家族の形態が大きく変わっています。戦後長らく続いた3世代同居の大家族型から核家族化が進み、最近では1人世帯が全体の3分の1強を占めるようになりました。未婚の若者が増えているほか、配偶者との死別、熟年離婚の増加もあって高齢者の独り暮らしも増えています。これが消費生活の形を変え、独り暮らしのリスクから社会のニーズを変えています。その中で新しいビジネスも生まれています。(『 マンさんの経済あらかると マンさんの経済あらかると 』斎藤満)
※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2025年12月12日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。
単身高齢者の3分の2が女性
厚生労働省の「2023年国民生活基礎調査」によると、23年6月1日時点での世帯総数は5,445万2,000世帯で、このうち34%にあたる1,849万5,000世帯が1人世帯となっています。これは20年前の1.7倍になります。
このうち、半分近い855万3,000世帯が65歳以上の高齢者単身世帯です。これは20年前の2.7倍になります。
高齢者単身世帯増の背景には、熟年離婚の増加、配偶者との死別が考えられますが、高齢者単身世帯の64.4%が女性で、男性は35.6%となり、女性の高齢者が多くなっています。
市場としてみれば、単身世帯、とりわけ女性高齢者の単身世帯が急成長市場ということになります。
高齢単身世帯の社会的リスク
高齢単身世帯の増加に伴って、社会的なリスクも高まります。
1人住まいの高齢者にとっての不安は、突然病気になったり、孤独死となったりするリスクです。突然病気になっても、世話をしてくれる家族がなく、病院にも行けないと救急車を呼ばなければならなくなります。その際に必要なものを用意したり、戸締りをしてくれたりする人もいません。
そうした中、自治体によっては独り暮らしの高齢者の家を定期的に訪問して安否を確認しているところもありますが、人口の多い都市部ではこれも困難です。高齢者生活センターなどがあるところでは、これを利用できる人もいますが、これを利用できない高齢者も少なくありません。
高齢者の孤独死は、その人が所有するものの処分や葬儀の手配が必要になります。すべて公的機関に委ねるわけにもいきません。特に、家がその人の持ち家の場合、放置すれば長い間空き家となり、治安の悪化や防災上の問題も発生します。実際、住人が死亡したことによる空き家の数が増えて、社会問題になっています。
賃貸住宅のオーナーにとっては、居住者が孤独死した場合に、その物件はいわゆる「事故物件」となり、次の借り手がつきません。このため、高齢者に貸すことを拒むケースが多く、賃貸住宅を必要とする高齢者は、なかなか家を借りられません。
必要は発明の母
もちろん、単身世帯がすべてトラブルを抱えているわけではありません。親から独立して1人暮らしをおう歌している若者もいれば、定年退職した夫と毎日家で顔を突き合わせるのが嫌で離婚し、自分だけの時間を自由に使える喜びをおう歌している女性も少なくありません。
しかし、不本意な形で独り暮らしを余儀なくされ、不安を抱えている人が多いのも事実です。






