりは日本株を買っておくのは無駄ではないかもしれない。
しかし長期的な視点で見ると、日本への長期投資とは、日本特有の少子高齢化リスクを背負うことを意味する。それよりも、資本主義の総本山であるアメリカの株式市場に投資しておいた方が間違いない。
現在の資本主義を動かしているのはアメリカだ。アメリカには自社株買いを行い、高い配当を出し、増配する超優良企業が山ほど存在する。日本の株式市場でそれを探すよりも、簡単でシンプルで分かりやすい。
日本に投資して良い環境というのは、爆発的に人口が増えて少子高齢化が解消する頃である。そのメドが経ってからでも遅くない。
それがいつ来るのか、本当に来るのかは分からないが、「日本を蝕む最大のガン」が治癒したら、その時こそ日本に全財産を投じるべきだろう。
私が心配しているのは、人口減が進む今になってもまだ日本の不動産にこだわる人が多くいるということだ。
不動産デベロッパーが仕掛けてくる「持ち家信仰」に踊らされ、「自分の家」を買いたいと思うのだ。自分の家を買っても良かったのは、バブル崩壊前までの話である。
今後はよほどのロケーションでもない限り、不動産はじりじりと値を下げていくばかりと化す。
住宅ローンに追われて人生の大半を借金返済のために生きるくらいなら、値段の付く今のうちに売っておいた方がいい。日本の不動産は財産にならない可能性がある。
特に郊外の新興住宅地の不動産は厳しいことになる。