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もはや最強株「トヨタ」が長期投資に最適と言える理由。脅威の営業利益5.3兆円を叩き出した“仕掛け”とは?=栫井駿介

今回はトヨタ自動車<7203>(以下・トヨタ)についてです。トヨタは今回の決算で5兆円もの営業利益をあげ、これは過去最高の数字となっています。一体どのようにして5兆円もの利益をあげたのでしょうか。そこには、決算をよく読んだ人にだけわかるカラクリがありました。そのカラクリを解説するとともに、トヨタは長期投資に向いているのかということも考えてみようと思います。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)

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プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

断トツの営業利益

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出典:みんかぶ

これは直近の決算の営業利益ランキングですが、トヨタが1位で、数字としては5兆3,529億円となっていて、日本企業として過去最高で、2位のNTTの2倍以上というとんでもない数字です。

2021年3月期にはソフトバンクグループが4.9兆円という数字を出しましたが、ソフトバンクに関しては利益の大部分が投資事業によるもので、別枠で考えるべきでしょう。

トヨタは投資利益ではなく、車の製造と販売によってあげた利益が5兆円ということです。

営業利益5兆円のカラクリ

なぜトヨタが5兆円もの利益をあげることができたのでしょうか。

トヨタを調べる際に有用なものが「トヨタイムズ」です。

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出典:トヨタイムズ

増益要因の1つは「円安」だったこと

今回の増益要因の一つとして為替変動の影響があります。トヨタは売上の多くの部分が北米など海外におけるものです。ドルで売ったものを円に換算する時に円安だと表面上の利益は大きくなります。これはトヨタ以外の自動車メーカーや製造業も同様です。

円安効果には、国内で生産した製品を輸出することによるものと、現地生産・現地販売によるものがありますが、人件費などの費用を円で支払う国内生産の方がより円安のメリットを受けることができます。トヨタは特に愛知県など地元の雇用を確保するという意識が強く、日産やホンダなどに比べて輸出の比率が高くなっています。もちろん、円高であったり日本人の給料が高い時には苦労する部分もありますが、今のように円安かつ海外の人件費が相対的に高くなっている状況だと利益が大きく伸びることになります。

今回の決算において、円安の効果が6,850億円ということです。

「半導体不足」からの反動も

円安よりも大きな要因として、「営業面の努力」とあり、なんとその効果が2兆円ということです。その中身として、

  • 半導体供給増により生産・販売台数が回復
  • 生産制約もなくなり高単価車種の販売比率が上昇
  • 新型車投入の継続により販売台数増
  • 商品鮮度の高さを背景に北米・欧州・アジアでは価格改定を実施

が挙げられています。特に半導体供給増によるところが数字としては一番大きかったものと思われます。

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出典:トヨタ 決算説明資料

コロナ禍では、半導体がパソコンやスマートフォンに優先的に使われたことと、半導体の製造がままならなかったことで、自動車用の半導体が不足し、自動車を販売しても製造が追いつかず、実際の納車までにかなり時間がかかる状態となっていました。

しかし、2024年3月期に入ると、半導体の供給が回復し、自動車の製造も追いついてきました。自動車は納車されて初めて売上が計上されるので、今期には過去に契約された分の売上が上乗せされて計上されていることになります。

よって、今後毎年5兆円の利益をあげられるかというと必ずしもそうではないということは認識しておきましょう。

しかし、これだけ納車までに時間がかかったにもかかわらず、それでもトヨタの車を買うというお客さんがいたという事実も忘れてはいけません。良い車を作り続け、顧客との信頼関係を築いてきたからこそ、(瞬間風速的な部分はあるにしても)5兆円という高い利益を出すことができたということです。

 

次期決算の予想としては4.3兆円と減益の予想となっていて、これはやむを得ないところであり、円高に傾くなどすれば下振れする可能性もあり、目先に関しては予断を許さない状況でもあります。

Next: トヨタの一人勝ち。EVからハイブリッド車への揺り戻しも

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