サイバーセキュリティー大手の「クラウドストライク」の問題で、ITシステムの世界的な障害が発生した。それにもかかわらず、ビットコインは急騰した。その理由などを解説する。(『 ヤスの第四次産業革命とブロックチェーン ヤスの第四次産業革命とブロックチェーン 』高島康司)
※本記事は『ヤスの第四次産業革命とブロックチェーン』2024年7月22日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
急騰したビットコイン
先週から今週にかけてビットコインは上昇している。過去5日間で7.07%の上昇だ。7月22日現在で約1,068万円前後で取引されている。
ビットコインの上昇は、ITシステムの障害でコンピュータのネットワークが世界的にダウンしているにもかかわらず起こった。
なぜITのシステム障害でもビットコインが上昇したのか、その理由を巡って議論が続いている。その原因はなんだろうか?
ITシステム障害とビットコイン
ビットコインは7月18日に64,000ドルから上昇を開始し、6月17日以来初めて67,000ドルを突破した。価格上昇に伴い、「ブラックロック」のビットコインETF(IBIT)の取引量も好調だった。最大の暗号資産は67,000ドルをわずかに上回る水準で取引され、過去24時間で5.5%上昇した。
またソラナ(SOL)は同期間に8.5%上昇し、アルトコインの主要銘柄の中でトップとなり、6月上旬以来初めて170ドルを突破した。さらにイーサリアムは3,500ドルの大台を回復し、3%の上昇でアンダーパフォームした。19日の規制当局への提出書類によると、米国初のスポット・ベースのイーサリアム上場投資信託(ETF)は、23日に取引が開始される可能性が高い。
今週初め、米国株の売りに連動して暗号通貨全体が下落した。しかし、18日の上昇は、主要株価指数が下落し続ける中で起こった。ハイテク株の多いナスダック総合株価指数は0.8%下落し、S&P500種株価指数は0.6%下落した。
株式相場との連動性が解除された背景には、サイバーセキュリティ・サービス・プロバイダーの「クラウド・ストライク」によるソフトウェア・アップデートが世界中のコンピューターに広範囲な障害を引き起こしたことがある。システム障害により航空会社や銀行、企業が停止したことから、暗号通貨の分析者の中には、中央集権型のネットワークと比較して、パブリック・ブロックチェーンのような分散型システムの回復力を強調する者もいた。
暗号資産ヘッジファンド、「Capriole Investments」の創設者であるレス・エドワーズは、米国の伝統的な市場オープンと同時にビットコインが急騰したことに注目した。機関投資家が目を覚まし、マイクロソフトのOSが動かなくなり世界的なハイテクと銀行システムが破綻する中、ビットコインが安全な避難所となる分散型価値貯蔵であると判断されたことが暗号通貨急騰の原因だとした。
強気の相場予想
分散型ネットワークであるビットコインを中心とした暗号通貨では、今回起こったようなシステム障害は発生し得ない。この障害はサーバーが一括管理する中央集権的なシステム特有の問題だ。このように、今回発生したシステム障害で暗号通貨の分散型システムが注目されたことから、ビットコイン相場の楽観的な予想が多くなっている。
より長い時間枠で見ると、現在のビットコインは56,000ドルと73,000ドルの間の数ヶ月の横ばい期間の中間点付近で取引されている。デジタル資産ヘッジファンドの「QCP」は、マーケット・アップデートレポートの中で、投資家の間では、11月の米国大統領選挙に向けて史上最高値の更新を狙う動きが強まっていると述べた。また、「Steno Research」の暗号通貨アナリストは、今後の米利下げ、流動性の上昇、欧州における規制の明確化、暗号通貨に友好的な米国のリーダーシップの可能性の高まりなど、複数の追い風に支えられ、暗号通貨は今年後半に強気の見方を示した。イーサリアムは6,500ドル、ビットコインは10万ドルになると予想した。
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