『乃が美』FC店舗の9割が赤字？結局勝ち組は元締めだけだった高級食パンブーム。今人気の「おにぎり専門店」の今後にも広がる“悲観的”観測

高級食パンブームを牽引するも、近年はその苦境ぶりが度々伝えられていた「乃が美」だが、ここ最近になっても閉店ラッシュが止まらないなど、厳しい状況が続いているようだ。

報道によれば、一時はFC（フランチャイズ）店舗も含め全国に240店舗以上あった同店だが、23年12月の時点で116店舗にまで減少するなど、各地で閉店が相次いでいるとのこと。

特にFC店舗は、新型コロナの蔓延によって売上が低下し、9割の店舗が赤字になっているとの話もあるうえに、さらに本部に支払う高額なロイヤリティー料も大きな負担になっている模様。FC契約の途中解除も、莫大な違約金が発生するためにできないという、まさに八方ふさがりの状況になっているという。

“完全終焉”の空気も漂う高級食パンブーム

2022年初めごろから、SNS上やメディアで伝えられるようになった高級食パン店の苦境。当初は、独特な店舗名で出店していた高級食パン店群が各地で閉店しているという現象によって、人気の綻びが露呈したわけだが、その後は一大チェーンを築いていた乃が美の“本部vsFC店舗”の対立からの大量閉店という流れが、そのブームの終焉を印象付けることとなった格好だ。

【関連】地方でも飽和状態“高級食パン店”の相次ぐ閉店がSNS上で話題に。「次に危ない」と取沙汰されるアノ業態とは？

【関連】高級食パン「乃が美」の都内8店舗が“離脱”。高単価路線を巡って対立？ 東京進出は46都道府県目と慎重だった過去も“悪い予感”が的中か

ちなみに、この“独特な店舗名”の高級食パン店のほうだが、開業前に各店舗が元締め側に基本料金300万円に別途オプション料金といった、ソコソコな額のプロデュース料を支払うという契約だったようで、大量閉店の憂き目でも元締め側の懐はさほど痛まないということが大いに取沙汰されることに。

その反面で、今回の乃が美のほうはというと、出店後にロイヤリティー料を払っていくといった典型的なフランチャイズ契約。

ただ、先述した通り乃が美側が設定したロイヤリティー料は、確実に各FC店舗の経営を圧迫。値下げにも応じないうえに、かといって契約解除にも違約金が発生するということで、今のところ閉店を免れているFC店舗も、膨らみ続ける赤字になんとか耐えつつ、FC契約の満了を待つしかないといった状況のよう。

“独特な店舗名”の高級食パン店も今回の乃が美も、その方法論こそ異なっていたものの、顛末としては多くの末端店舗が短期間で経営危機、あるいは閉店に追い込まれる反面で、本部や元締めはさしずめ勝ち逃げといった状況……といった構図で、ほぼ共通しているようなのだ。

「おにぎり専門店」過去ブームにない強みとは？

それにしても最近はこの高級食パン店以外にも、例えばタピオカ屋や唐揚げ専門店など、一時的に店舗が大増殖するものの、たちまちブームが去って閉店ラッシュ……といったパターンを繰り返し見聞きするといったところ。

特に唐揚げ専門店は、高級食パン同様にFCに乗るにしても、あるいは個人で始めるにしても、さほど資金がかからず始められるゆえに、各地で開業が相次いだものの、先日その倒産数が前年比で7倍に達していると報じられるなど、すっかり下降線……という状況だ。

【関連】唐揚げ店“前年比7倍”の倒産数に。「低資金で開業可」「未経験でも簡単」等の甘言に踊らされ死屍累々の山を築くお決まりパターンに広がる冷淡な反応

こういった経緯があるだけに、近年ブームが到来しているとメディアなどが持て囃す「おにぎり専門店」に対しても、SNS上では「高級食パンや唐揚げと同じ顛末を辿るのでは……」といった趣旨の声も、すでにチラホラとあがっているよう。

食パン専門店ブームが廃れたと思ったら今度はおにぎり専門店ブームか
懲りねえな

— さいてぉー (@saitelo_sean) September 6, 2023

唐揚げ店の倒産急増、前年の7倍

白い鯛焼き、タピオカ、高級食パン、カレー、ドーナツ

おにぎり専門店
次はこれだよ

普通に考えようや？
コンビニが参入→食い散らかし→終了

唐揚げなんてコンビニで昔からある
おにぎり？みんな大好き？
FCの騙しのテクニックよ

— スモーカー (@cigarettelover2) December 7, 2023

過去の高級食パンだと小麦粉、また唐揚げなら鶏肉や食用油など、必要不可欠な食材の価格の高騰も、ブームの盛り上がりに大いに水を差したわけだが、それに対し「米」に関しては、ほぼ国内で賄えることもあって価格が安定しているという、以前の他のブームにはない強みがあるとされる、昨今のおにぎり専門店。

ただ、小さなスペースに最低限の厨房設備とそれこそ炊飯器さえあれば始められるといった点は、過去の唐揚げ専門店ブームとまったく同様ということで、少々気になるところ。つまりは今後個人での開業が相次ぎ、そこに既存の飲食チェーンなどがさらに参入するなどで、市場が早々にレッドオーシャンとなり、またもや閉店ラッシュとなる展開が繰り返されるのでは……といった見方が結構多いようなのだ。

【関連】続々閉店「高級食パン」ブームに乗って散ったフランチャイズ店オーナーが開業前に見るべきだった数字＝俣野成敏

たとえ参入障壁が低いからといって、特に素人が“今、流行っている事業に乗っかる”ことの危険性は、過去のブームにおいて散々指摘され、すっかり周知されていると思われるのだが……。果たしておにぎり専門店ブームはどうなるのか、今後の推移を注目している向きは多いようである。

Next: 「今度こそうまくいくはず…！」