fbpx

買収騒ぎ「セブン&アイ」株は売りか買いか?今後の展開と長期投資家が持つべき視点=栫井駿介

市場の反応とビジネスモデルの違い

クシュタールによるセブン&アイの買収提案が発表された直後、市場は大きな反応を見せました。株価は一時的に急騰し、多くの投資家がこの買収提案に注目したことがわかります。

しかし、時間が経つにつれて、投資家の間では冷静な評価が広がり、株価は徐々に落ち着きを取り戻しました。この背景には、買収が実際に成立するかどうかに対する不透明感や、両社のビジネスモデルの違いによる実現可能性が指摘されます。

セブン&アイ・ホールディングス<3382> 月足(SBI証券提供)

セブン&アイ・ホールディングス<3382> 15分足(SBI証券提供)

クシュタールとセブン&アイは、同じコンビニエンスストア業界に属しているものの、ビジネスモデルには大きな違いがあります。

<クシュタールのビジネスモデル>

クシュタールは、北米を中心に「Circle K」ブランドで店舗を展開し、その多くがガソリンスタンドを併設しています。

クシュタールの強みは、このガソリンスタンド事業とコンビニエンスストアのシナジーにあります。ガソリン販売を通じて安定した収益を確保し、その収益を活用してコンビニエンスストア事業を支えるというモデルを構築しています。また、積極的なM&A戦略を通じて事業規模を拡大し、効率的な運営を実現してきました。

<セブン&アイのビジネスモデル>

一方で、セブン&アイは「食」を中心にした日本型のコンビニエンスストア展開を主軸としています。セブンイレブンのブランド力を活かし、質の高い食品や日用品の提供を重視することで、他の競合と差別化を図っています。

日本国内市場では、食品やデリカテッセンを中心とした商品の充実度が高く、顧客の日常生活を支える「近所の便利な店舗」としての役割を果たしています。セブン&アイはガソリンスタンド事業には依存しておらず、特に日本国内では、生活必需品や食料品の販売が主要な収益源となっています。

このように、クシュタールがガソリンスタンドとコンビニエンスストアの複合モデルで収益を最大化するのに対し、セブン&アイは「食」と「サービス」に焦点を当てたコンビニエンスストア展開で、質の高い商品提供を目指しています。この違いは、両社が顧客に提供する価値や事業運営の方法に大きな影響を与えており、クシュタールによる買収提案が実現した場合、両社のビジネスモデルをどう調和させるかが大きな課題となることが想定されます。

買収成立の可能性は高くない

セブン&アイに対するクシュタールの買収提案が成立する可能性は、いくつかの要因から低いと考えます。

まず、セブン&アイにとってこの買収に明確なメリットが見えない点が挙げられます。クシュタールは米国で強力なコンビニチェーンを運営していますが、その多くの売上がガソリンスタンドに依存しているのに対し、セブン&アイは「食」を中心とした日本型のコンビニ展開に注力しており、事業モデルが大きく異なります。

また、仮に両社が経営統合したとしても、米国内での市場シェアは13%程度にしかならず、クシュタールの狙いが単なる規模の拡大に過ぎないのではないかとの懸念もあります。

セブン&アイの買収提案に対し、日本政府が外為法(外国為替及び外国貿易法)の適用を検討する可能性も浮上しています。外為法の適用が実現すると、外国企業による日本企業の買収が厳しく規制され、買収が成立しにくくなります。

同時に、セブン&アイの関係者がマスメディアを通じてこの問題を公にし、世論を味方につける戦略も考えられます。これにより、政府が外為法を適用する理由を強化し、クシュタールの買収提案を阻止することを目指している可能性があるでしょう。

ただし、セブン&アイの株価が長年低迷していることや、アクティビスト株主の存在が買収提案に対する圧力を強めています。仮にクシュタールがセブン&アイに対して現在の株価より高い金額での買収提案を行った場合、株主はその提案を慎重に検討することが求められます。もしこれを否認した場合、株主からの訴訟に発展する可能性もあります。

Next: 買収成立の可能性は高くない。セブン&アイは売りか買いか?

1 2 3
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー