今回紹介する企業はソフトバンク<9434>です。消費者にとって馴染みのある企業であり、株主数は国内上場企業で第5位を誇る人気銘柄です(24年5月現在)。今回はその株主優待と配当の継続性、最新の決算分析を行います。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』佐々木悠)
プロフィール:佐々木悠(ささき はるか)
1996年、宮城県生まれ。東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。前職では投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。2022年につばめ投資顧問へ入社。
株主優待と株式分割の発表
まず一つ目のトピックとして、株式分割と株主優待の設定を解説します。
4月25日に発表された木の葉票は、個人投資家にとって大変嬉しい発表です。
株式分割は24年の9月30日を基準日として1株につき10株の割合を持って分割されます。
24年10月1日以降は(24年5月現在の基準であれば)1株が約190円。単元で購入しても20,000円以下で購入できるようになります。
そして株主優待はソフトバンク株を1年以上かつ、100株以上保有すれば、1,000円分のPayPayポイントが付与されるというものです。
この優待の初回は2025年3月31日から2026年3月31日の1年間保有した場合ですから、少し先の話ですが、24年5月現在の基準で株式分割されたのちに株主優待を受け取れば投資額に対する優待の利回りを計算すると、優待利回りは約5.2%です。100株を保有した場合の配当と合わせた「総合利回り」は約9.8%にもなります。
ちなみに200株持っていた場合でも、条件はあくまで「100株以上保有」ですから、100株以上であれば持っている株数に関わらず、受け取る優待はPayPayポイント1,000円分です。
株主優待の継続性
問題はこの株主優待が継続するかどうかですが、私は継続する可能性が高いと考えます。
なぜならば、ソフトバンクの一つの狙いとして、PayPayを含むファイナンス事業の黒字化を狙っているものと考えられます。
すでに6,000万人を超えるユーザーを獲得していますが、株主優待と株式分割をフックにPayPayユーザー数をさらに確保したい狙いです。なぜユーザ数を増やしたいかというと
- 優待や各種プロモーションでPayPayユーザーの獲得
- PayPayポイント付与率アップ理由でクレジットカードを増加
- クレジットカード利用者の一部の人は借入を行う可能性が高く金利収入につながる
- (あるいは、PayPayポイント付与率アップのために携帯なども利用してもらう)
このように金融ビジネスの確立のためにペイペイのプラットフォームは非常に重要です。
その点今回の株主優待は①に該当するため、中長期的な戦略を考えるとこの優待は続く可能性が高いと考えます。
また新NISA関連で新しい個人投資家が増えることも想像できます。そういった若い投資家の指示を受けるためにも株式分割と株主優待の設定を行ったとみられます。現在の投資家のボリュームゾーンである50代以上の投資家に加え、次の世代を担う若い層を獲得し、中長期的に離れない株主を獲得していく狙いがあるのかもしれません。