中高年のほとんどは再就職が困難
そして、いったんリストラされた中高年のほとんどは再就職が困難で、低賃金の仕事を余儀なくされる。
中高年の再就職が困難なのは、やはり体力的にも長く勤められるかどうかも疑問で、命令しにくいということがある。新しく何かに取り組むには柔軟性にも欠けている。そして中高年のスキルは時代遅れになっていることが多い。
雇う側は、体力もあって従順で使いやすい若年層を雇った方がいいに決まっている。若くて熱意に溢れた若い新人は命令しやすく使いやすいが、自分よりも年配の新人は心情的にはとても使いにくい。
そのため、企業は人を雇うにも最初から年齢制限を付けるので、中高年の再就職はますます困難になる。
中高年の貧困層は確実に増えていく
しかし、コロナ禍が収束したら元に戻るわけでもない。コロナ以前から企業は利益を確保するために、コスト削減と効率化を徹底するようになっているからだ。
若年層を非正規労働者にしていつでも切れるようにして、50代以上の中高年をリストラするという策をどんどん推し進めていたのだ。コロナ禍と消費税の引き上げによる苦境は、それを加速させただけなのである。
コロナが収束しても中高年を取り巻く環境は良好ではない。40代から50代で職にあぶれた人たちは、大した仕事が見つからない不安定な状態のまま数十年を生きなければならない。中高年や高齢者の貧困層が増えていく。
それが、今の日本で「起きている現象」なのである。
これまで貧困は若年層の問題であると捉えられてきたが、もうすでに貧困は若年層だけの問題ではない。中高年にも高齢者にも貧困化が忍び寄っている。
中高年で失業してしまうと、今後もまともな職が得られる可能性は低い。そうすると、貯金を食いつぶしながら生きていくか、もしくは生活保護になる。
しかし、生活保護は申請者全員にそう簡単に支給されるものではなく、まだ働けると見なされる中高年は真っ先に門前払いされることになる。
結局、中高年でリストラされた多くは、低賃金のプライドが打ち砕かれるような仕事をしながら生きるしかなくなるのだ。そして、低賃金の労働はどんなに頑張っても高賃金化することはない。
そんな中で、中高年は今まで無縁だと思っていた貧困の中に一気に転がり落ちていくことになる。
いくら数百万円を上乗せされても、早期退職は自分の首を絞めるものであることを知っているので、どんなに会社が傾いても今の中高年は必死で会社にしがみつく。
そこで、企業側は「追い出し部屋」のようなものを作って、強制的に辞めざるを得ないような状況に追い込むような陰湿な手段を取るようになる。
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