若年層や女性の貧困に焦点が当たっているが、中高年もどんどん貧困に落ちている。リストラの標的となり、再就職も困難。自殺の総数を見ると男性の方が多くなっている。(『鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編』)
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プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、主にアメリカ株式を中心に投資全般を扱ったブログ「フルインベスト」を運営している。
大手上場企業がリストラを急いでいる
コロナの猛威が吹き荒れている。2020年7月の非正規社員は前年同月比131万人の大幅減少となっている。これが意味するのは「本来は雇われるはずだった131万人が雇われなかった」ということである。
「雇い止め・休業・派遣切り」は目立つのでこうした動きはマスコミにも注目されるのだが、本当に深刻なのは「最初から雇われない」という目立たない部分なのだ。最初から雇われない、そして次が見つからない。当事者にとって、これほど深刻な話はない。
2020年。中国発コロナウイルスと消費税10%の二重のダメージがいよいよ社会を覆い尽くそうとしている。
それだけではない。中間決算で減収減益に見舞われて、来期の新卒採用の抑制や中止を告知する企業も続出している。中途採用の凍結も起きている。賃金は下げられ、残業代は抑制され、ボーナスも出ないという会社もある。
出張費も交際費も出さなくなり、「希望退職」という名のリストラを始める企業も多くなった。
アパレル大手ワールドも希望退職を実施。TSIホールディングスも希望退職を実施。服飾雑貨の川辺も希望退職を実施。航空会社のANAとJALも希望退職を実施。三菱自動車も希望退職を実施。
東芝も希望退職を実施。ワタベウェディングも希望退職を実施。日本ケミファも希望退職を実施。シライ電子工業、クックビズ、チムニー、武田薬品工業、ペッパーフードサービス、シチズン、レオパレス21、ラオックス、ぱど、レナウン……。
希望退職というのは、「退職金を上積みするからさっさと辞めろ」という日本流のリストラである。
もはや、枚挙に暇がないほどの大手上場企業がリストラを急いでいる。大手でさえもこうなのだ。中小企業・小規模事業者に至ってはもっと悲惨なことになっているのは言うまでもない。
リストラの標的は「中高年」
内需が拡大して社会が活性化している時期であれば、リストラはあまり問題にならない。企業は大量に人材を募集し、転職が容易で給料も下がらないどころか上がることもあるからだ。
しかし、コロナ禍にある今は違う。ほぼすべての企業が減収減益に見舞われており、苦しまぎれに社員を放出しているのだ。
企業は停滞するビジネス環境に不安を覚えて内部留保に走り、株主にも突き上げられて利益確保のためにコスト削減で正社員をリストラせざるを得ない状況になっている。温情を見せたくても、企業そのものに体力がなくなりつつあるのだ。
企業も生き残らなければならない。とにかく、リストラをしなければならない。そうであれば、必然的に「要らない中高年」が切り捨てられる。
組織はピラミッド型で、誰もが重要なポジションに就けるわけでもない。あぶれた中高年は急激に組織の「お荷物」になる。特に50代で役職がない人間が、最も組織の邪魔になる。
50代と言えば、体力や知力が急激に衰えていき、踏ん張りが利かなくなると同時に、知的な柔軟性も失っていく人が多い。しかし、長く仕事を続けてきたためにプライドだけは高く、会社から見ると、非常に扱いにくい。そして、仕事量とは裏腹に、給料だけは高い。
「働かない中高年」は、コロナ以前からその存在が問題視されていた。だからリストラ計画が持ち上がったら中高年は必ず標的になる。景気が下を向くたびに中高年は切り捨てられていく。