北海道の酪農農家が、過去最大の危機にあります。北海道の酪農家では、生乳の廃棄処分をせざるを得ない事態が起きているのです。昨年11月、国は生乳の生産抑制のための緊急支援事業を発表、牛を早期淘汰した場合、1頭あたり15万円の助成金を国が交付するというものでした。これにより4万頭の削減を目指しているらしいのです。牛を殺せ……これが国の施策なのです。(『 らぽーる・マガジン らぽーる・マガジン 』原彰宏)
※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2023年2月27日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
搾りたての牛乳を毎日廃棄
北海道の酪農農家が、過去最大の危機にあります。北海道の酪農家では、生乳の廃棄処分をせざるを得ない事態が起きているのです。
生乳の生産量を減らすよう農協から求められ、900頭あまりの乳牛を抱える牧場だと1日1~2トンの生乳の廃棄を始めているそうです。
この話題は昨年も、年末押し迫った12月にこの情報誌でも取り上げました。あのときは、年末年始に5000トンの生乳が廃棄されるという話題で大騒ぎしていました。
岸田首相自ら「(この年末年始は)牛乳をいつもより1杯多く飲んでいただく、料理に乳製品を活用いただくなど、国民の皆さんの御協力をお願いいたします」と呼びかけていましたね。
昨年は、農林水産省が牛乳の消費拡大に向けた「NEW(乳)プラスワンプロジェクト」を始めていました。
今度は手のひらを返すように、農協を通じて生産調整を強要しているのです。
多い時で1日3トン廃棄、金額でいうと、毎日約31万円もの現金を溝に捨てていることになるそうですよ。
農林水産省の行き当たりばったりの生産計画、「不足しているから作れ、余っているから作るな」という指示って、一体なんなのでしょうね。
需給バランスの乱れ
昨年末はコロナ禍により需要減という側面があり、それは今も影響しています。
・冬休みで学校給食がなくなる
・1年を通しての飲食業営業自粛
・旅行客減少によるお土産需要激減
など、いわゆる「業務用」需要が大きなダメージを受けた昨年末でした。
昨年は牧草の育ちがよく、例年になく牛たちが元気だったようで、それは供給側にとっては、本来は喜ばしいことだったのですがね。
冬にかけて、暑い夏よりもよくお乳が出るそうなのですが、そんな状況下で生産調整の命令はきついです。
毎日搾乳をしないと牛の健康を保てないので、結局は搾乳しては廃棄するという事態に陥っているのです。
そこにウクライナ問題や円安による、牧場の原材料費となる牛の飼料等の価格高騰、エネルギー価格高騰による電気料金の大幅値上げがのしかかってきました。
畜産農家の経営維持そのものが危うくなってきたのです。
・経費の大幅高騰に生乳廃棄
・国の無計画な補助金による生乳増産計画に伴う大型投資
そもそも酪農家に生乳増産を要請したのは、2014年のバター不足問題によるものです。
乳業メーカーは、日持ちのしない生乳を、保存が利く脱脂粉乳に加工することで当面の対応をしました。しかし脱脂粉乳の在庫量が昨年最高水準に達したため、酪農家は生産の抑制をしなければならない事態に陥ったのです。
北海道の酪農農家は、もう完全に農林水産省に振り回されて被害にあったとしか言いようがありません。このまま経営悪化で酪農を諦めることになったら、もう国に殺されたも同然です。
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