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カルディを急成長させた無料コーヒーの魔力とは?強気の出店攻勢に死角はあるか=長浜淳之介

女性客を中心に、店内はあたかも「海外のお洒落な市場」のような賑わいを常時見せているカルディコーヒーファーム。その人気の秘密はどこにあるのでしょうか。フリー・エディター&ライターでビジネス分野のジャーナリストとして活躍中の長浜淳之介さんは今回、顧客を呼び込む同社の独自の工夫や今後を見据えた新しい取り組みを紹介しています。

プロフィール:長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)、『バカ売れ法則大全』(SBクリエイティブ、行列研究所名義)など。

独自路線はメリットだらけ。カルディ絶好調の秘密と今後の課題は

急成長中の「カルディ」は、グロサリー業態を世に広めたパイオニア

「カルディコーヒーファーム」(以下、カルディ)は、国内に421店舗(2018年8月現在)を駅ビル、ショッピングセンター、駅前の路面に展開。コーヒー豆と輸入食品を主に販売し、グロサリー業態を世に広めたパイオニアとも言うべき急成長中のチェーンである。

カルディでは40~60坪のさほど広くない店舗内で、約1万点というおびただしい数の商品が販売されている。しかも他店ではまず売っていない、独自性が強いこだわりの商品ばかりが売られている。商品の面白さ、珍しさのためインターネットが普及した今日、熱心なユーザーから、SNSで連日のように購入して食べてみた体験談が投稿されている。そうしたファンの口コミが人気に拍車をかけている。

店舗数は2010年代に入って急増しており、10年に200店を突破して以来、12年に300店、17年に400店を達成している。1年で50店近く増えた10~12年頃の勢いからはやや鈍化しているものの、8年間で2倍を超える店舗数に増えた成長率の高さは特筆される。

カルディの店舗は基本として女性スタッフによって運営されており、男性スタッフは非常に珍しい。女性活用によって伸びてきた会社で、従業員数8600人のうち7200人はパートタイマー(18年8月期)であって84%を占める。

女性スタッフを多く採用(カルディHPより)

女性スタッフを多く採用(カルディHPより)

顧客も20代後半から40代くらいまでの感度の高い女性が多い印象だ。週に2、3度足を運ぶ常連も多い。また、カルディのファンがスタッフに応募して採用されているので、ファッションビルのアパレル店員と同様に、店員が消費者目線で買いたい商品を感覚的に理解している。そこにデータ分析を加味することにより、目を引く売場ができるのだ。各店の仕入れは女性の店長に任されている。

カルディは、キャメル珈琲(本社・東京都世田谷区)という会社が経営しており、創業は1977年。尾田信夫社長が世田谷区代田にて、コーヒー豆を喫茶店に卸す焙煎業として事業を始めた。年商は17年8月期で893億円となっている。

1986年、世田谷区内の京王線下高井戸駅前にある市場の一角で、小売店舗の運営を開始。様々な商品が所狭しと並び、商品を眺めているだけで好奇心が沸いてくるような活気のある店を目指した。しばしば、「路地裏の宝探し」と称される店の特徴は、当初より目標としていたものだ。

Next: お店の入り口で「無料のコーヒーを配る」という魔法

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