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エア・ウォーター、不適切会計で株価急落…買いの好機か?長期投資のプロが教える「危険な銘柄」の見分け方=元村浩之

株式投資家の皆様にとって、2024年から2025年にかけてのエア・ウォーター<4088>に関するニュースは、極めて大きなショックを伴うものだったのではないでしょうか。特に、同社を将来性豊かな成長株として見ていた方や、実際にホルダーとして応援していた方にとっては、裏切られたという思いが強いはずです。この不祥事は、単なる事務的なミスではありません。当初は子会社1社の問題として片付けられるかと思われましたが、調査が進むにつれてグループ37社という広範囲にまたがる「不適切な会計処理」が発覚しました。これによって加年度の決算修正と今期の業績の下方修正が行われ、株価は2,100円付近まで急落するという、深刻な事態に陥っています。なぜこの急成長企業がこれほどまでの不祥事を引き起こしたのか、その背景と投資家が学ぶべき教訓を隅々まで解説します。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』元村浩之)

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プロフィール:元村 浩之(もとむら ひろゆき)
つばめ投資顧問アナリスト。1982年、長崎県生まれ。県立宗像高校、長崎大学工学部卒業。大手スポーツ小売企業入社後、店舗運営業務に従事する傍ら、ビジネスブレークスルー(BBT)大学・大学院にて企業分析スキルを習得。2022年につばめ投資顧問に入社。長期投資を通じて顧客の幸せに資するべく、経済動向、個別銘柄分析、運営サポート業務を行っている。

エア・ウォーターという企業

エア・ウォーターという社名は、その名の通り「空気」や「水」といった地球の資源をビジネスにするという理念に由来しています。
同社の素業は産業用ガスの供給であり、酸素や窒素などを製造業や医療現場へ届けるインフラ企業としての側面を持っています。
特に近年では、半導体製造に不可欠な特殊ガスの供給を担う「デジタル&インダストリー事業」が注目を集め、半導体関連銘柄の一角として投資家の期待を一身に背負っていました。

同社が成長のエンジンとしていたのは、極めて積極的なM&A戦略です。
食品事業、医療用酸素、農業、海水事業など、次々と会社を買い受けることで事業を多角化し、売上高1兆円という巨大なビジョンを掲げて突き進んできました。
有価証券報告書の沿革を見れば、2010年代初頭から子会社化の記録がびっしりと並んでおり、2024年8月にも387億円を投じて歯科器具のCiメディカルをTOBするなど、まさに「イケイケ」の成長企業として知られていたのです。

エア・ウォーター<4088> 週足(SBI証券提供)

エア・ウォーター<4088> 週足(SBI証券提供)

不祥事発覚から現在に至るまでの経緯

崩壊のきっかけは、2025年の夏に子会社の日本ヘリウムやエア・ウォーター防災などで在庫に関する不適切な処理が発覚したことでした。
会社側は10月9日に特別調査委員会を設置し、外部の弁護士や公認会計士による調査を開始しました。
翌10月10日の続報では、影響額は累計で25億円程度になるとの見通しを発表しています。
この時点では、会社の規模から考えて「致命傷にはならないのではないか」と楽観視していた投資家も少なくありませんでした。

しかし、11月13日に第2四半期決算の延期が発表されたことで、状況は一変します。

調査の長期化は、問題がより根深いものであることを示唆していました。
さらに12月3日には、当時の代表取締役会長であった豊田喜久夫氏の辞任が発表されます。
調査の最中にトップが身を引くという異常事態は、経営責任が極めて重大であることを物語っていました。
その後、役員の退任や移動といった混乱を経て、2月13日にようやく公表された数値は、当初の予想を遥かに超える壊滅的な内容だったのです。

営業利益予想が840億円から140億円へ

2月13日に発表された業績予想の修正値は、市場に凄まじいインパクトを与えました。

当初840億円と発表されていた通期の営業利益予想は、わずか140億円へと下方修正されました。
減少額にして700億円という、言葉を失うような減額です。

また、最終損益に至っては530億円の黒字予想から一転して100億円の赤字へと転落し、一気に630億円もの利益が吹き飛ぶ形となりました。

これには、不適切会計の修正だけでなく、海外事業におけるのれんの減損や事業撤退費用、在庫評価の適正化といった多額の損失が一気に計上されたことが背景にあります。

さらに衝撃的なのは過年度の修正額です。
過去の決算にまで遡って洗った結果、売上高で607億円、営業利益で332億円もの数字が実態のない「水増し」であったことが発覚しました。
これらは特別調査委員会の調査だけでなく、会社側が危機感を持って行った「自主点検」によってさらに多くの不正が洗い出された結果でもあります。

Next: 在庫水増し・売上前倒し・損失先送り…なぜ不正が野放しにされた?

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