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買収騒ぎ「セブン&アイ」株は売りか買いか?今後の展開と長期投資家が持つべき視点=栫井駿介

2024年8月、カナダのコンビニ大手「アリマンタシォン・クシュタール」が、セブン&アイホールディングスに対して約5.6兆円の買収提案を行いました。クシュタールは北米で「Circle K」ブランドを展開し、ガソリンスタンド事業を強みとしていますが、セブン&アイは日本国内で「食」を中心にしたコンビニ戦略を重視しており、両社の方向性には大きな違いがあります。

この買収提案が報じられたことで、セブン&アイの株価は急上昇しました。しかし、単に株価が上がっただけでは、買収が株主にとって最善の選択肢かどうかを判断することはできません。買収が成立するかどうか、またその結果がどのような影響をもたらすのかを慎重に見極める必要があります。

この記事では、セブン&アイにとってのこの買収提案の意味、投資家がどのように対応すべきか、そして今後の展開について詳しく掘り下げていきます。この買収劇がどのような展開を見せるか気になっている方、ぜひ最後までお読みください!(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)

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プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

カナダからの買収者・クシュタールの狙い

クシュタールがセブン&アイの買収を狙う背景には、いくつかの戦略的な意図があります。

クシュタール(Alimentation Couche-Tard)は、1980年にカナダのケベック州で設立されたコンビニエンスストア運営会社で、世界的に展開する大手企業です。現在、北米を中心に「Circle K」や「Mac’s」などのブランドで15,000以上の店舗を運営しており、ガソリンスタンドを併設した店舗モデルで成長を遂げています。

また、クシュタールは積極的なM&A戦略を通じて急成長してきた企業でもあります。過去にはアメリカやヨーロッパでの大規模な買収を成功させており、その経験から得たノウハウを活用し、セブン&アイのようなグローバル企業の買収にも意欲的です。

クシュタールの過去の主な買収リストは以下の通りです。

2003年:「Circle K」ブランドを運営するConocoPhillipsのコンビニ事業を買収
2010年:フランスのコンビニチェーン「Statoil Fuel & Retail」を買収
2012年:ノルウェーのStatoil Fuel & Retailを買収
2016年:米国のコンビニエンスストア「The Pantry」を買収
2017年:CST Brandsの買収
2021年:オーストリアのアスコン石油(AS24)を買収

クシュタールは現在「10 for the Win」という戦略計画のもと、5年間でEBITDAを100億ドルに増やす目標を掲げており、規模拡大と市場シェアの強化が重要なミッションとなっています。

クシュタールの狙いは、単なる規模の拡大に留まらず、より効率的で多角的な事業展開を実現することにあります。

セブン&アイの立場と戦略

セブン&アイホールディングスは、日本国内外で「セブンイレブン」を中心に、食品や日用品を提供する大手コンビニエンスストアチェーンを運営しています。

同社の戦略は、日本市場における「食」を中心とした独自のコンビニモデルを強化し、顧客に対する利便性と品質を高めることに重点を置いています。特に、セブンイレブンの展開は、単に商品を提供するだけでなく、店舗そのものが生活の一部となるような総合的なサービスを提供することを目指しています。

しかし、セブン&アイは国内外での競争が激化する中、特に日本市場での成長が鈍化しているという課題に直面しています。また、イトーヨーカドーなどの収益性が低い部門の抱え込みが、全体的な業績を圧迫している状況です。このため、セブン&アイは、より効率的な経営と明確な成長戦略の必要性が増しているといえます。

その一方で、セブン&アイは北米市場への進出を積極的に進めています。特に、2020年に米国のスピードウェイを買収したことにより、北米市場でのプレゼンスを大幅に強化しました。この動きは、セブン&アイが日本市場だけでなく、海外市場でも持続的な成長を目指していることを示しています。

セブン&アイの売上高と営業利益は、過去10年間で緩やかな上昇を続けてきました。特に2020年以降、スピードウェイの買収により売上高は大幅に増加し、2022年度にはピークを迎えています。

セブン&アイ・ホールディングス<3382> 業績(SBI証券提供)

セブン&アイ・ホールディングス<3382> 業績(SBI証券提供)

しかし、その後はやや停滞し、2023年度から2024年度にかけて成長が鈍化している様子が見られます。

セブン&アイ・ホールディングス<3382> 月足(SBI証券提供)

セブン&アイ・ホールディングス<3382> 月足(SBI証券提供)

株価は2016年から2020年にかけて横ばいの状態が続きましたが、2020年以降、株価が大きく上昇しました。この期間は、セブン&アイが米国市場への積極的な進出を行った時期と一致しています。

しかし、2022年から2024年にかけては、株価の上昇は鈍化し、最近では再び下落傾向が見られました。

Next: 市場はどう反応?クシュタールとセブン&アイにビジネスモデルの違い…

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