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なぜユニ・チャーム1年で株価35%下落?中国苦戦とインド成功から見えた投資リスクと成長戦略=栫井駿介

最近、株価が下落しているユニ・チャーム<8113>について深掘りし、その原因と長期投資対象としての可能性を探ります。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

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株価下落の現状とユニ・チャームの事業概要

ユニ・チャームの株価は、この1年でおよそ35%下落しています。

ユニ・チャーム<8113> 日足(SBI証券提供)

ユニ・チャーム<8113> 日足(SBI証券提供)

ユニ・チャームは皆さんもご存知の会社だと思います。主に女性用生理用品やおむつ(子供用・大人用)、そしてペットケア商品を製造・販売しています。いわゆる日用品の会社に分類されますが、特におむつや不織布関連の分野にかなり特化しているのが特徴です。花王のように幅広い製品を扱うのではなく、特定の分野に集中しています。

しかし、規模が小さいわけではありません。分野は狭いながらも、それを世界中に展開しているのがユニ・チャームの特色です。海外売上高比率は65.1%、アジア売上高比率は41.6%グローバル企業であり、特にアジア、東南アジアへの進出を非常にうまく行ってきた会社として知られています。

株価下落の主な要因:アジア市場、特に中国での苦戦

今回の株価下落には、実はこの海外進出、特にアジア市場の先行きへの影響も関係していると考えられます。

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出典:ユニ・チャーム 決算説明資料

直近で発表された第1四半期決算(12月期決算の3月まで)の地域別コア利益率を見ると、その理由が見えてきます。ユニ・チャームの売上の約41%を占めるアジア市場の利益率が、かつての16〜17%から最近は13.1%、10.3%、12%と推移し、直近の第1四半期ではなんと4.1%まで大幅に下落しました。売上高もこの四半期だけで13.4%のマイナス、利益に至っては70.1%のマイナスとなっています。これまでアジアで成長し続けてきたユニ・チャームが、まさにこのアジアでつまずいている状況なのです。

<中国市場の変化:爆買いの終焉と景気悪化>

この背景には何があるのでしょうか。

特に顕著なのが中国での状況です。少し前、コロナ前には日本の製品に対する「爆買い」需要が中国でありました。中国では国内企業の製品に対する信頼があまり高くなかったため、経済成長でお金を持った人々が、子供のために「良いものを使わせたい」と日本のおむつなどを購入していたのです。ピジョンの製品やユニ・チャームのおむつは人気で、日本のドラッグストアで大量に購入して帰国する人も少なくありませんでした。当時は日本の製品が非常に好調だったのです。

しかし、時代は変わり、外部環境に大きな変化がありました。特に、中国の不動産バブルが実質的に弾け、景気が悪化しています。これにより、かつてお金持ちだと思っていた人々の経済的な余裕がなくなってきました。同時に、中国国内企業も成長しており、消費者は節約志向に走る傾向が見られます。その結果、品質は劣るかもしれないが、ユニ・チャームより安価な国内企業の製品に需要が流れ、価格競争が発生し、ユニ・チャームの売上減少につながっていると考えられます。

これは中期的な話として、新興国に進出し普及させるというユニ・チャームの戦略において、地元企業の成長による競争激化は避けられない自然な流れでもあります。

Next: ユニ・チャームは買いか?偽造品問題という新たな打撃も…

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