在庫水増し・売上前倒し・損失先送りの三悪
発覚した不正の手口は多岐にわたり、かつ組織的に繰り返されていました。
その内容は大きく3つのカテゴリーに分類できます。
1つ目は「在庫の水増し」です。
本来なら価値が下がって廃棄すべき在庫や、売れる見込みのない在庫について損失処理を行わず、資産として計上し続けることで利益を多く見せていました。
2つ目は「売上の前倒し計上」です。
まだ条件が確定していない取引や、完了していない工事について、目標達成のために今期の数字として無理やり計上するという手法です。
そして3つ目が「損失の先送り」です。
原価が上がっているにもかかわらず費用を計上しなかったり、本来行うべき減損処理を将来へ回したりすることで、目先の利益を粉飾していました。
さらに悪質なのは、不自然な内部取引を介在させて売上を膨らませていたケースです。
実質的な価値がないにもかかわらず、グループ内で取引を循環させることで、見かけ上の売上規模を大きく見せていた可能性が指摘されています。
これらの処理が親会社の一部署であるプラントガス部だけでなく、M&Aで獲得した複数の子会社において数年にわたり継続されていた事実は、企業としての信頼を根底から覆すものです。
目標達成を最優先する歪んだ企業文化
なぜ、これほど大規模な不正が野放しにされてきたのでしょうか。
調査報告書が指摘する最大の原因は、目標達成を最優先する「企業文化」と、強烈な「トップダウン・マネジメント」にあります。
1兆円企業という巨大なビジョンを掲げる中で、いつの間にか「顧客への価値提供」よりも「業績目標の達成」そのものが目的化してしまいました。
外部環境がどうあろうと目標を達成せねばならないという過度なプレッシャーが現場にのしかかり、ハラスメントとも受け取られかねない厳しいマネジメントが常態化していました。
さらに、経営トップが強力な人事権を掌握していたため、組織全体が「トップの意向に沿うこと」を優先し、異を唱えることができない空気が醸成されていたのです。
こうした歪んだ圧力がグループの末端まで浸透し、各地で不適切な処理が引き起こされる土壌となりました。
監査法人の判断と、未だ晴れない「霧」の正体
現時点での報告をもって、すべての霧が晴れたわけではありません。
今回の半期報告書に対し、あずさ監査法人は「限定付き結論」という厳しい評価を下しています。
これは、大枠のチェックは終えたものの、一部の証拠が偽造されていたなどの理由により、すべての数字の正しさを確認しきれなかったことを意味します。
特にエア・ウォーター防災などにおいて、工事完了日や物品引き渡しに関する商標の偽造が疑われており、監査法人として完全なお墨付きを与えることができなかったのです。
調査は依然として継続中であり、今後も新たな修正が発生する可能性が示唆されています。
過年度の有価証券報告書の訂正もこれから本格化するため、本当の意味で膿を出し切り、クリーンな状態に戻ったと言い切るには、まだ時間がかかるというのが現状です。
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