今回は、多くの方にとって驚きだったであろう、パナソニック<6752>が1万人規模の人員削減を行うというニュースについて、その背景や詳細、そしてパナソニックの現状と課題を解説します。黒字経営を続けている企業が、なぜこれほど大規模な人員整理に踏み切るのか、詳しく見ていきましょう。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』元村浩之)
プロフィール:元村 浩之(もとむら ひろゆき)
つばめ投資顧問アナリスト。1982年、長崎県生まれ。県立宗像高校、長崎大学工学部卒業。大手スポーツ小売企業入社後、店舗運営業務に従事する傍ら、ビジネスブレークスルー(BBT)大学・大学院にて企業分析スキルを習得。2022年につばめ投資顧問に入社。長期投資を通じて顧客の幸せに資するべく、経済動向、個別銘柄分析、運営サポート業務を行っている。
なぜ黒字なのに1万人削減?
パナソニックが発表したグループ経営改革の中で、「人員の適正化」という項目が設けられています。これは、生産性を高めるために、1万人規模の人員整理を行うという内容です。
具体的には、国内で5,000人、海外で5,000人が対象となり、2025年度中に実施予定とされています。パナソニックの連結従業員数は約23万人ですので、1万人という規模は全体の約4%に当たります。4%と聞くと少なく感じるかもしれませんが、あのパナソニックが1万人もの人員を削減するという事実は、やはり大きなニュースと言えるでしょう。
人員削減と聞くと、通常は会社の経営状況が厳しく、赤字に陥っているケースを想像するかもしれません。例えば、直近で日産<7201>が大規模な人員削減を行った際には、数千億円規模の大赤字となっていました。
しかし、パナソニックは日産のような大赤字に陥っているわけではありません。業績は黒字を保っています。では、なぜ黒字なのに人員削減を行う必要があるのでしょうか。
<業績は「横ばい」>
パナソニックの業績推移を見ると、利益は赤字ではないものの、長年にわたって業績があまり伸びていない状態が続いています。アップダウンを繰り返しながらも、全体としては横ばいの状態と言えます。
この状況が、ソニーや日立といったかつての総合家電メーカーと比較すると、より明確になります。2016年から2025年3月期までの営業利益の推移を見ると、パナソニックがほとんど変わらず横ばいを続けているのに対し、日立は約2倍弱、ソニーに至っては約5倍弱も営業利益を伸ばしています。利益額で見ても、日立が1兆円を超えているのに対し、パナソニックは約4,000億円のままです。
他社が事業構造を大きく変革し、成長を遂げる中で、パナソニックは相対的に「何も変わっていない」というのが実情に近いようです。パナソニック自身も、このままでは将来性がないという危機感を感じていると考えられます。
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