この数年盛り上がっていた「高級食パン」のブームだが、ここに来てその勢いに陰りが見え始めている……。そんなことを象徴するようなあるツイートが、最近大いに話題になっている。
変な名前の高級食パン店がバタバタ潰れていて気持ちがホッコリしています。 pic.twitter.com/HRYGdS7zwH
— 赤祖父 (赤ソファ) (@akasofa) January 7, 2022
取沙汰されているのは、独特な店舗名で耳目を集めていた高級食パン店群。ツイートに貼られている画像は、Googleマップに連動した店舗紹介のようだが、ことごとく“閉業”の赤いラベルが付いている。
これらのクセが強い名前の高級食パン店だが、どうやらとあるベーカリープロデューサーが手掛けている店舗の模様。ちなみにこれらの店名のほか、「考えた人すごいわ」「うん間違いないっ!」「わたし入籍します」など、おおよそパン屋とは思えない奇抜な店名の店舗を、全国ほぼすべての都道府県に出店しているようだ。
閉店が相次いでも元締めの腹は傷まない?
セブンイレブンが2013年に出した「金の食パン」が、広く一般大衆への火付け役となったという話もあったりと、その発端には諸説ある高級食パンブーム。その後「乃が美」や「一本堂」などといった高級食パンを主に販売する全国チェーンも出現し、大いに盛り上がりを見せてきたものの、ここに来てその淘汰がいよいよ始まったとの声が聞こえてくる状況だ。
以前は、都市部にある著名なベーカリーが手掛けるものといったイメージもあった高級食パン。しかし最近では、その手の店があまりにも増殖してしまったがために、地方部でも「こんな田舎でも高級食パン屋過多」といった状況になってしまい、その物珍しさが一気に落ち着いてしまった模様。また価格自体がそもそも高単価なため、「あれはかなり生活に余裕がないと続かないよね」と、習慣的に購入するのは厳しいといった声も多い。
こんな田舎でも高級食パン屋過多、、
— BAS-Kevin (@baskevinkosu) January 11, 2022
なるほど高級食パンブームはやっぱり終わったのか。
あれはかなり生活に余裕がないと続かないよね。
どんなに美味しいといっても食パンだものね。
あの値段だと食パン食べるのにおかず減らさないと買えないから。(泣)
新潟のコシヒカリを食べ続けるのとはわけが違って、すごいコストアップだものね。— 阿川大樹『終電の神様 台風の夜に』 (@agawataiju) January 11, 2022
いっぽうで経営する側の事情としては、上記のような高級食パンに対する消費者たちの受け取り方の変化にくわえて、小麦粉に代表される食パンつくりに欠かせない原材料が、国際的な需要の高まりやコロナ禍による物流コストの上昇などが原因で、軒並み値上がりしていることも、大きな打撃となっているものとみられる。
そんななか、先述の独特な店舗名で耳目を集めていた高級食パン店群だが、SNS上には閉店が相次いでも「元締め側は全然痛くもかゆくもない」との声も。というのも、これらの店舗はフランチャイズ契約ではなく、開業時に各店舗が元締め側にプロデュース料を支払うという契約のようなのだ。
これなあ
フランチャイズ契約ではなく、開業時にプロデュース名目でガッツリと金を取っていく仕組みの契約だから、脱サラ側は痛い目に会っても元締め側は全然痛くもかゆくもないんだよな。 https://t.co/XpdHq0KP39
— わ✋ ☔️ (@Bagooooon) January 7, 2022
なるほど…能力のあるパン職人とコラボして「変な名前のパン屋はおいしい」というブランドイメージを作ったうえで、それに食いついた素人に変な名前のパン屋でやっていく権利と手練手管を教えるというビジネスモデルか…
名前はヘンだが系列店ではないというのがミソだな。凄いことを考えつく… https://t.co/2GS4aURZ6j pic.twitter.com/9EHUqGY02O
— 仰凝亭源蔵@Genzouおじさん a.k.a. クソ署長 (@gogot_man) January 7, 2022
そうであれば、ほんの数年で全国各地に出店を果たしたという話も頷けるところだが、いっぽうでフランチャイズ契約で長く付き合っていくといった形態にしなかったのは、ブームの終焉が早晩やってくることをあらかじめ見越していたから……といった穿った見方もできそうである。
高級食パン店同様にブーム終焉が近そうな業態は?
思えば「タピオカ」「メロンパン」「唐揚げ」など、ひとたび何か流行るとそれ伴って同じような業態の店が街中に続々と出現したと思えば、いつの間にかに閉店しているといったケースを多く目にする昨今。
SNS上では「高級食パン」もそのパターンに陥るのは確実では……といった見方が聞かれるいっぽう、“次に危なそうな業態”に関しても様々な推測が出ており、なかでも多いのが“フルーツサンド店”を挙げる声だ。
第2次?第3次?高級食パンブームが一段落して、変な名前のところからどんどん潰れているという話ですが(そんなのは2016年くらいに高級食パン屋が急速に増殖しだしたときに想像できていたこと)、映えを狙ったフルーツサンド店はもっと短命じゃないかなあ。あれ歩留まり超悪いでしょう。
— 鈴木淳也 Jun'ya Suzuki (@JunyaTheSphere) January 10, 2022
フルーツサンドがぼちぼち増えては消え始めてるよね〜 / “「変な名前の高級食パン店」がバタバタ潰れている?~「だが元締めの”プロデューサー”の懐は痛まない」” https://t.co/9J0oiIRNNh
— みさり@media screen() (@misari) January 10, 2022
フレッシュな果物の味わいと食感をたっぷりの甘い生クリームとともに味わえるフルーツサンドは、その断面もカラフルで美しく、SNS上では“萌え断”と呼ばれて持て囃されている存在である。
ただフルーツサンドは、確かに高級食パンと比べても日持ちは一切しなさそうであり、さらに中に入れる果物も、こだわればこだわるほどその原価は青天井。さらにパンや生クリームといった材料も、先述の通り高騰が続いているだけに、開業したとしても軌道に乗せるまでが相当厳しそうとあって、そのブームも短いものとなるのでは……といった見方も少なくないのだ。
一般消費者からすれば「次はどんな食べ物が流行るんだろう?」と呑気なものだが、それで商売を始めようとなれば、何かと先々のことも考えなくてはならないところ。少なくとも「最近流行っているから……」という動機で始めるのは、ほとんどのケースで「すでに遅い」というのは真理のようだ。
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