fbpx

三井E&Sは割安?今後の成長性は?長期投資家が冷静に見るべき「造船・港湾関係」好調の恩恵=栫井駿介

先日公開した記事の中で、さくらインターネット、住石ホールディングス、三井E&Sを「仕手株」として取り上げました。しかし、特に三井E&Sに関して「仕手株」という扱いをしたことを非常に反省しております。三井E&Sの株価上昇は他の2社と比べて、確かな実績と背景を伴うものでした。気分を害された皆さま、誠に申し訳ございませんでした。多数のご指摘を受けながら、三井E&Sの注目度の高さを感じました。今回は改めて三井E&Sがどのような会社で、なぜ株価が乱高下しているのか、深掘りしたいと思います。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)

【関連】初心者が養分に…「仕手株」を持っていたらどうすべき?さくらインターネット、住石ホールディングス、三井E&Sの具体例で解説=栫井駿介

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

三井“造船”ではない

三井E&Sは元々「三井造船」という名前でしたが、内容としては“造船”というところから離れてきています。

三井E&S<7003> 業績(SBI証券提供)

三井E&S<7003> 業績(SBI証券提供)

これが業績の推移ですが、2018年3月から5期連続で営業赤字を継続していて、かなりまずい状況でした。

日本の造船事業は、中国や韓国に押されて収益性がままならない状況が続いていて、三井造船もその中の1つとなっていました。
そのことから、継続企業の前提にかかる疑義、いわゆるゴーイングコンサーンに黄信号が灯る会社でもあったのです。

この状況を打開すべく、ここ数年はリストラを行っていました。
リストラというと主に事業売却です。

E4B889E4BA952.png

出典:マネックス証券

“常石造船と資本業務提携”とありますが、売却に近いものです。

E4B889E4BA953.png

出典:三井E&S 2023中期経営計画 進捗報告

このように、三井E&Sは造船事業から事実上撤退していて、三井造船の頃とは全く違う会社になっています。

造船業が全体的に調子が良いということで注目が集まっている部分もあると思いますが、三井E&Sはその恩恵のすべては受けられない体質になっています。

三井E&S<7003> 日足(SBI証券提供)

三井E&S<7003> 日足(SBI証券提供)

“港湾関係”は期待できる?

では、三井E&Sは今何をやっている会社なのでしょうか。

1つは産業機械です。
工場などで使われる大きな機械を作っています。

 

他の大きな事業としては船用エンジンを作っています。
IHIからエンジン事業を引き受けて、船自体は作らないものの、船用エンジンは強化しようという流れになっています。

 

また、港湾にある大きなクレーンなども作っています。

この“港湾関係”の部分が今回の株価上昇の1つのミソとなっているのです。

※参考:米政権、港湾サイバー対策に3兆円 中国製懸念、三井E&Sはクレーン生産へ:時事ドットコム(2024年2月22日配信)

アメリカの港湾で中国のクレーンを使っていたのですが、安全保障上の問題でそれをやめようということになり、三井E&Sの米国子会社は、クレーンの米国内生産を再開する方針を示したということです。

しかし、報道はされたものの実際には何も決まっていない状況で、三井E&Sが受注できるとも限らず、かなり眉唾物の話だと思います。
判断材料として考えられるものではありません。

Next: 三井E&Sは割安なのか?業績「上方修正」の内実

1 2
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー