今回はNTT(日本電信電話)<9432>についてです。2023年度の決算発表を受けて、株価が大きく下落しています。株式分割によって、低い金額から投資できるようになったということで、多くの個人投資家、特に初心者の方が参入した銘柄だと思います。今回下落したNTTに対してどのように振る舞うかによって、投資に対する見え方が変わってくると思いますので、ぜひこれを学びの機会にしていただきたいです。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)
プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
決算発表のどこが悪い?
NTTの主な事業としては、携帯電話事業(NTTドコモ)、固定電話事業、インターネット回線、NTTデータ(システム開発)などがあります。
業績は基本的には安定していて、今回の決算も大きく減益というわけではなく、実績に関してはむしろ増収増益となっています。
一方で株価は、5月10日の決算発表後に大きく下がっています。
下がった理由を端的に言うと、業績予想が悪かったからです。
株式投資では、過去の実績よりも、今後どうなるのかというところに注目が集まります。
したがって、
その業績予想が、売上高はなんとか854億円のプラスとなっていますが、営業利益は1,129億円の減益、当期利益が1,794億円の減益となっていて、増収・減益の予想となっています。
減益決算ということで、基本的にはネガティブに捉えられます。
NTTのこれまでの業績を見てみると、2020年3月からずっとプラスで推移してきました。
投資家としては、今後も増収・増益を見込んでいた部分があると思われ、減益ということになるとその期待が裏切られたような形になります。
減益発表は意図的?
なぜ今回の決算が減益になったのかを詳しく見てみると、この減益はあまり問題ではないと思えます。
これは「ウォーターフォールチャート」といって、その年の売上や利益の変動の要因を表したグラフです。
総合ICT事業(インターネット、携帯電話)は増収・増益、グローバルソリューション事業(NTTデータ)も増収・増益の予想となっています。
ところが、地域通信事業(固定電話)が減収・減益となっています。
ここで会計の話をすると、将来払うはずだった費用を先に計上したりすることで、損益計算書はある程度意図的に動かすことができます。