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AIトレード時代、日本の個人投資家はどう立ち回るべきか?|ひろぴー氏インタビュー

※この記事はアフィリエイト広告を利用しています

FXや暗号資産のトレーダーとしての実績にとどまらず、金融プラットフォームの開発やコンサルティングにも携わり、業界を多角的に見つめてきたひろぴーさん。FX業界がこれまで歩んできた変化の過程から現在の取引環境の成熟度、そしてAIトレードがもたらす未来像まで──。豊富な経験をもとに、その実像をじっくりと語っていただきました。

聞き手:鹿内武蔵
FX雑誌『外国為替』vol.6より再構成/インタビュー日:2023年7月

 

ひろぴー氏プロフィール

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FX&Cryptoトレーダー。ラジオ日経パーソナリティ、FX会社や暗号資産取引所のコラムニストなど、活動の場は多岐にわたる。自らのトレーディングノウハウから、ユーザビリティの高いインターフェース総監督を担い、店頭FX取引業者や暗号資産取引所向けの受託開発を請け負う。2019年7月よりTradingView JapanのMarketing Directorに就任。【著書】Billion Trader(億トレーダー)ひろぴーの読むFX【著書】Billion(億)トレーダー ひろぴーのFXの基礎の基礎――ローソク足に秘められたFXの真実!

成熟期を迎えたFX業界は、いまや理想に近い取引環境

─まずは、ひろぴーさんがこれまで見てきたFX業界の変化について伺います。FXを始めた当時と比べ、特に大きく変わった点はどこでしょうか?

私がFXを始めたのは2010年ですが、当時と現在を比べると、初心者ユーザーへの不親切な取引システムの挙動や悪質業者が極めて減ってきましたね。以前は、置いた指値を明らかに通過しているのに約定してくれない、逆指値はスベる幅が今とは比べられないほど大きかった、経済指標発表時のスプレッドが極端に広がるといった挙動がよくありました。

しかし、取引システム自体の技術的な進歩に加え、SNSの普及によって情報が瞬時に拡散されるようになりました。その結果、悪質な業者は公開処刑されることが増えて淘汰・改善されていきました。

─悪評ほど広まりやすいですし、企業イメージへの影響も大きいですよね。ほかにも印象的な業界の変化はありますか?

象徴的なのは、FX業者主催のトレードバトル企画が姿を消したことですね。過度に売買を煽る行為と見なされ、現在では事実上禁止のような扱いになっています。当局経由で、金融先物取引業協会から自粛要請が入るケースが多いようです。

ただ、その一方で、YouTubeなどの影響力を背景に、今度は個人投資家が主体となってトレードバトル的な企画を行う場面が増えました。これはSNSの発展が、必ずしも良い方向にだけ作用していない例だと感じています。再生数やアフィリエイト稼ぎのために、手段を選ばない過度な演出が増えて、ギャンブルのような印象を与えてしまう懸念があります。FXが健全な投機・投資ではなく、エンタメっぽく取り扱われるようになってしまったのも少し残念です。

さらに問題なのが、海外FX業者の過度な宣伝です。ただし今後は、ステマ対策などに当局が取り組み始めました。また、FX業界にはマーケティングや表現規制に関する大きな業界団体がないので、その設立に向けて動き出しています。金融庁とFX業者、国内のポータルサイトを加えて、「海外FX撲滅大作戦」を行える業界団体ができれば最善ですね。そうすると、国外に出ている資金が戻ってくるし、海外FX特有の仕組みで大損している利用者を減らすことができます。

─海外FX業者の入金ボーナスやゼロカット、クレジットカード手数料無料、高額アフィリエイト報酬などは、最終的にはユーザー資金から捻出されている仕組みですからね。その分、取引条件がめちゃくちゃ悪くなっていることを意識してもらいたいです。

知識不足のまま、目立ちたい気持ちや高額報酬に惹かれて関わってしまう人も多い印象です。実際、私のSNSのDMにも「報酬100万円で協力してほしい」といった話が頻繁に届きますから、十分注意してほしいと思います。

現在の国内FX業者は、激しい競争でスプレッドがどんどん狭くなっていき、急変動のロスカットでも業者によって大きな格差がなくなった結果、昔よりも退場するトレーダーは減ったと思います。このあたりは金融庁主導の対策と業界全体の取り組みの成果で、本当に素晴らしいことですね。国内の厳格な法規制のもとで顧客保護が徹底されつつ、ユーザーが被る実質的な不利益は最小限に抑えられています。現在のFX業界は、かなり理想に近い環境にあるといえるでしょう。

─狭いスプレッドを維持しながら約定力も高い。スワップ金利も昔とは比べものにならない水準ですよね。

インターネットの発展、ツールの進化、企業努力が合わさり、この業界が成熟してくれたおかげなので、みんなで感謝すべき部分ですね。これ以上は無理といえるくらい良い環境になっているのではないでしょうか。少なくとも今は、勝てない理由を取引システムや取引コストのせいには絶対できない時代です。

APIとAIが切り開く、新時代の取引システム

─取引システムの進化についても伺います。数年前のお話では、日本のFX業者はオンプレミス型が中心で、暗号資産のほうが進んでいるという評価でした。

その認識は今も変わっていません。特に世界的な暗号資産取引所のシステムは別格に優秀で、圧倒的にレベルが高いです。金融庁のような監督機関があるわけでもないのに、自社で独自に規制できる運営の鋼の精神と、トラブルが起こっても自ら補填できる財政基盤の強さがないとできないですね。この間Bybitの社長と話したときには、取引システムに年間100億円ぐらい投資しているといっていましたから、日本の規模とは比べ物にならないです。

─日本の業者も頑張っているのに、比べてしまうと物足りなさを感じてしまうのは、やはり資金力の差でしょうか?

資金や法規制の違いなどもありますが、最大の要因は技術力の差ですね。優秀な技術者やエンジニアを多く集めた結果だと思います。特に中国の影響力が強いですね。今の中国は、30代40代の人口が一番多いんですよ。中国と日本の1980年代生まれの人口差は出生率から計算すると14倍差があります。その中で大卒の理系出身者となると、30倍以上の差になります。

─働き盛り世代で比較すると、さらに差が広がるわけですね。

数年前から力をつけてきて、脂が乗った30代の技術者が今一番多いから、技術者の人材は中国が一番強いですね。イノベーション・アイデア・体力・スピードのどれを見ても付け入る隙がないくらいです。国を出て規制の少ない自由なところで最高のものを作ってやると意気込んだ志が高い人たちも多い。将来の話をすると、次は中国と同じ規模で今20代の若者が多いインドも台頭してくるでしょう。

─そうなると、数年先、十数年先でも日本の立場は厳しそうです。

だからこそ、日本はニッチな分野で勝負すべきです。全体では勝負できなくとも、部分的に勝てるところは作れますから。例えば、APIやAIを用いたトレード分野では勝機があります。AIトレードに関しては、人を集めたからといって儲けられるシステムではなく、他のものづくりと比べても、技術者人口の多さで差が開きにくい分野だと思っています。

─APIで取引所と直結し、AIが取引を担う。具体的にはどんな取引システムが実現できるようになるんですか?

人間がベースとなるストラテジーを作って、それをAIに命令して改良・運用してもらうスタイルがスタンダードになると思います。漠然とAIに「儲かる売買システムを作って」と命令しても、AI側も漠然としか考えられないので、良い成績は残せないんですよ。

良いロジックやストラテジーのベースを提示して、その最適化と運用をAIが担う。例えばTrader Kaibeさんのような非常に優秀なEA開発者のトレードシステムをベースに、AIに過去データを用いてボラティリティに合わせたベストな運用と改良を命令すると、裁量や従来の自動売買では絶対勝てない・できない精度の運用成果を出し続けます。

ドル円も、1ドル80円の時代もあれば、140円台を推移しているときもあって、両相場の騰落率は全く違います。騰落率が大きく違えば、移動平均線やMACDなど変化率で見ているデータは、どこかで使い物にならなくなっていきます。そこをAIがあらゆるデータ・パラメーターを加味してベストな数値を常に更新してくれるので、人がチューニングする出番はないんです。自らチューニングするのも楽しいですが、AIとの勝負では100%負けてしまうでしょう。

─今まで自動売買の主流であるMT4やMT5では、APIの利用が限られて、取引システムもMQL専用のプログラムを使わざるを得ない状況でした。今でもFXでのAPI利用は一部ですが、今後は広がりをみせる余地はあるのでしょうか?

各社検討していると思います。ヒアリングしていても、APIの導入をやりたい・考えているという反応がほとんどですし、どこか大手の業者が口火を切ったら、すぐに普及していくかもしれません。本格的に普及すれば、勝てるストラテジーを作れる人が勝ち残っていくでしょう。AIトレードといっても、人間もAIへの命令・指示を的確に出せる優秀さがなければなりません。ベースになる良い手法・ストラテジーを生み出す力も必要ですし、それをシステム化できる開発者やトレーダーが生き残っていくはずです。AIの登場で、この先の10年、15年で裁量トレーダー、1億トレーダー、100億トレーダーと、個人投資家の格差もさらに拡大することになりそうです。

為替市場では逆張りが機能する? AIに「損小利大」は不要

─今後AIが一般の個人投資家にまで普及していくと、値動きやチャートの傾向はどう変化していくと思いますか?

株や暗号資産は、米株のGAFAMのようにひたすら上昇を続ける値動きをすると思います。参加すれば増えていく、投資をするのが早い者勝ちの相場になっていくはずです。為替は国同士の関係性が影響するので、一方向に上昇していくわけではないです。ただ、ボラティリティを出しながら、一直線に動きやすい相場が続いていくとは思います。ここ最近の相場を見ても、昔と比べてV字での全戻しをするパターンが増えたように思います。

トレンドが反転するときには、三角もち合いや三尊などを形作るものですが、そのパターンがチャート上に現れにくくなり、入るタイミングも非常に難しくなっています。7月下旬のドル円も、145円をつけるまで強く上昇して、その後は1円の戻りを一度もすることなく、ひたすらに下落していきました。(編注:2023年7月にインタビューしています)

値動きにV字の全戻しが増えた結果、逆張りロジックのトレードが昔以上に機能しやすくなったとも感じています。今の自動売買の傾向も同様で、コツコツ勝ち続ける高勝率型のEAが人気で、裁量とは違って逆張り系が自動売買には求められているようです。

─順張りの「損小利大」が絶対ではなくなってきたと。

AIの研究を重ねてきた結果、私も自動売買においてはその選択が正解かもしれないと感じています。そもそも損小利大は、人間の欲を抑制・制御することを目的としています。高勝率でずっと勝ち続けると冷静な判断は失われやすく、いざというときの損切りが遅れて大損してしまいます。それらをあらかじめ排除するためには、初めから我慢強く続ける取引手法をトレード戦略に組み込むという考えが必要です。

しかしAIは常に勝ち続ける前提で相場に入るので、そういった考慮をする必要がありません。大きな損失を出す確率は非常に低く、裁量と比べてもかなり長いスパンの中で高い期待値を出せますから、限りなく正比例グラフに近い成績になります。

─AIトレードの未来が楽しみですね。

本当にそう思います。今後の業界における大きなゲームチェンジャーになると思いますよ。

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