現在、SBI新生銀行のIPO(新規株式公開)が注目を集めています。12月2日からブックビルディング期間が始まっており、投資を検討されている方も少なくないでしょう。特に注目されるのは、先行事例である楽天銀行です。楽天銀行は上場後、株価がなんと5倍に上昇しており、今回のSBI新生銀行も同じような成長を遂げるのではないかと期待が寄せられています。今回は、この上場案件を受けるべきかどうかについて、SBI新生銀行の歴史、ビジネスモデルの変革、業績の詳細、そしてリスク要因を徹底的に分析し、投資判断のポイントを解説します。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)
プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
SBI新生銀行 IPOの基本情報とスケジュール
SBI新生銀行の公開予定日は12月17日です。現在はブックビルディング期間に入っており、この期間に投資家からの需要を申告する必要があります。
ブックビルディング期間に集まった需要に応じて公開価格が最終的に決定されますが、通常は仮条件の最も高い価格に決まるのが一般的です。
- 仮条件:1,440~1,450円
- ブックビルディング期間:12月2日~12月5日
- 申込期間:12月9日~12月12日
- 上場日:12月17日
今回のIPOは時価総額で約1.3兆円となる見込みであり、これは今年最大規模のIPOとなる見通しです。
SBI新生銀行の歴史:長銀からSBIグループへ
SBI新生銀行の起源を遡ると、元々は日本長期信用銀行(長銀)というエリート銀行でした。しかし、バブル崩壊によって財務状況が深刻化し、実質的に経営破綻しました。
その後、公的資金が投入され、外資の関与や経営の不安定化が続く中で、公的資金の返済が滞っていました。
この状況に救済の手を差し伸べたのがSBIグループです。SBIグループは、メガバンクに対抗し得る巨大な金融グループを構築する戦略の下、新生銀行を傘下に収めました。SBI傘下に入った後は経営改善が迅速に進み、業績が大きく改善し、滞っていた公的資金も返済されました。
一度は非上場化されましたが、わずか4年間で再上場を果たすに至りました。上場後もSBIホールディングスは74%の株式を保有し、引き続きグループの力を借りて成長を続ける見込みです。
成長の鍵:SBI証券との連携による預金獲得戦略
銀行のビジネスモデルにおいて、いかに預金を効率よく集めるか(調達コストを下げるか)が重要です。
従来の新生銀行は、高い預金金利で資金を集めていたため、調達コストが高く、高リスク・高リターンの運用をせざるを得ないというジレンマを抱えていました。
しかし、SBIグループの傘下となった後は、この構造が劇的に変化しました。
最大のメリットは、SBI証券との口座連携による預金獲得です。SBI新生銀行は、銀行口座と証券口座を密接に連携させ、SBIで運用する投資家が面倒な資金の移し替え作業をしなくても済むようにしました。これに加えて金利優遇も行った結果、預金残高が飛躍的に伸びました。
高い金利で集めなくても資金が集まるようになったことで、調達コストが改善し、ビジネスモデルがうまく回るようになりました。
<運用面の独自性:特殊な融資戦略>
預金が伸びたことで、貸出・運用資産(営業性資産)も増加しました。この営業性資産は、SBIの傘下となってからは年平均20%ずつという驚異的な伸びを見せています。
SBI新生銀行の融資の特徴は、地方銀行のような一般的な法人融資だけでなく、ストラクチャードファイナンスや不動産コースローンなど、専門性が高い分野を得意としている点です。例えば、大規模な太陽光発電やデータセンタープロジェクトなど、特定の案件のために作られた特別会社への融資に強みを持っています。
また、運用では外国債券への投資比率が高めで、比較的「攻めている」運用姿勢が見られますが、分散投資によってリスク管理に努めていると推測されます。
結果として、SBI傘下化から4年で利益は4.1倍に増加しています。
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